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対談

信用を可視化してビザを取得!? 匠新・田中さんが語る中国の今と日本の「バイアス」

日本・中国で唯一の日中スタートアップ&イノベーション支援プラットフォームである「匠新(Takumi Innovators)」

Filament, Inc. 創業2周年イベント『Re:Framing the Flame』の「グローバルセッション」にもご登壇いただいた、匠新の田中氏とCOO森澤の対談が実現。前後編に渡ってお届けします。後編では、中国の購買力やエコシステム、BAT、アリペイのサービスなど、中国の状況について、豊富なスライドとともにお話しいただきます。

プロフィール

田中 年一

田中 年一

日中で唯一の日中スタートアップ&イノベーション支援プラットフォームである「匠新 Takumi Innovators」の創業者CEO。また中国で最も国際的なスタートアップ&イノベーション支援プラットフォームの一つである「XNode 創極無限」のマネージングディレクターも兼務。 2013年に独立する以前はデロイトトーマツにおいて12年間M&Aアドバイザリー業務や投資コンサルティング業務、株式上場支援業務、上場企業監査業務等に従事。うち2005年から2009年の4年間はデロイトの上海オフィスに駐在し、中国企業の日本IPOプロジェクトや日系企業のIFRS監査、投資コンサルティング業務等に従事。デロイトトーマツに入社する以前はHewlett Packard社でシステムエンジニアとして4年間の大企業向けエンタープライズシステム開発・販売の経験も有する。 東京大学工学部航空宇宙工学科卒業、米国公認会計士、中国公認会計士科目合格(会計、税務)。

森澤 友和

森澤 友和

高知県高知市出身。 2015年 HULT International Business SchoolにてMBAを取得。 ロンドン、上海、ドバイの各キャンパスにて、リーダーシップ、ファイナンス、会計、デザイン思考など幅広く学ぶ。在学中のインターンシップを経て、2015年9月設立間もないFilament, Inc.に参画。 『オープンイノベーション』をキーワードに、企業間マッチング、新規事業創出サポート、ハッカソンイベント企画・実施、スタートアップ支援など架け橋(Catalyst)となるべく、既存の垣根を超えた活動を展開している。

日本から見た中国、中国から見た日本

 

森澤:ここからは、Filament2周年記念イベントの時に田中さんにご用意いただいたスライドを用いて、数字をベースにした中国の現状をご紹介いただきたいと思います。

田中:日本は、中国に対し、昔から製造業を中心にどんどん投資をしてきました。しかし、上図でいうと日本は黄色い折れ線なのですが、直近だと対前年比でマイナスになっています。一方で、青い線は、世界が中国に投資している額なんですが、こちらは依然として伸びてきています。

ですので、日本の中国への投資が減っている、イコール中国の経済がマイナスとうわけではないというのを、まず知ってほしいです。

 

森澤:2012年から2014年にかけて、ストンと落ちていますね。チャイナプラスワン(日本の製造業等が、製造拠点を中国に集中して構えることによるリスクを回避する為に、中国以外に生産拠点を持ち、分散投資をするという戦略)が影響しているのでしょうか?

 

田中:それはあると思います。

 

田中:次に、中国の購買力平価ベースのGDP比較です。日本、米国を超え、2021年には20兆ドルを超えます。中国やインドは伸びて、先進国はほぼ横ばいか、少し下がっています。

 

森澤:購買力平価GDPというのがあるんですね。

 

田中:はい。例えば、ある国だと1個のビッグマックが、日本やアメリカだと500円、中国だと800円で買われている、そうすると同じビッグマックを買うのにも、中国の方が、800円を出せるだけの購買力があります。その購買力でならしたGDPです。

 

森澤:なるほど。中国は、すでに2013年にはアメリカを抜いて、その幅を広げている。そして日本は、2011年の時点でインドの後塵を拝していますね。中国、アメリカ、インド、そして日本の順になっていますね。そして2021年までの予測ももその状態なんですね。

 

田中:中間所得層が伸びています。スターバックスの値段も、日本より高いですね。それでも買えるということになります。

 

 

田中:中国人の海外旅行客(日本以外の行き先も含む)は、2006年からずっと伸びています。

訪日については、2014年には120万人が250万人になり、2015年には250万人が500万人になりと、倍々で伸びてきていました。これは円安の影響が大きいです。

2016年は600万人と伸びが減っています。爆買いもなくなってきたので、中国人が日本で落とすお金も減っています。

それで、日本のメディアは「やっぱり中国は経済が悪いから」という報道もありますが、実際はそうではない。

このオレンジ色の部分ですが、海外では同じペースで増えてきています。

日本には爆買いするために行っていたけど、「別に中国でも買えるし、円も高くなっちゃったから、別のところに行こう」と、日本が旅行の選択肢から外れているだけなんです。

 

中国でスタートアップエコシステムが構築されている代表的な都市は4つあります。

北京、上海、杭州、深圳、それぞれ特徴が違います。

北京には名門の北京大学、清華大学があり、歴史も古く、スタートアップが一番盛り上がっています。

 

これが投資先の業種分布です。

 

北京はいろいろな分野が分散していてます。上海は、金融・フィンテック系が多く、またライフスタイル関係も北京よりも比率が高いのが特徴です。また、杭州はアリババの影響のあり、EC分野でのスタートアップというのがかなり高いですね。

 

森澤:アリババのベースは杭州なのですね。

 

田中:そうです。アリペイもあることから、金融系の比率も高いですね。

深圳は予想どおりハードウェアが多く、またエンタメ系も比率が高い。

 

森澤:北京は金融系が「その他」になっているし、上海のエンタメの割合は少ない。面白いですね。

 

躍進する中国企業、そしてBAT

 

次はユニコーン企業(企業としての評価額が10億ドル(約1100億円)以上で、非上場のベンチャー企業)についてです。大半がアメリカの企業なんですが、中国は35社あります。そして、日本は1社だけなんですよね。

 

森澤:メルカリ。

 

田中:そうです。

 

森澤:そういえば、シャオミ(小米科技)は携帯をはじめ、様々な製品を多角化して発売し、日本でも一時期話題になりましたが、その後聞かなくなりましたね。携帯メーカーも、いろいろな新興企業が出てきていますし。最近どうなんでしょうか?

