トップ > 対談 > 生駒市長・小紫雅史さんと元公務員の経営者・角勝が語る「これからのマネージャー層に必要な力」

対談

生駒市長・小紫雅史さんと元公務員の経営者・角勝が語る「これからのマネージャー層に必要な力」

公務員が副業解禁! そんなセンセーショナルなニュースを覚えている方も多いのではないでしょうか。いちはやく、さまざまな改革に乗り出している生駒市。その小紫市長と、元公務員CEO角の対談が実現! 関西で1位の倍率を誇る生駒市役所の採用試験。後編では、そんな市職員の方々を率いる小紫市長のマネジメントについて、経営者の目線でうかがいました。

プロフィール

小紫雅史(こむらさき・まさし)

小紫雅史(こむらさき・まさし)

1974年生まれ、兵庫県出身。1997年一橋大学法学部卒業。2003年シラキュース大学院行政経営学部修了。1997年環境庁(現環境省)入庁。ハイブリッド自動車の税制優遇、廃棄物処理法・容器包装リサイクル法の改正や、事業者との環境自主協定制度(エコ・ファースト)の創設などに尽力。2011年退職(大臣官房秘書課課長補佐)。2011年8月、全国公募により生駒市副市長に就任。2015年4月、生駒市長に就任(現在1期目)。前立命館大学客員講師。NPO法人プロジェクトK(新しい霞ヶ関を創る若手の会)創設メンバーで元副代表理事。著書に『さっと帰って仕事もできる!残業ゼロの公務員はここが違う!(学陽書房)』など。最新作は『公務員面接を勝ち抜く力(実務教育出版)』『公務員の未来予想図(学陽書房)』。

角勝(すみ・まさる)

角勝(すみ・まさる)

元公務員(大阪市職員)。前職では「大阪イノベーションハブ」の立上げと企画を担当し、西日本を代表するイノベーション拠点に育てた。 現在は、「共創の場をつくる」、「共創の場から生まれたものを育てる」をミッションとして、共創人材の育成や共創ベースでの新規事業創出を主導するオープンイノベーションオーガナイザーとして活躍。大手企業5社・ベンチャー企業1社と顧問契約を結ぶとともに、ハッカソンをはじめとするイノベーションイベントのスペシャリストとして年間で50件を超えるイベントに携わる日本でも有数の共創分野の実践者である。

「Do the right thing」と「Do things right」

 

角:小紫市長は、前編で語っていただいたような、市民が楽しみながら、主体となってまちづくりができる自治体を、「自治体3.0」という言葉で表現していますよね。

じゃあ2.0の頃の行政の役割はなんなのかというのを一言で表すならば、「税金を適切に分配し、かつ、もめごとを起こさない」ではないかと思います。でも、これからは違うんでしょうけど、それが何かというのを、僕はあまり言語化出来ていませんでした。

 

でも、市長とお話していて、「お金を渡すだけじゃなくて、きっかけや気づきを与えて、ぐるぐる自走できるようなきっかけをつくる存在」というのが新しい行政の役割なんだと腑に落ちました。

ただ、その役割を職員のマインドにインストールしていくのは、すごく大変なのではないでしょうか?

今まで役所の職員の人たちは、ぜんぜん違うことをやってきたのに、新しい役割を渡されても、ご自身の中で消化できないんじゃないか? と。その辺りはどうお考えでしょうか?

 

小紫:鋭い質問ですね。最先端を行く市民が、行政の力を借りずに自分たちの場所を作り始めたことで、行政の仕事がひとつなくなる。そういう時代ですから、職員はもっと危機感を持たないとだめなんです。市民より行政の方が2,3歩くらい遅れている。市民のほうが「市民がまちづくりに汗をかく」ことの必要性を理解しています。そのことに、職員が気づいていないんです。たとえば市民と一緒にワークショップをしても、壁でずっと突っ立ってるだけの職員もいて、そういう人はさらに遅れている。市民とのコミュニケーションを楽しめない職員は、これからはしんどいと思います。

 

 

