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対談

「特許」と「オープンイノベーション」のオイシイ関係!? コロプラ弁理士が解説

「特許」と「オープンイノベーション」はどう関連していくのでしょうか。コロプラの佐竹星爾(さたけ・せいじ、写真左)弁理士と当社CEOの角勝(すみ・まさる、写真右)が対談します。

プロフィール

佐竹星爾(さたけ・せいじ)

佐竹星爾(さたけ・せいじ)

『Business Model Generation』の著者であるイヴ・ピニュール教授(スイス・ローザンヌ大学)のビジネスモデルについての考え方を学ぶ。大手特許事務所にて、モバイルデバイス分野、クラウド型サービスの特許権利化業務を経て、ゲーム企業に移籍。コンシューマー向け事業におけるブランド管理の一環として、ゲーム分野、新規事業の特許ポートフォリオの構築を担当している。

角勝(すみ・まさる)

角勝(すみ・まさる)

大学で歴史を学んだ後、大阪市に入職。在職中にイノベーション創出を支援する施設「大阪イノベーションハブ」の設立・運営に携わったのちに2015年3月大阪市を退職。各地でオープンイノベーションの支援、ハッカソンの企画運営を行っている。

目次

 

ベンチャー企業も特許の数を出していないと話にならない

 

 

角(以下、敬称略) 今日は弁理士である佐竹さんにお越しいただきまして、「特許」の分野と、僕の関わっている「オープンイノベーション」の分野を中心にお話を聞きたいと思います。佐竹さんと最初に知り合ったのって、何年前でしたっけ?

 

佐竹 知り合ったのは、2013年ですね。

 

角 僕もその時から所属が変わりましたけど、佐竹さんも変わって。法律系の事務所から、ゲーム会社である株式会社コロプラに転身したんですよね。ゲーム会社で弁理士さんの仕事って、どういったことをするんですか?

 

佐竹 基本的に、ITやWebの会社の価値ある資産はアプリケーションですよね。プラットフォームのような、成功すれば独占や寡占となる分野と違って、私たちのようなゲーム会社は、競合相手との競争があるんです。その競争のために、特許を使うんですよ。ゲーム業界の中でも、特に伝統的な会社には、ちゃんと法務部隊がいますね。

 

角 伝統的な会社というと?

 

佐竹 例えば、6大企業とも言われているんですが、バンダイナムコ、カプコン、スクエアエニックス、コナミ、コーエーテクモ、セガが代表格です。任天堂はプラットフォーマーということで、この中には入っていないんですけれど。これらの会社は法務部隊がしっかりしていて、自社の製品が他社の特許を侵害しないようにかわしたり、あるいは、自社の特許を侵害する相手がいたら訴訟などを視野に入れて攻撃すると。

 

で、私たちのような新興企業も、ちゃんと他社の特許をかわしながら価値のあるものを作っていこうとすると、特許をきちんと見ることができる人が必要ですし、自社でも特許を持って知財を保護しないと、場合によっては攻撃されっぱなしで、カウンターパンチも打てないような状況になるんです。

 

角 なるほど、例えばクロスライセンスという、相手が自社の知財を侵害している要素を見つけて相殺するようなやり方で解決しようと思うと、やっぱり自社でも特許をしっかり取って知財化しておかないと、対抗できないわけですね。

 

佐竹 そうですね。武器がなければ、そもそも話し合いのテーブルにすら入れない。まず、特許を取得しまくるというステージが最初にあって。ようやくコロプラの特許もそれなりの数に増えてきましたので、やっと6大企業から認識されるようになったんです。ようやく会社名を認識されるというステージに進みました(笑)。

 

角 そこまでのハードルがあるんですか! 新興の会社って他にもいっぱいありますよね。そういうところはみんな、そういうことをしてるんですか。

 

