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テックとカルチャーの垣根を超えて。ヤフー社員兼音楽ライター、宮内俊樹が見たTOA

テックとカルチャーの垣根を超えて。ヤフー社員兼音楽ライター、宮内俊樹が見たTOA

フィラメントの宮内です。

 

先日、日本で開催された「Tech Open Air 日本版」に参加してきましたので、今回はその模様をレポートします。3月には「Slush Tokyo 2018」にも参加してまして、なんかイベントづいてますね。いいですね。ずっとこの調子でいきたいです。

欧州のSXSW(サウス・バイ・サウス・ウェスト)とも評される「Tech Open Air(TOA)」は、ベルリンで開催されるイノベーションをテーマにしたテック・カンファレンス。世界ではじめてクラウドファンディングにより開催された2012年より、年々話題を呼び、ついに2017年にはドイツ最大規模のイベントとして世界的に注目を集めるようになったそうです。

 

これに惚れ込んだインフォバーンの小林弘人さんが今回招聘し、日本版が実現。6月に本国ドイツで行われる「Tech Open Air」のPR的意味あいもあるようです。

 

プログラムは、Part1がブロックチェーンについてのセッション、Part2はさまざまなスタートアップによるピッチ大会。特にPart1は「ブロックチェーンが変えるビジネスと社会」と題してて、非常にアップトゥデートでなかなか興味深い内容でした。

 

「ブロックチェーンは世界をゼロリセットする」

 

まずはTOAファウンダーのニコラス・ヴォイシュニック氏が登場し、TOAのこれまでを説明。ベルリンは“第二のシリコンバレー”とも呼ばれているそうですが、VC投資は日本より盛んで、特に起業が増えているブロックチェーンにおけるエコシステムはさまざまなプレーヤーによって形成されているとのこと。

 

 

続く4つのセッションでも、ドイツにおけるブロックチェーンの現状や日本での動き、日本企業での実践事例など、ブロックチェーンの可能性がさまざまな視点から紹介されました。特に篠原ヒロ氏が「ブロックチェーンは世界を変えない、むしろ世界をゼロリセット」と、既存の企業やビジネスに対して強烈にアジテートする感じがなんかよかったです。

 

それぞれのセッションの時間が15〜30分だったのもTOAの特徴だそうです。正直濃密な議論にまでは行きつけなくて、テーマが広範におよぶだけにもう少し深掘りがされるとよかったなあと思うのですが、このテンポの良さが逆にクールな印象につながっている気はしました。

 

 

 

 

ティータイムは お茶とお菓子のおもてなしが。みたらし団子に和三盆ってところが、インバウンド仕様というか、文化を作る・発信していくのだというアティテュードが感じられてとてもよかったです。

 

(TOAのホームページより https://toa.infobahn.co.jp/conference/

 

あと休憩時間も活用してお互いにmeetupしていくのですが、ここもTOA流のマナーがありました。日本人によくある名刺交換を先にするマナーではなく、あくまで自然な会話から最後にカードを交換するといったいわば欧米スタイル。

あえて意識してやるとなると、これなかなか難しい。特に初対面のグループにスッと入っていく場合、自分が何に興味を持ったのか、自分が何者なのかをアピールしないと不自然になってしまいます。もちろん専門的な知識がちゃんとないとすぐバレますし。

 

電気グルーヴ石野卓球氏も登場したピッチ大会

 

続いては、PART2のピッチ大会。「領域横断型ピッチセッション」と題して異業種のイノベーターにそれぞれ連続ピッチを行ってもらうスタイルも、TOAの特徴なんだとか。こちらも持ち時間は10分で、小気味いい。

 

人工流れ星のスタートアップ・ALE Co.Ltd.,の岡島 礼奈さん。

組み込み型のGPU、LeapMind社の松田総一氏。

PEPPER開発に携わっていたことでおなじみの、GROOVE Xの林要さん。話がめちゃめちゃおもしろい。

といった感じで、「業界横断型」とうたうだけあって話題が広範囲かつ先鋭的です。さまざまな未来図にワクワクさせられるのは刺激的で、雰囲気もゴージャスではないけどオシャレ。なんともクールです。そういう意味でも、日本でよくあるカンファレンスや展示会とはぜんぜん違います。

 

 

ラストのセッションでは、電気グルーヴの石野卓球氏が登場。90年代のラブ・パレード(ドイツで行われていた世界最大規模のレイヴ)の話を中心に、「ベルリンはヘンなやつが多い」といった面白いエピソードばかり。これだけでもイベントにできそうな内容でした。

 

特徴としてSlushと同様におしゃれでインテリで、いかにもヨーロッパらしいカンファレンスだなあって感じがしました。

・テックと、アートやミュージックなど、カルチャーが自然とミクスチャライズしていること

・広範な業界の点と点をつなぎ、ひとつの概念(哲学)を生み出そうという意識

・ともすれば抽象的でもあり、アートな感性がとても大事

とかとか。

 

違いがあるとしたら、「Slush Tokyo 2018」の方がわりとイケイケなスタートアップのお祭り的な感じで、TOAの方はもっとアットホームかつ学際的な感じ。本国ドイツでは文字通りオープン・エアな環境で開催されているとのことで、さらに肩ひじはらずに楽しめそう。

 

イノベーションに必要なのは異文化との接触

 

感じたのは「業界横断型」の意味です。

これは「Slush Tokyo 2018」でも感じたことですが、海外のテックイベントやカンファレンスでは、テックだけではなく、DJブースなどの音楽やアート展示といったジャンルをクロスしたイベント内容が当たり前です。そういう意味でも、日本でよくあるカンファレンスや展示会とはぜんぜん違います。

アメリカのSXSWも、もともとは1987年にローカルなミュージック・フェスとして始まり、いまをときめくSXSWインタラクティブが始まったのは2007年からです。根本に「新しいカルチャーのショーケースになる」というコアバリューがあります。

日本でも福岡の明星和楽や神戸の078、札幌のNo Mapsなど、ジャンルを横断したイベントは増えてきてはいますが、テックはテックの領域、アートはアートの領域、音楽は音楽の領域といった、ジャンルの垣根がまだまだある気がしています。が、ファッションテック、アートハック、メディアアートなど、異文化との接触がなければイノベーションは起き得ませんし、テックはすべての触媒たるべきです。

今回のTOAもあくまで推測ではありますが、リベラルアーツに親しんでいない日本人には話題の振り幅が大きすぎて理解するのが難しいのかもしれません。が、あえて「業界横断型」とうたう所以は、日本人に足りていない素養を意識してもらうことにあるのかなあ、と夢想しました。

 

というわけで改めて、海外のピッチイベントやカンファレンスのスタイルって、とてもクール。特にヨーロッパは、なんか哲学的っていうんですかね、知性主義というか、カルチャー全般に対しての垣根がなくてクールです。日本のテックイベントもDJやアート展示といった要素をどんどん取り入れて、TOAのようにテックとカルチャーの垣根がなくなっていくといいと確信しました。

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