小紫:彼らは1.0-2.0時代の成功体験があります。言われたことや法令に定めのある公務を、ちゃんとやってきましたという自負があるから、なぜそれを変えないといけないのか、という反発心はすごくあります。しかも、そのような成功体験を強く持っているのが、マネージャークラスだったりするんです。副市長は私の考えを理解してくれつつ職員との間に入ってくれているんですが、その下のミドルやベテラン層が、自治体3.0の必要性や意義、楽しさを理解しているかというと、人にもよるけどまだまだ理解できていない。僕の伝える努力も足りないのですが、トップとボトムがいくら元気でも、ミドル層が過去の成功体験にとらわれず新しい時代の変化を受けて変われるかが、最大の鍵なんです。

 

角:経営者は外からの情報もいっぱい入ってくるし、何歩も先を考えなければいけない。若手もそう。情報を外から得る経路があるし、できれば長く働きたいから、先のことを考える。でもミドル層が、一番先のことを考えなくてすむ構造になっている。逃げ切れるから。

 

小紫:友人の朝比奈くん(朝比奈一郎氏。青山社中株式会社 筆頭代表CEO、小紫市長も所属した新しい霞ヶ関を創る若手の会:プロジェクトK 元代表)がよく言っていますが、Do the right thing.(正しいことをやる)というのが経営者の仕事で、Do things right. (物事を正しくやる)がマネージャーの仕事だから、どうしても精神構造は異なる。でも、新しいことを理解しよう、挑戦しようというマインドは、ミドル層こそ持ってほしいですね。

 

中間層こそ、パラレルに動くべき

 

角:行動が人をつくる。行動することで、その正当性が頭に刷り込まれて、自分の考え方になっていくと僕は思っています。だから20年から30年、正しいと思う行動を取り続けてきた人たちを変えるのは難しいですよね。

市長のおっしゃる、市民でつくる音楽祭みたいに、行動することで楽しくどんどん回っていく、というものが、職場でもうまくできればいいんでしょうね。人間はお互いの関係性の中で、お互いの存在を定義していきます。その関係性を一度ブレイクして、若手と直接つながる場を作ってあげることで、何か変わったりすることがあるのかもしれません。

 

小紫:上下の関係性をブレイクした自主活動やワークショップもやりたいと思ってはいるのですが、そういうワークショップをやろうとした瞬間に、若手の参加を止めるマネージャーが……。

 

角:ああ、やっぱり、いますよね。

 

小紫:「本業をちゃんとしてからにしろよ」ってね。自主活動と本業との相乗効果があるということを理解していないマネージャーが多いのですが、自主活動、課外活動をやっている若手の職員で、本業は全然だめという人はいないんですよね。本業をさぼって外の活動ばかりしていたら、わかりやすく批判される材料を与えてしまうことになるから、両方ともちゃんとするようになるんです。そしてそういった活動が本業に活かされたりもする。

だから、むしろ順番が逆で、本業外のプロジェクトを若手にどんどん企画させて、やらせた方が本業も伸びるのに。本業をちゃんとやっているのか?っていうマネージャーが、部下のやる気を削ぐという意味で、一番本業をちゃんとやっていないという。

 

角:そういうのを止める人って、もしかしたら嫉妬もあるのかもしれないですね。

 

小紫:どれだけ良い人を採用しても、裁量や活躍、成長の場がないと生駒市役所を辞めてどこへでも行っちゃうんですよ。優秀だから。いつでもやめようと思えばやめられるだけの人を採用しているので、我々もプレッシャーが大きいです。やっぱり、苦労して採用した若手に退職されるのが一番こたえますね。

 

角:僕も社長をやりながらヤフーでも働いているのですが、マネジメントの仕方や、他業界に属する人たちの感性など、プラスになることが学べるんですよね。

 

中間層ほど、どんどんパラレルに動いた方がいいんですよ。今までの固定された知識、これまで自分がいた閉じられた世界、閉じられた組織でしか通じないプロトコル、そういうものにいかに価値がないかというのは、外に出ないと知ることができない。そこでがんばることで、新しい価値を発揮し、価値観を獲得するんですよ。そして、こんな世界がある、こんな価値観があるというのを、また自分たちの組織に持ち込んでほしいじゃないですか。それが考え方の多様性を生み出すはずなので。