佐竹 あまり、やってないですね。ジャンルを数多く出されていない会社の場合は、よその特許を踏んでしまうことも少なく、あまり危なくないということもありますしね。しかし、いろいろなジャンルを出していくと、踏んでしまって攻撃される可能性も高くなります。私たちの分野だと、最初に特許を多く取得するようになったのは、DeNAとGREEですね。大きなきっかけは、いわゆる「釣りゲー訴訟」で。

 

角 ありましたね〜。

 

佐竹 要は、すごく似てますよね、という話でしたよね。確かにそうなんですが、その時は、著作権くらいしか主張できる根拠がなかったんです。著作権って、そっくりそのまま模倣するデッドコピーに対しては主張できても、アイデアに関する部分などはカバーできないんですよ。そこで、じゃあ特許を取って保護すればいいんだね、と。それが2012〜2013年くらいの話です。そこから両社とも、どんどん特許を取得してきたのです。

 

角 そうか、そうやって特許でカバーしておかないと、自分たちの事業が守れないということですね。法律系の事務所にいらした時も、特許については同じような感じだったんでしょうか。例えば、通信関係をメインで扱われていましたけども、今、IoTがこれだけ市場として有望視されていて、そこをみんなが狙っていたと思うんですが、各社ともある程度のボリュームの特許を持って、自社の防衛と相手への攻撃の材料にしようという感じで多くの特許を取られていたんでしょうか。

 

佐竹 そうですね、特に電機メーカーと自動車メーカーの関係って、そのような前提だと思いますね。特許の数を出していないと話にならない。表沙汰になっていないけど裏で殴り合っているというケースがたくさんあります。あまりにも特許の数が多ければ、その中にお互いに有用な特許もあるので、それをお互いに利用しあって、ライセンス料を払わなくてすむようにするクロスライセンス契約を結びましょうということになるんです。面倒くさいので。

 

角 なるほど、お互い一個ずつ対処してられないと。

 

佐竹 メーカーは比較的、全方位的に特許を出願・取得するという感じがありますね。たとえばAppleのiPhoneは、携帯電話としては後発組じゃないですか。iPhoneを出すまで携帯電話出してなかった企業が新規参入する場合、どうやって他社が持っている膨大な特許をかわすんだ、どうやって戦うんだって話を、当然したはずなんですよね。Appleはどうしたかっていうと、スマートフォンならではの部分に的を絞って特許を取得していった。そのあたりAppleはやはり巧みですね。

特許が邪魔する? オープンイノベーションと特許の関係

角 特許ってもともと、新しいことをやらせるためのインセンティブの仕組みだと思うんですけれども、それが逆に、新しいことをやろうとしている人の邪魔をすることがありますよね。全方位に出した特許で、使われないまま死蔵している特許が、七並べのカードを止めるみたいなことになっていて。新しいことをやらない人の持ってる特許のせいで、時代が前に進まない感じがしたりして、どうにかならないものかと思うんですよ。調べることも難しいし。

 

佐竹 数が多すぎるんですよね。誰がどんな特許を出しているか、なかなか簡単に分からなくなっています。活用の前に検索するデータベースすら使いやすいものがない。でも最近は、調べること自体のハードルが昔に比べてずいぶん下がりました。その理由は、Googleなんです。今まで、特許を調べることはそれなりの職人技で、人間がある程度ジャンルに分類したものを、カテゴリーとキーワードで調べるというのが職人技だった。それが、グーグル先生にですね、適当にぱちぱち言葉を入れたら、ちゃんとそれっぽいのが出てくるんですよ。十分、実務にも使えるんです。

 

 

角 やはりGoogleですか!

