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対談

資生堂CSOに就任する留目真伸さんに学ぶプロ経営者の「美」

やをら一眼レフカメラを、新宿のバーで取り出した。

フィラメントCEO、角勝、45歳。パシャパシャと写真を撮りまくる。

およそオーセンティックなバーでグラスを傾ける所作ではない。その目は、いつもの面白いことを思いついたときのキラキラした目である。ひとしきり写真を撮りまくると、言ったもんがちとばかりに、こう切り出した。

プロフィール

留目真伸(とどめ・まさのぶ)

留目真伸(とどめ・まさのぶ)

株式会社HIZZLE ファウンダー / 代表取締役

7月1日より株式会社資生堂Chief Strategy Officerに就任予定

早稲田大学政治経済学部卒業。総合商社、戦略コンサルティング、外資系IT等において、代表取締役社長兼CEOを含む要職を歴任。マーケティング、新規事業開発、デジタルトランスフォーメーション、オープンイノベーションや共創をベースにした価値創造等、大局観・世界観に基づく、時代の感覚を鋭く捉えたストーリーの紡ぎ出しや、事業構想、人の能力を引き出す組織の設計・運営を得意としている。自らの経営者としてのスケールの拡大とともに、手触り感のあるプロジェクト、社会的な意味のある事業創出にもパッションを持って取り組んでいる。

角勝(すみ・まさる)

角勝(すみ・まさる)

元公務員(大阪市職員)。前職では「大阪イノベーションハブ」の立上げと企画を担当し、西日本を代表するイノベーション拠点に育てた。 現在は、「共創の場をつくる」、「共創の場から生まれたものを育てる」をミッションとして、共創人材の育成や共創ベースでの新規事業創出を主導するオープンイノベーションオーガナイザーとして活躍。大手企業5社・ベンチャー企業1社と顧問契約を結ぶとともに、ハッカソンをはじめとするイノベーションイベントのスペシャリストとして年間で50件を超えるイベントに携わる日本でも有数の共創分野の実践者である。

宮内俊樹(みやうち・としき)

宮内俊樹(みやうち・としき)

1967年生まれ。早稲田大学法学部卒。雑誌編集者を経て、2006年ヤフー株式会社に入社。Yahoo!きっず、Yahoo!ボランティアの企画担当ののち、2012年より社会貢献サービスの全体統括を担当。2014年より大阪開発室本部長、2015年ライフラインユニットユニットマネージャーを兼務し天気、路線、防災のサービスを統括。2017年、オープンイノベーションユニットの責任者、Techbase VietNamの会長を兼務。現在はメディアカンパニーに所属

答えはトップダウンではなく現場の中にある

 

角:そこまで言ってくださるなら、留目さん、フィラメントを一緒にやりませんか?

 

留目:あはは。そう来ましたか。いいですよ(笑)。

 

角:ほんとですか! ほんとですか!

 

(目をキラキラさせて喜ぶCEO角)

 

留目:自分の会社は、実際に経営者が育っていくプロジェクトをやっていきたいので、仲間が必要。フィラメントとももちろん協働していきたい。実際にこういう事業ができたらいいなとか、このスタートアップはこういう風に定義を変えていったらいいなとか、あるいはこの大企業の新規事業って社外と一緒にやった方がいいんじゃないかな、といった事業化や座組みの支援をやっていきたいし、そういう場づくりをしていきたいし、そのチームに関わる人全員で学んでいきたい。

 

角:留目さん自身も学びながら、型をつくっていくってことですよね。それって

まさにフィラメントがQUMを実施した意義やステートメントと同じなんですよ。

 

留目:会社ってもともとプロジェクト、世の中の課題を資本主義の仕組みで解決していくものだと思う。それは大企業の新規事業でもいいし、スタートアップでもいいし、あるいは共同のエフォートでもいいんですけど。そういう社会にインパクトのあるプロジェクトを回せるプロ経営者を育てていきたい。

 

角:プロ経営者3.0を目指す、会社人から社会人になるためにいちばん必要な要素ってなんでしょうか?

 

留目:やっぱり、社会とのつながりを考え続けるってこと。大企業での仕事だとしても、それが社会にとってどんな価値になっているのか、お客さんにどう役にたっているのか、それを徹底的に考える。これからのIoTの世の中っていうのは、トップダウンではなくて、現場に答えがあると思うんです。これまでのセグメンテーションが通用しなくなってきているし、状況に応じて求められるものもどんどん変化する。そして、その答えはローカルでのパートナーシップやユニークな組み合わせによってしか解決しなくなってきているから、現場の人がひとりひとり社会人になって、この問題をどう解決していくのかを考えないとイノベーションって生まれない。

 

角:個人のパーソナリティが問われる時代ですよね。いわゆる信用経済的な。

 

留目:まさに会社での役職は関係ない。社会における信用が大事です。どういうビジョンを持っていて何ができる人なのか、フラットなマインドを持っている人なのか、それとも傲慢な人なのか、そういうことがすごく大事です。原始時代だって、狩りに行く時には誰かがリーダーだったわけで、リーダーって自然発生的なもの。それは定量化できないし見えないけれどもやっぱり「信用」なんです。近代組織論の中ではそれが階級とか役職になったけど、信用がない人がそのポジションについたりすると、ものすごく組織としては不幸なわけですよ。リーダーシップが「信用」を軸にした本来あるべき姿に戻っているともいえる。

 