 

小紫:そうですね。それはあった方がいいですね。1ヶ月程度じゃ「お客さま」かもしれないので、少なくとも3ヶ月から半年くらい。ミドル層やその予備軍をまちに出したいですね。市民コミュニティ活動をやって、自治会につなげて、帰ってこいと。

そこでほんまに実績を出せない人は、これからの自治体では、まだマネージャーになってはだめだなと思います。

 

 

始動力、協創力、そして面白がり力

 

角:市長はこれからの市職員、特にマネージャーなど中間層に必要な能力は何だと思いますか?

 

小紫:朝比奈くんの言葉に、「始動力」というのがあります。「指導」力ではなく、「始めに動く力」で始動力。AIに負けない「0から1」をつくる力ですね。それと、僕は「協創」力と言ってるのですが、一人で全部をやるのは無理だから、いかに自分の周りにチームを作るかという力。その2つが基本の力だと思います。

 

それができそうな人を採用してはいるんですが、もっと突き抜けた人、例えば「僕は有名IT企業に内定したけど、あえて生駒市役所に行きます」という人に来てほしいし、そんな人に来てもらえるだけの、面白そうなまちにしたいですね。

 

「やりたいことがあるんで、とりあえず空き家一軒買ってみました!」みたいな人が出てくればいいのに、そんな人はまだ一人も出てこないんですよね。そしてその上司も、「面白いね、それめっちゃいいやん!どんどんやって!」ってやらせる、そういう人こそ格好いいのに。

 

(小紫市長の話に「面白がり」の血が騒ぐCEO・角)

 

角:本当にそうですね。

 

小紫:そういう美学を持っているマネージャーが、まだ少ない。ただ、生駒市職員の名誉のために言えば、彼らは私が言ったことはきちんと考えてくれるんですよ。そこの力はすごいです。奈良県はもちろん関西でもトップクラスだと思いますよ。僕が生駒市役所以外で同じことを言ったらスルーされるかなというようなことも、本気で考えてくれる。

だから、僕が副市長になったときに、「こういうことをやりたい」というリストをつくったんですが、市長になったときに読み返したら、だいたい形になっているんです。職員のおかげです。本当に。

ただ、生駒市職員は自治体3.0を見据えて、もう一歩先に進んでほしい。つまり、言われたことを形にするだけではなくて、自分で考えて実現してほしいと思うんです。自分で考えないと、面白くないやんって。

 

角:わかります、わかります。「面白がり力」と僕はいつも言っています。新しいものをさわっていたら、面白くなってどんどん自分でいじりたくなってくる、その感覚がマネージャーにもほしいですよね。

 

小紫:そうですね。その点、例えば高齢者福祉は田中(前出の 生駒市福祉健康部次長 地域包括ケア推進課長兼務 田中明美氏)にほとんど任せています。だから楽ですね。彼女も人を動かすのが上手ですし、必要な場には「市長ここに顔を出してください」って勧めてくれるので喜んで向かうようにしています。

あと、図書館も元気なんです。今の館長は、市民活動推進センターの所長を経験しているのですが、そこでいろいろな市民団体と仲良くなり、図書館に戻ってからはまちづくりの拠点として、図書館に集う利用者と、市民団体とをつないだりしています。こういう動きができているうちは、図書館を指定管理にする必要はないと思っています。

他の職員の中にも、スイッチが既に入っている人もいるし、入りかけている人はだんだん出てきていると感じています。

 

角:大事なのはインプットなんです。インプットの積み重ねってアウトプットが出来ていく。そして自分の地元の井戸水しか飲んでいないのに、違うアウトプットは出ないんですよね。今後の生駒市の取組みにも、ぜひ注目したいです。今日はありがとうございました!

 

前編はこちらです
「自治体3.0」生駒市長・小紫雅史さんに聞く、自走するまちづくり

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

新着の対談をお届け