 

佐竹 でも、特許を調べてそれを利用するというよりも、IT分野に限って言えば、新しい特許を取ることを頑張る方がいいかなって気がしますね。新しいデバイスが出たとか、そういったタイミングで、「そのデバイスだからできること」を考えて出願すれば、じゅうぶん特許になるんですよ。

 

角 なるほど、特許を取る側になれと。

 

佐竹 たとえば、スマートフォンは、いわゆるガラケーと操作体系が全く違うわけですよ。例えば、キーボードからスマートフォンのスクリーンを使った入力方法に変わったわけです。結局、情報をインプットして、処理して、アウトプットが返ってくるという一連の流れは同じなのですが、インプットの仕方に技術革新が起きています、と。スマートフォンの操作体系は、基本、タップだフリックだという話じゃないですか。そこはOSとか端末メーカーが開発するんだけど、「フリックを使ってこうする」という新しい方法を考えれば、権利が取れる可能性がある。そこで頑張ったほうがいいと思うんです。

 

角 僕が扱っている「オープンイノベーション」と、最初は、やろうとしてることがあって、それに必要な技術に関する特許を探そうという感じだったんですが、それが今、オープンイノベーションが進んで「2.0」みたいな感じの時代になってて。そもそもユーザーが何を求めているかわからないから、何をすればいいのか、そこから一緒に考えましょう、というような企画があって、その一部分を探そうっていう下流の話だったのが、一気に、上流から一緒にやりましょうって話になってきてるんです。

 

そうすると、何を作るかはまだ分からないけど、私はこれができます、僕はこういうことがができます、とカードを出し合って、そこから企画を考えていくことを結構やるんですね。そうなると、次の段階として、誰がどれだけそこに貢献したかって話が出てきますよね。

 

佐竹 出ますね。

 

角 元々の手札として、どんな技術を持っているか、というのもそうだし、企画の段階で誰がどれだけ意見を出したかとか。そういった貢献の度合いを評価して、最終的に出てきたものに対する権利を、折半にしよう、4:6にしよう、と決める感じになると思うんですけど、そういった話し合いってよくあるんでしょうか?

 

佐竹 普通にありますね。企業同士でも、共同で特許出しましょう、という話はしょちゅうやってるし、大学と企業、大学同士でも行われています。ただ特許というものは、わりとはっきりしていて、技術論なので、この特許を完成させるのに貢献した人ってこの人だよね、ということは、そこそこ特定できるわけです。その中で、では誰が、どれだけ貢献したかって、関わった人が集まれば、だいたい決まるんです。現場の人同士で、この人が中心だよね、あるいは、みんなで考えたよね、と、だいたい素案はできます。

 

角 もめないですか?

 

佐竹 あんまり、技術論ではもめないですね。特許は共有してるかどうか、共同で出してるかどうかという部分が大事で、持ち分がどれだけか、ということについては重要度が下がるんです。

 

角 でも、その持ち分に応じて、得られるお金が変わってくるんですよね? 佐竹 そうですが、事業として成立するかどうか、ライセンスできるかどうかのほうが大事なので。

 

ハッカソンの成果は誰のもの?

 

角 さっきも触れましたが、上流から一緒にやりましょう、というのが、最近の流れというか、昔と違うところだと思うんですが、なかなかうまくいかない現実もあって。ハッカソンやアイデアソン、アクセラレーションプログラムなんかが流行っていますけども、やり始める時に最初にもめるのが、「そこで出てきた成果物って誰のものなの?」とところなんですよね。もめるというか、主催者サイドが動けなくなるというか。

 

佐竹 そこがよくわからないと、参加者も不安ですよね。これ、参加して大丈夫なのか、と。

 

角 僕が最初に企業とやったハッカソンだと、企業側が、初めての経験ということもあって、過剰にディフェンシブな規約じゃないと開催できませんって感じになって。法務担当が許してくれないと。

 

佐竹 法務からすれば、そう考えますね。

 

角 なので、その時は、主催者が総取りするような形でやるしかなかったんですけど、そうすると法務は大丈夫でも、別のところで炎上しますよね。レピュテーションリスクが生じるとか。トータルとしてみた時、そのやり方って法務の担当が大丈夫なだけで、広報の担当にすれば「なにやってんだよ!」となりますよね。最近はさすがにそういうトラブルもあまりないですけど。

 

