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対談

社会の変化に対応できる「挑む組織」をつくる IDOM 社の挑戦

2016年7月、ガリバーインターナショナルは、「IDOM」に社名変更しました。詳細は「中古車ガリバー、誰も知らない"新社名"の謎」という記事で、東洋経済オンラインにも掲載されています。同記事で、羽鳥由宇介社長は社名変更の理由を「社名変更は次のステージに向かうという社内に対するメッセージ」と語っています。 そのメッセージを受け、人事・広報執行役員の北島氏はどんな人事戦略を立てているのでしょうか? そして、北島氏が描く未来の組織とは? フィラメントの角がお伺いしました。

プロフィール

北島 昇

北島 昇

2007年ガリバーインターナショナル(現IDOM)入社。 人事、マーケティング、商業施設向け新型店舗フォーマット開発、経営企画を経て、現在は新規事業開発、オープンイノベーション、人事制度改革、カルチャートランスフォーメーションの領域を担当。

角 勝

角 勝

大学で歴史を学んだ後、大阪市に入職。在職中にイノベーション創出を支援する施設「大阪イノベーションハブ」の設立・運営に携わったのちに2015年3月大阪市を退職。各地でオープンイノベーションの支援、ハッカソンの企画運営を行っている。

社名変更したおかげで、組織改革が進んだ。

 

角:本日の対談相手は、IDOMで新規事業・人事・広報を統括されている執行役員の北島昇さんです。

IDOMといえば定額で車を乗り換えられるサービスである「NOREL」や、中古車のC2C(個人間売買)サービスである「ガリバーフリマ」など魅力的な新規事業を打ち出しています。 聞きたいことは山ほどあるのですが、とにかく、まずIDOMって社名が素晴らしいなと思いまして。

 

北島:嬉しいです。IDOMに社名変更したおかげで、いろいろやりやすくなりましたよ。人事制度を変えるってときも、「だって、社名が「挑む」になったよね」って言えるから(笑)

 

角:ネーミングって大事ですね。人事制度も変えたんですか?

 

北島:はい。社名どおり、「挑む人」が働きやすい人事制度に変えました。もともと、経営者が「挑む」思想を貫いた文化作りをしたいという気持ちを持っているので、それを人事制度にも反映させました。

 

角:それは会社が大きくなるにつれて、「挑む」というカルチャーが薄まってしまったと感じることがあったのでしょうか?

 

北島:それもありましたが、急激に市場環境も変化しているのでその必要性も更にましてきますし。

 

角:危機感が、社名変更につながった?

 

北島:まさに危機感ですね。

 

角:中古車売買ビジネスだけでは、以前のような成長は難しいと。

 

北島:弊社のオーナー(羽鳥由宇介氏)の基本思想が、「会社の売り上げが5%上がりました」というような安定よりも、挑戦し続けることを大切にしているんですよね。

 

角:経営陣としても、店舗での中古車売買ビジネスだけで会社を維持するよりも、新しい挑戦・成長の機会を生み続けることを重視している、ということですね。

 

北島:ええ。ビジネスの維持ということもありますが、そのやり方について自己否定感も強いですね。自分達の仕事がこのままでいいのかとか。

 

角:ここまでできたから、これでいいやって、満足しないということでしょうか?

 

北島:はい。常に変わり続けようとしています。今回の社名変更についても、「私たちは世の中を変えようとしている。それに比べたら、会社の名前を変えることぐらい、大したことではないんだ」というメッセージも込められています。

とにかく、思考の枠とか、フレームとかが大嫌いなんですよ。「こういう風に整理できますよね」と言われても、「なぜ思考を整理、制限するの?」 と。

 

角:整理するよりも、壊すのが好きなんですね? 自己を否定して、壊し続ける。

 

北島:大好きですね。

 

専門部署の役割を見直し、社員がオーナーシップを持てる組織へ

 

 

角:そういう「壊す」マインドが、組織にも影響していますか?

 

北島:はい。影響していますね。例えばバリューの1つにもある「仕組み化」の最上位って、組織をなくすことだと思っているんですよ。例えば、専門部署って機能を拡充すればするほど通常は肥大化していくんですよね。人もお金も線形に必要性が増す。

 

 

角:たとえばマーケティングの部署はそれにあたりますよね。事業全体でどうか、より、マーケティング部署単体の都合で物事が動かざるを得なくなったり。マーケティングをするのに、部署間で余計な調整作業が出てきてしまったり……。

 

北島:ええ。あくまで思考実験ですが、そこでマーケティングという部署自体をなくしてみましょうと考える。そうすると何が起きるかというと、「各事業部にマーケティングができる人間を作ろう、育てよう」もしくは、「各事業部で、マーケティングのクオリティを担保するために、ツールを作ろう」という発想になります。

 

角:全員が、経営者の視点で働くようになる、ということですね。部署ごとに分けてしまうと、業務が細分化されすぎて、その視点を持ちづらい。そうすると、オーナーマインドを持たなくなってしまう。マーケティングのことはわかるけど、他のことはわからない。逆に、「マーケティングのことならあの人に聞いて承認をとらないと」となる。あれは良くないと思います。