角:プロ経営者を育てる科学的なアプローチが田所さんの「CxOの育成」だとすれば、実践して育てる方法もあると思います。留目さんがやろうとしているのはまさにそういうリーダー、プロ経営者を実践的に育てることですよね。

 

留目:僕はどちらかというと実務家なので、やりながら方法論を作っていきたいですね。まだ完成形ではないし、もっとビビットで再現可能な形にしていきたい。それこそ、田所さんみたいな人にケーススタディを教えてもらいながら。こないだ田所さんがいってたCxOの「7Sと1C」とか。ストーリーをファインドできるかどうか、Whyを問い続けられるかは経営者としてすごく重要で、自分が考えていたこととぴったり同じだったので、びっくりしましたよね。これだ、と思いました。

 

角:フィラメントはフラットなプラットフォームだっていう評価をいただいたのが、すごくうれしいです。そういう人と人、価値と価値を交換していける会社にしたいとずっと思ってきたので。

 

留目:田所さんはスタートアップ側からアプローチしていて、私は大企業側からアプローチしているけど、考えていること、大事だと思っていることはほぼ一緒。それってすごい発見ですよね。やっぱり知らない人、違う領域でやっている人との交流から生まれることは大きい。それはこれからの経営者に絶対必要な資質です。いかにガードを下げて、フラットかつオープンにつき合っていけるかっていうこと。自分の知っている領域での優位性を示してマウンティングする、みたいなことって多いわけですけど(笑)、それは新しいパラダイムにおける経営者像とはぜんぜん違うんですよね。

 

経営はアートになってきている

 

宮内:本業では、資生堂のチーフストラテジーオフィサー(CSO)に就任されました。そもそも、なぜ資生堂を選ばれたんですか?

 

 

留目:よくぞ聞いてくれました(笑)。資生堂はすごいチャンスがあるんですよ。なぜかというと、本質的な「問い」がすでに立っているからです。もともと化粧品だけの会社ではなく、「美しい生活文化をつくる」ということがミッション。これから改めて事業の再定義をする時にも、芯があるのでやりやすい。でも、本来はどこの業界もそうだと思うんですね。PCメーカーもパソコンがやりたかったわけではなくてコンピューティングがやりたかったってことだと思うし、製薬だって薬を作りたいわけではなくて人を健康にしたいんだよねってこと。そこはすごく大事ですね。

 

宮内:「美しい生活文化をつくる」ってステキですよね。

 

留目:「美しい」っていいキーワードだなと思います。これだけ価値観が多様化して、成熟してモノが足りていくなかで、どうやって生きていくか誰もが不安もあるし疑問もある。そういう意味では、会社人ではなくて社会人になっていこうってことも、「美しい」ってことのなかに包含されるのかもしれないし、人の能力を閉じ込める経営じゃなくて人の能力を解き放つ経営をしていきましょうってことも「美しい」っていうキーワードかもしれません。美しいってすごく大事なことですよね。成長すればいい、利益が出ればいいってだけではなくて美しい経営のあり方、美しい社会のあり方、多様な価値観を持ちながらみんなが共感できることを追求していくのは、経営としても面白いし、非常に大きなオポチュニティーがある。

 

宮内:なるほど! プロ経営者3.0に通じるものが大いにありますね。

 

(QUMのロゴを表示したFES watch Uを着用する留目さん)

 

留目:その意味では、経営ってアートになってきていますよね。課題定義や課題解決の自由度がすごく広がっていて、なんでもできる、型が決まっていないから。自分なりにいいと思う方法、美しい方法で、どうやって共感を得て、信用を得ていくのか。これってもうアートの世界で、プロ経営者3.0の文脈につながっている。デザイン経営ってことも言われているけれど(経済産業省が「産業競争力とデザインを考える研究会」にて研究、5月に宣言を発表)、それも同じことですよね。

 

角:留目さん個人の会社「HIZZLE(ヒズル)」も、語感がすごく美しい。日本的なイメージもありますね。

 

(トップの雲が風に乗って流れる動画が美しい「HIZZLE」のサイト。http://www.hizzlenation.com/

 

留目:抽象的ですけど、変化の激しい時代だからこそ外側にあるものではなくて内側にあるものに向かっていきたいなって思っているので、関連しているかもしれない。「HIZZLE(ヒズル)」は、日本語の「日出ずる国」から来ていて、経営の新しいパラダイムや、新しい社会の夜明けを作っていきたいっていう意味もあるし、英語で「家」っていう意味もあるんです。だから経営者が共に学んでいく家のようなコミュニティーを作っていきたい。

 

角:すごく美意識を感じます。


留目:やっぱり世界観と大局観、構想力がすごく大事ですよね。それがあってはじめてビジョンになっていくし、MBAで勉強する経営ノウハウが活かせたり、新しい価値の作り方(共創やオープンイノベーション)につながっていく。世の中におけるインパクトやスケール感は、経営者のあり方、そして妄想力・構想力によって決まる。そこにチャンスがあると思っています。

 

角:留目さん、ありがとうございました!

 

【前編はこちら】

 「こんなに面白い時代はない」NEC PC、レノボ社長を退任した留目真伸氏が個人で会社「HIZZLE」を興した理由

 

【留目さんの過去の対談はこちら】

ブロックチェーン時代の“人の信頼”とは――レノボ・ジャパン留目社長

「IoTは資本主義の限界を超えたビジネスモデルを実現する」レノボ・ジャパン留目社長

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