佐竹 事例もなかった時代から比べると変わりましたよね。結局、法務部門の部分最適が全体最適じゃないですよ、という話で。

 

角 結果として、権利に関するリスクは思ったほどではなかった、ということだと思うんです。逆に言えばそれって、権利で揉めるほどのものがあまり生まれてないんだってことでもありますよね。でも、そういった場で生まれたものから新たな特許を取ることだってできるんじゃないか、ビジネスに繋がるものも生まれるんじゃないかと思っているんですけど、どうでしょうか。

 

佐竹 いけますね。十分にあると思います。昔は「課題ははっきりしているけど解決方法が分かりません」だったのが、今は、例えば大企業は、「リソースあります。研究開発費あります。でも何を作っていいか分かりません。みんなが何を欲しがっているのか分かりません」という状況ですよね。でもIT分野は、その辺はすごく分かりやすいと思っています。求められているものが見えやすい。じゃあ、こうやって価値あるものを出せばいい、というのが分かる。そこまで的を絞れていれば、特許になる可能性が十分にあるんです。

 

角 そうなんですか。

 

佐竹 クラウドサービスってだいたい特許になるんですよ。技術的に見たら単に「端末からデータを渡して、サーバが処理して返しました」と話なので、特許にならなさそうに見えますよね。そう見えるんだけど、「その情報をこう処理することに、こんな意味があるんですよ」とことを説明すれば、それは特許になり得るんです。そこにUIなんかが加わればさらによい。より簡単にインプットできるんです、とか。例えば、キーボードとスマホの操作は違いますし、いかにデータを入力してもらうかって大事ですよね。データのインプットがないと、価値あるアウトプットは出せませんので。どうやったらより多くのインプットを得られるUIが作れるですかという部分は、まだまだ大いに工夫の余地があります。

 

角 たとえば、今までキーボード叩いて入力していたのを、写真を撮ってOCRで処理します、とすれば、特許取れちゃう可能性があるってことですか。

 

佐竹 特許になる可能性は十分にありますね。入力ステップを一個省きますよということですから。結局、処理能力やインフラ部分はAmazonなどのリソースを使うわけじゃないですか。その後にはAppleやGoogleが作ったOSがあって、基本的な操作部分は2000年代の前半には出来上がってるわけですよ。でも、UIを工夫して「これを使うと、こういう情報を簡単に入力できますよ、ユーザーはこれなら入力してくれますよ」というと、それには大きな価値があるんです。

 

狙い目!? 課題が新しければ特許は誰も取ってない

 

角 もう、既にいろいろみんな特許を取ってそうなんですけど、取ってないんですか?

 

佐竹 そもそも課題が新しければ、取ってない可能性がありますよね。課題の設定というのはとても大事です。スマホ専業証券として「TechCrunch Tokyo 2015」のスタートアップバトル決勝戦で審査員特別賞とAWS賞を受賞した「One Tap BUY」という「スマホで株が買えます」というサービスがあり、スマホに最適化された操作体系になってるんですよ。インターネット専業証券は昔からありますが、それらは基本的にパソコンのインターフェースなので、インプットに関して特長のある操作はいままでなかった。キーボードによる入力前提で、検索して銘柄選んで買う、という一連の流れですよね。

 

角 そうですよね。

 

 

佐竹 それが「One Tap BUY」は、スマホでもっと株式投資を気軽にやってほしいという趣旨で、30銘柄限定で、1万円から買えます、3タップで株購入できます、というUIを作り上げました。全然違う顧客ターゲット、今まで株式投資なんかやったことないですって人たちを想定して、操作を簡単にしよう、銘柄を絞ろう、と考えていくと、それ相応のUIになるんですよね。そうなるともう、強い特許が取れるんですよ。

 

角 インプット、アウトプットの、インターフェースが変わることによって、次の特許がどんどん生まれてくると。

 

佐竹 ですね。

 

角 じゃあ次、Amazon Echoがくると、また……。

 