一方で、NORELのプロジェクトメンバーは、すでにオーナーマインドを持ち合わせていますよね。

 

北島:まだまだ拙い歩みではありますが、彼らはオーナーマインドの結晶ですよ。前にね、NORELの人間が、上司にこう聞いたんですよ。「〇〇さんはどうしたいんですか?」って。そしたらその上司が怒ったんですね。「俺がどう思うかじゃない。ユーザーがどう思うかだ」って。

 

角:上司がどうおもうか、部署がどうかではなく、プロジェクトの人間が全体的な目線で考えているということですね。

 

人事部も役割を見直し、プラットフォーム作りに注力する

 

角:人事制度はどのように変えたのでしょうか。

 

北島:はい、既存の人事制度は管制塔のようなものでした。会社がこういう仲間であって欲しいという像の提示ではなく、ルールの塊でした。また、採用・育成・評価・異動の管理を一括して人事がやっていましたが、人事部以外の社員にはわからない部分も多かった。

 

角:ブラックボックス化されていたわけですね。

 

 

 

北島:IDOM社の新しい人事制度は、その権限をできるかぎり部署や社員に委譲し、人事部は管制塔からプラットフォームづくりに役割変更しました。「ゲームのルールは提示します。後は自分で選んでください」という。

 

角:適切なルールを作れば、監督がいなくても、社員が個々の判断で自由に行動できるようになりますね。

 

北島:おっしゃる通りです。今はちょうど変革期なので。僕は管制塔を壊す立場にいますが、プラットフォーム化が進めば、それは僕の仕事ではなくなります。

 

角:これまで人事部にあった権限を、社員に移譲していく。自分の部署で採用し、自分で行きたい部署に交渉し、部署を受け入れる。素晴らしいですね。でもそのためには関係作りが重要になりますよね?

 

北島:はい。だから弊社にはまだトライアル中ですが「わたご」という仕組みもあるんですよ。

 

角:わたご、ですか?

 

北島:「私をご飯に連れてって」の略です。上長が部下をご飯に誘うのではなく、興味のある部署の部長にご飯を食べに連れていってもらう制度です。

 

角:それ、面白いですね!

 

北島:手をあげた人間、積極的に動いた人間が報われるべきだと思っていますから。

 

角:なるほど。これもまた、「挑む」話ですね。しかし人事の方はどういう反応だったんでしょうか? 他の人たちも、オーナーや北島さんと同じように「変わりたい」というマインドを持った人ばかりなんでしょうか?

 

北島:僕の周りはそういう人が多いですが、そうでない人ももちろんいます。しかし今回の人事制度は、挑戦を続ける社員やそうなりたい人を最優先することにしました。今IDOMは変わらなかったら、今後も変わらない。そんな覚悟をもっています。文化を変えていくためには、リスクを負ってでも個人、組織、会社を大きく成長させるための変化を生むべきだという判断をしました。

 

 

角:そうですね。会社のフェーズによって、求める人材も変わってきますからね。

 

常に社会のことを考えるから、会社が変化できる。

 

角:たとえば既存事業は、新規事業のことをどうみているんですか?

 

北島:面白がってくれていますよ。C2C(個人間売買)も、これって、普通に考えたら、既存の中古車売買と競合するのでは? となりますよね。「俺らの存在はどうなるんだ!」って。

 

角:なりますよ! 僕もそれが気になっていました。

 

北島:それが、現場では「武器が来た」と思っているんです。新規事業を利用して、もっとお客さんに価値を提供できないか、もともとの買い取りビジネスと、C2Cを含めて、一つのチャネルにできないかという提案があり、今まさに試行錯誤をしています。

NORELについても同様で、「来店した家族のニーズをヒアリングして、中古車を買うのとNORELのどちらが合っているかを提案できるようなお店を作りたい」という声もあがっているんですよ。事業部や現場から。

 

角:全体を考えているんですね。現場の人たちに、変化を許容するキャパシティがあるんですね。

 

北島:そうですね。共存できています。

 

角:最後にお伺いしたいのですが、IDOMをどういう組織にどうしていきたいと考えていますか?

 

北島:社員や組織が、会社のことではなく、社会のことを考えて動く組織を作りたいですね。会社目線を「社会目線」に合わせるというか。今までは会社のことばかりを考えていたらそれでよかったのかもしれませんが、今はもう、自分の所属する会社の思考、枠、行動様式に従っていたら、その会社から守ってもらえるという時代じゃなくなっていますからね。

 

角:わかります。部署や会社のことにしか目線が行っていなければ、小さな市場に取り残されてしまうかもしれません。

 

北島:社会にあわせて挑みつづけなければならない。これからの人事の仕事は、そういう社員や組織が活躍できる環境を整えることなんじゃないかって思っています。

 

角:社会に合わせて変化する組織のあり方、その中での人事の役割、勉強になることばかりでした。ありがとうございました。

 

(編集 羽渕 彰博)


これからフィラメントは、新機軸として個人と個人が組織を超えて有機的に結合する仕組みづくりに取り組みます。

会社組織の生産性確保から、社会全体の生産性向上をめざすやり方を共に考え、ご提案してまいります。

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