 

田中:苦労していますね。コピー・トゥ・チャイナで他の企業の方が強くなっています。例えば、僕自身も使っているオッポ(OPPO・广东欧珀移动通信有限公司)の携帯はすごくいいですね。安いし。

 

森澤:カメラの性能もすごくいいですね。驚きます。

 

田中:あと、BAT。バイドゥ・アリババ・テンセントはすごい。日本でいう、ヤフー…ヤフーでもない、楽天…もう日本にはないかもしれないですね。インターネットのコンクロマリット(多種の業種・企業を統合してできた巨大企業集団)です。

 

森澤:それを、10年かそこらで築いた企業というわけですね。

 

田中:そうですね。特徴なのは、バイドゥは検索と地図。アリババはEC、決済。テンセントはWechat とQQ(インスタントメッセンジャー)とゲームを中心となって展開してきたということで、それぞれ発展してきた経緯が違います。

 

売り上げ構成は、バイドゥはネット広告が93%と単一の売り上げに偏りすぎてしまっています。またバイドゥの価値は、テンセントやアリババの1/4位の価値しかありません。

 

昨年、21歳の学生が、バイドゥで検索して見つけた、検索上位の病院を受診して亡くなったというニュースがありました。その病院は多額の広告費用をバイドゥに支払っていました。それが問題になって、バイドゥは苦戦を強いられています。

 

テンセントの時価総額はもう、トヨタの時価総額も大きく抜いて、アジアで一位です。2470億ドル。1ドル100円換算で24.7兆円。トヨタが10数兆円。

 

田中:変化、競争が激しいのが中国の特徴です。5年前までは日本でもよく見かけるクレジットカードのが5年前までは決済の6割くらいを占めていました。それが今はもう1割もないです。

 

アリペイだと、バーコードをスキャンして、金額を入れて、指紋認証すればもう決済される。セキュアで便利なんです。物によってはクーポン割引もあるし。やはりみんなそちらを使いますね。銀行のカードは、読み込んで、暗証番号入れて、サインするという手間があるので、カード決済はすごく減ってきていると思います。

 

森澤:自分でリアルの銀行の口座から、アリペイにチャージするんですか?

 

田中:しないですね。残高が足りなくなったら、勝手に銀行からチャージされます。例えば残高が2900元あって、3500元の買い物をしたら、銀行から600元アリペイに持ってきます。

 

森澤:オートチャージみたいな感じなんですね。Apple Payなどは使わないのでしょうか?

 

田中:ないですね。Apple Payとかだと、専用リーダーが必要になりますよね。アリペイはQRコードベースなので、ハードが必要ないんですよ。スマホさえあればいい。

 

森澤:支払う側も、支払いを受ける側も、ということですね。

 

田中:そう。現在中国で、圧倒的にアリペイがシェアを取っているのに、わざわざハードウェアに投資するするメリットがありません。しかもAndroidだと対応していなかったり。

 

芝麻信用で「信用」を可視化する

森澤:これはなんですか?

 

田中:信用評価サービスです。利用するサービスの取引状況や交友関係から、その人の信用度をアリババがスコアリングしているんです。

 

森澤:なるほど。EC、SNS、決済までもカバーしているからこそ築ける仕組みですね。スコアを上げるコツってあるんですか?

 

田中:日々の決済情報以外にも、自分は車を持っている、家を持っているというのを登録できます。さらに、スコアが高い人と繋がると、自分のスコアが高くなります。

 

森澤:面白い!

 

田中:スコアが高いと、例えば家を借りるときに敷金が要らなくなったり、レンタカーを借りるときにデポジット(保証金)が要らなくなったり、ビザが取りやすくなるといったメリットがあります。

 

森澤:国家も他国も巻き込んでいる、それだけの信用力を担保できるとその国も認めている。すごいな。2周年イベントの時は、これらの部分は駆け足気味で、しかも英語だったので、ここは記事にして強調したいです。

 

「バイアス」をリフレームしたい

 

森澤:では、最後に田中さんの「リフレームしたいもの」を教えていただけますか?

 

田中:そうですね。ぱっと思いついたのが、日本人のマインドセットをリフレームなんですけど、でも偉そうですね。偉そうにせずに意図を伝えたい。リフレーム……バイアス……

 

森澤:いいですね。そこは苦労されていますもんね。ネットワークを広げながら、一歩ずつ変えていっているところだと思うので。

 

田中:実際、日本以外のスタートアップが中国にチャレンジに来ている中で、日本は少ない。それってやはりバイアスなんですよね。情報にフィルターがかかり、かつ情報が少ない。それを再構築したいですね。

 

森澤:「Re:Frame中国へのバイアス・偏見」ですね。今日はありがとうございました。

 

前編はこちらからご覧ください

日本の企業に来て欲しい! 匠新・田中さんが指南するC2C(コピー・トゥ・チャイナ)の実態とその戦い方
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