佐竹 来るわけですよ。今度は音声入力します、処理して、返します、と。そうするとまた、どうやって音声入力してもらうか、というところに工夫の余地があるんですよ。

 

角 例えば、テレビを音声入力でチャンネルを変える、という話だったら、そのインターフェースのところに何かあるかもしれない、ということですか。

 

佐竹 リモコンではなくしてしまって、こうするんだ、というUIはまだあり得そうですね。さすがに電気メーカーはリソースがあるので、既に色々取り組みがありますが、他の分野がいっぱいありますよね。Webサービスとか、スマホにアプリを乗せるようなサービスとか。特に、EC以外だとWeb系の企業は特許について、ほんとうに弱い。昔は必要なかったんですよ。ほとんど一社が独占していますっていうような状態でしたので。基本的にインプットがキーボードっていう汎用品だったから、そんなに物理的なインターフェースを気にしなくてもよくて、Webブラウザ上の画面さえ工夫すればよかったんです。だけど、入力手段が音声になれば、状況が大きく変わってくる。そもそも音声入力をパソコンでやる意味って、あまりないですよね。

 

角 そこでゲームチェンジが起きる可能性がある、と。

 

佐竹 そうなんですよ。

 

角 スマートフォンが普及したタイミングで一度ゲームチェンジ起きる可能性があって、実際ゲームの分野では起きたと思うんですよ。今までいっぱい売れてた据え置き型のコンシュマー機から、スマホに大きくシフトした。ゲームだけでなく、みんなの可処分時間がスマホにシフトしたことによって、他のところががさっと減った。そういうゲームチェンジが、また起きるかもしれなくて、しかもその時に発生してしかるべき特許が、まだぜんぜん取られてないかも知れないよってことですよね。これって、宝の山って話ですよね。

 

佐竹 そうですよ。

 

角 じゃあ今、体力あるところがアプリの特許なんかを、「インターフェースが変わったらこうなるだろう」と考えてバンバン取りまくったら、次の覇者になる可能性があるってことですよね。

 

佐竹 だから、怖いですよ。今、流れに乗っているWeb企業は逆に気をつけないとヤバイ。特許にあまり関心がなかったから。

 

角 コロプラはどうですか?

 

佐竹 ここ数年、どんどん特許を取っています。中でも、VRの分野での取得が多いですね。VRはここ数年、一気に盛り上がってきた感じがしますね。でも技術自体は何十年も前からあるんですよ。ここへきてやっと盛り上がってきたのは、グラフィックの描画レートが上がったために、ようやく見るに耐えるものになった。昔はマシンパワーが足りなくて、VRゲームなんてものは作れなかった。工場の危険な設備点検のシミュレーションをするためなどに実用化されていましたが、ゲームとなると、描画速度が必要だったし、操作の要素も必要になってくる。

 

そういうところが特許の狙い目なんです。「ちょっと前まで技術開発がされていなかった理由」が分かれば、チャンスです。ゲームでいう描画速度みたいな音声コントロールも、ここ数年のことです。Siriなんかは先行してあったけれど、簡単なことしかできなかった。あれがようやく進化してきたということは、色々特許を伴った新技術があるはずなんですよ。音声認識があることを前提にしたサービスってまだあまりありません。そこに可能性があるわけですね。

 

角 ちょっと、これ、この対談を読んでる人はぜひ!

 

佐竹 ぜひ。

 

角 こういうこと、言ってる人います?

