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大企業のイノベーションのためには組織全体に貢献できる社員育成が重要って話

大企業のイノベーションのためには組織全体に貢献できる社員育成が重要って話

オープンイノベーションはうまくいかないという定説

産学連携とか技術探索を行うオープンイノベーションって昔からありますよね。

これをオープンイノベーション1.0とします。

そして今主流になりつつある、企画やビジネスモデルから様々なポジションの関係者と一緒に考えるようなスタイルのものをオープンイノベーション2.0とした場合、2.0の方はなかなか結果が出ないと言われています(一般的なオープンイノベーション2.0の定義はこちら参照。厳密な定義としてこちらとは完全には一致していないかもしれませんがニュアンスが近いので本稿ではそう言わせていただきます)。

その理由はいろいろあると思いますが、ここでは企業の文化や風土的な側面を中心に、その一端について考えてみます。

オープンイノベーション2.0の成功率が低くみえる理由の一つとして、その道のりが1.0よりもずっと長いということがあると思います。オープンイノベーション2.0の場合、一から企画を立てて新しいビジネスモデルを起こしたり、全く新しい価値を持つ製品を考えて、製品化に向けて様々な不具合をとりのぞくという大変な作業をしなくてはならない。その分工数がかかり不確実性が増します。

一方で、オープンイノベーション1.0は技術探索に取り掛かっている段階で多くの不確実性が既にクリアされているのだから、見かけ上、成功確率が高くみえる。

2.0が製品化に向けてのプロセスの中でかなり上流の工程であるのに比べて、1.0はずっと下流の話な訳です。

でもそれ以外の要因もあると思います。

オープンイノベーションに対応できる人材の少なさ

それはオープンイノベーション2.0に対応できる人材がそもそも少なすぎるってこと。

オープンイノベーション2.0では担当者に必要とされる能力が非常に広範囲に及びます。

外部の人とリレーションを作る能力、そしてリレーションを深化させて信頼に変える能力、ここまでがインプット側のスキル。

そしてアウトプット側のスキルとして、社内のリソースやミッションを把握し続ける俯瞰力、どことどこをどうつなげたらどんな価値を生むのかをイメージできる分析・想像力、自ら事業を作っていける構築力などが必要。

こうした様々な能力が必要となるので、組織としてオープンイノベーションに取り組むなら当然チームを作って当たるべきだと思います。

にもかかわらず、多くの企業ではオープンイノベーションの担当者ってたいてい一人とかで多くても二~三人くらい。世の大企業的にはとても珍しいスーパートリプルレアみたいな存在。

そういう少数の方がほかの社員の方々に「あいつら俺たちの稼いだ金で遊んでやがる」みたいなことを言われながら大きな重圧の中で結果を求められているわけです。

それじゃあなかなかうまくいかないだろうと思うんだけど、さらに難しいのは、オープンイノベーションの成立には同じ志を持つ人が複数必要だってこと。

例えるならスーパートリプルレアのカードを最低二枚は集めなくちゃいけない。それで初めて役が付く。

で、役が付いたとしてもそこからが始まり。

一緒にいろいろ考えて事業構想してもそのほとんどはうまくいかないもんです。

新規事業はそもそも確率が低いもの

新規事業は1000に3つしかうまくいかないってことを示す「せんみつ」って言葉がありますがそういうところで地道な取り組みが必要なのはオープンでもクローズでも同じ。

じゃあなんでオープンでやるのっていわれたら、一社でやってもコモディティ化の波にのまれて利益が出ないからってのは前のブログで書いた通りです。

つまり、一社単体で新規のプロダクトをリリースしても、一社でできるってことはよそでもできるってことだから結局あっという間にキャッチアップされる。頑張って「せんみつ」で生み出しても価値が持続しない。だからキャッチアップされないために複数社で組んで真似されにくいものを作らなくちゃ…というのが昨今の流れです。

そんなことでオープンイノベーションばやりになってるわけですが、やはりなかなかうまくいかない…ってとこに話を戻すのですが、オープンイノベーション2.0がうまくいかないのは、そうしたもともとのビジネスデベロップメントの確率の低さに加えて、さらに良い担当者と出会える可能性の低さがあると思うんです。