 

佐竹 あまりいないですね。

 

角 僕がこの話、そのままコンサル先に持っていっても、「おおっ」となる感じですかね。

 

佐竹 なると思いますよ。One Tap BUY なんて、特にいいと思いますね。あれは新しい技術ではなくて、UIを工夫した事例で。どうして今までなかったのか、と。この記事、スマートフォンで読んでいる人がきっと多いですよね。その中で、今まで株式投資をしたことないんです、と人はおそらくいっぱいいるんじゃないですか。旧来のインターネット証券が取れなかった潜在的な顧客が、いっぱいいるわけですよ。

 

角 新しい層を取りにいくというのは、すごくいいですね。

 

インターフェースの変わり目が特許の取りどころ

 

 

角 今なら、音声入力系特許の取り方を指南する会社なんてのも作れそうですよね。

 

佐竹 相当いけると思います。例えば、次期iPhoneはどうなるんだっていうような話題に大勢が食いつくのって、そういうことが次の技術トレンドの焦点であるからなんですよ。次のインターフェースはどうなるか。新しい操作にユーザーは慣れてくれるか、慣れる前提で考えるならこんなサービスを、このインターフェースでやりたい、とかね。

 

角 なにがあるかな、ほかに。

 

佐竹 手を使ったコントロールが業界内でもよくテーマになっているので、これはもうそろそろ来るんじゃないかと思っています。ハンドコントローラー。いままでは、指を使っていましたが、それを手で。つかむ動作をコントロールに使ったり。マウスのクリックを、つかむことに対応させるとか。もうそろそろ予兆が出てきたかなと思います。基本の操作体系は既に取られているにしても、それでアプリの操作をどうするか、というのは、まだ可能性があると思います。

 

角 Leap Motionとか?

 

佐竹 Leap Motionも前からありますね。しかし、デバイスの普及がネックですよね。その点では、まずVRの分野はハンドに移行しています。Oculus、HTC Vive もそうですね。そして、ニンテンドースイッチ。HD振動なんて言ってますけど、あのコントローラー。赤外線カメラで手の形を判別して、距離も取れる。

 

角 ニンテンドースイッチがきっかけで、フィンガーインターフェースからハンドインターフェースへの移行が進む?

 

佐竹 その可能性はあります。赤外線カメラが優秀だなって思ったのは、「はじく」という操作があるんですが、指でする操作なんですよ。指の操作を赤外線カメラで継承している。みんなが既に慣れている指の操作にもつながっているんです。

 

角 ああ、そこは、新しい動作を覚える必要がないんだ! ジェスチャー入力って3つくらいしか覚えられないって話を聞いたことがあって、なかなか普及しないんじゃないかって思ってたけど、今のお話を聞くと、確かにそのシナリオはあり得るなって気がしてきました。だって、前のステップで覚えたことが繋がってるから、追加の3個、3個、と、いけますもんね。すると、手で操作する文化がどういうプロセスでできていくのかを見極めて、その次のタイミングを上手く捉えて特許を取得していくっていうのが、ひとつの形ですね。

 

佐竹 そうですね。

 

デバイスの普及がビジネスのタイミング

 

角 インターフェースの変わり目が特許の取りどころっていうのは、そのまま、インターフェースの変わり目がイノベーションの起きどころ、ということだという話ですよね。そこでゲームチェンジが起きる可能性があって、そこをみんな狙っても行くし、怖がってもいる、みたいな。日本の会社って、そこをあまり意識してないんじゃないか、特に昔ながらのエスタブリッシュな会社ほど意識してないんじゃないかって気がするんですが、どうでしょうか。

 

佐竹 エスタブリッシュだからというわけではなく、情報発信の仕方などを見る限り、全体的にあまり意識している感じがしないですね。。ただ、ビジネスはやっぱり「タイミング」だと思っていて。例えば、パズドラが大ヒットしましたけど、あれはスマートフォンが普及していないとヒットしなかったと思います。パズドラがリリースされた2012年はスマホが一気に普及していくタイミングで、そこからゲームを作り始めても間に合わないんですよ。その前から可能性を信じて、開発して準備しておかないと、そのタイミングに乗ることができないんですよね。

 

角 AmazonとかGoogleは、その辺をだいぶ意識してると思うんですよね。いち早く、音声に入力が変わりそうだっていうのを感じて。たぶんアメリカの中学生なんかがSiriで入力してるのを見てて、ああもうこれだなって。そういった準備の上で、Echoを出したりGoogle Homeを出したりしてると思うんですよね。でも日本の会社は、市場ができたからうちも出そうって、乗っかってる感じがするんですよ。

 

AmazonにしろGoogleにしろ、なんかもっと、全然違うものを狙ってますよね。例えば、AmazonがEchoで、Alexaどんどん使っていいよとオープンソースにしているのは、Googleが検索やAndroidで築いた牙城を切り崩そうとしているからで、Googleはそうさせまいとしてる、ということじゃないですか。でもそれと同じ気概を持ってやっている日本企業ってないなあ、と感じます。単に「このホームアシスタントロボが売れたらいいや」なんて思ってる会社しかないんじゃないかと。

 

佐竹 まったくその通りだと思います。ものになるかどうか分からないところに、追い越しの可能性があるんですよ。Googleは、PCからスマホに移行する時に、これのOSを握られると検索がGoogle経由じゃなくなるリスクが大きいと危惧してAndroidを作り、スマホを作ってと、追い越されないための準備をしたわけです。

 

角 ものになるかどうか分からないところに踏み出すと。

 

佐竹 日本だと今、シャープのロボホンくらいじゃないですか。昔はSONYのAIBOなんかもありましたけど。ロボホンも、1日にしてならずみたいなところがあって。先行して「エモパー」というスマートフォンがあったんですよ。音声で会話する技術はエモパーの頃からやっていて、それが後にお掃除ロボットにも繋がっていくんですよね。家の中にあるものをインターフェースにしたという。

 

角 あの辺のロボットの価値を、他の企業は分かってなくて、けっこう冷ややかに見てたと思うんですよね。将来的な夢というか価値のあるものって、あの「友達家電系」くらいしか思いつかないですよね、日本では。さらに突き詰めていけば、シャープはメーカーからサービサーに生まれ変わったりもする気がします。今、そこまで行けそうなのってシャープくらいじゃないかと。

 

佐竹 そうですね。シャープは昔からやってきている。でもいつ花開くかわからない。いつ流れが来るか分からないけど、その時のために準備している。ロボホンがそうだと思うんですが、そういったものを「最初に作った人」にしか分からない課題ってやっぱりあるんですが、それが強い特許につながる事って結構多いんですよ。

 

角 そこから徐々に、チェーンとして繋がっていけば。

 

佐竹 勝ちパターンのひとつではあると思います。

 

開発者の思い入れも大事

 

角 大企業が特許を持っていて、中小企業がやったらいいビジネスになりそうだけど、大企業としては規模が小さいから事業化しないっていう理由で死んでる技術ってあるじゃないですか。全方位に特許を出した結果、使われないまま死んでいく特許。あれ、もったいないなってすごく思うんですよね。国が、そういった死蔵特許を活用しようって呼びかける動きもあるにはあるんですが、今ひとつうまくいかない感じで。

 

佐竹 大学のライセンス管理なども民間会社がやってるんですが、ライセンスの形での技術の移転ならば、比較的うまくいくんです。大学としても、実用化するなら先生も協力しますよ、となりますよね。それが単に「あるから使っていいよ」だけだと、辛いですね。

 

角 AgIC(エージック)っていう、銀の導電性のインクで回路図をプリントする技術のスタートアップがあるんです。死蔵特許の活用事例として有名なのですが、特許を持っていた人が、自分でアピールしたらしいんですね。開発者がその技術に思い入れがあるとか、そういうのがないとうまくいかないですよね。

 

佐竹 そうですね、開発者がこんな未来を描いているって言うワクワクした「絵」がないと、続かないですね。

 

角 思いを持ってドライブをかけていく人がいて、そこにエネルギーを割かないとうまく事業化まで行かないっていう……。まあそれは特許じゃなくても同じですね。

 

佐竹 ですね。

 

角 なるほど、本日はどうもありがとうございました。

 

佐竹 ありがとうございました。

 

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