だってもともとオープンイノベーション担当者と出会える可能性がめちゃくちゃ少ないんですもん。もし自分と同じオープンイノベーションの担当者と出会ったら珍しいからうれしくなってとりあえず何かできるか一緒に考えるために時間割きますよね。

でもそういうのは出口の見込みも立たずにやることになるのでやはり確率的には上がらない。

それにそもそもオープンイノベーションに向いた資質を持っている担当者がアサインされていない可能性も高い。先に述べた通り、オープンイノベーションに必要とされるスキルは多い。インプットサイドのスキルもアウトプットサイドのスキルも複数必要になります。それを単体ですべて持ち合わせている人ってそういないし。

こうしてみるとオープンイノベーション2.0に対する企業側の理解がなかなか足りていないってことがわかります。かといって結果も出せていないオープンイノベーション部隊に増員はしにくい…だからやはり結果が出せず…という悪循環になっているのではないかと思います。

こうした悪循環から脱するためにはどうすればいいか…

まあ、答えはないんですが…。

オープンマインドなサポーターの重要性

でも楽観的な希望に基づいて、あえて提案めいたことを書いてみるならば、オープンイノベーションの担当者を増やすというよりもインプットサイドの能力、なかでも他社とのリレーションを築く能力のある社員を社内に増やして、オープンイノベーション担当者をサポートできるような組織風土ができれば成功確率はかなり上がるんじゃないかなと。

大企業の中には、オープンイノベーションの担当とかではないのに、社外の方とたくさんのつながりを持ち、自分の手柄にはならないのにも関わらず、他部署の事業のアクセラレーションになるようなコネクティングを行うようなハブ人材もたまにいるんです。

そういうサポーター気質の人(以下、サポーターと言います)は、他部署の課題やミッションもよく見えていて、販路を持っている人を紹介して売り上げが上がったり、開発者を紹介して開発スピードが上がったり、テレビ局の人を紹介して広報計画がぐんと広がったりといった成果を他部署に提供してたりします。

サポーターは「チームのために水を汲む」ボランタリーな貢献者ですが、その活動が自己犠牲的になってしまわないようにインセンティブをつけてやれれば組織内にその数を増やすこともできると思います。

企業組織に対するサポーターの貢献活動を適切に評価できる仕組みができれば、結果として、オープンイノベーション2.0の成功率を根本から上げられるかもしれない。しかも、セクショナリズムに陥り、部分最適のみを追い求めがちな大組織に横ぐしを通すようなこともできるのではないかと思います。

そしてその結果、組織全体のアップデートも果たせるかもしれません。

オープンイノベーション3.0につなげるために

本当に今、必要なのは事業開発手法としてのオープンイノベーション2.0ではなく、組織構造に対するイノベーションなのではないか…そう思うのです。 そういう組織構造に対するイノベーションができれば、それはオープンイノベーション3.0と言うべきものなんじゃないでしょうか。

大企業の組織を変えるというのは実際にはそう簡単じゃないとは思いますが、未来はポジティブに考えたいし、サポーター的な動きができる人たちは絶対に日本企業に増やしていかなければならない。 そう確信しています。

あ、ちなみに…ですが、オープンイノベーション2.0の文脈では、その手法の一つとして語られることが多いアイデアソンとかハッカソン。これらのイベントで生まれるアイデアやプロトタイプにはさほど価値がないという話も聞きます。それは本当に正しくて、アイデアではなく、これらのイベントを通して生まれるリレーションに多くの価値があるのです。また、そのリレーションを作る過程で、自らの属する組織以外の方々と信頼関係を築く能力や活きた情報を集める能力、そして事業構想力などといった数々の能力が総合的に磨かれるという人材育成面での効果も実感します。

組織内でのサポーターに対するインセンティブ設計とアイデアソンのようなイベントによる人材育成を両輪としてやっていけば、大組織の文化や風土もいずれは変えていけるはずです。

オープンイノベーション2.0をめざして実施されているアイデアソンやハッカソンの本当の価値はその一歩先のオープンイノベーション3.0(組織構造のイノベーション)につながっていくように、微力ながら動いていきたいと思っております。

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