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対談

元マクドナルドCMO足立光さんに学ぶ! マーケティングの極意と経営

2018年6月いっぱいで、マーケティング本部長を務めた日本マクドナルドを退職した足立光氏。「夏休み期間中」である8月のある日、 東京ミッドタウン日比谷 BASEQで、フィラメントCEOの角勝との取材を実施しました。

前編では、大学時代から足立さんの歴史を紐解き、そこから導きだされたマーケティングの極意を伺いました。全てのビジネスマン必見! ライターは東京エリアマネージャー兼ドットコネクターの宮内俊樹です。

 

プロフィール

足立光(あだち・ひかる)

足立光(あだち・ひかる)

元 日本マクドナルド CMO 1968年、米国テキサス州生まれ。一橋大学商学部を卒業後、P&Gジャパン マーケティング部に入社。戦略コンサルティングファームのブーズ・アレン・ハミルトン、およびローランドベルガーを経て、2005年にドイツのヘンケルグループに属するシュワルツコフヘンケルの社長に就任。赤字続きだった業績を急速に回復した実績が評価され、2007年よりヘンケルジャパン取締役 シュワルツコフプロフェッショナル事業本部長を兼務し、2011年からはヘンケルのコスメティック事業の北東・東南アジア全体を統括。ワールド 執行役員 国際本部長を経て、2015年より日本マクドナルド 上席執行役員 マーケティング本部長に就任。同社のV字回復を牽引し、2018年6月に退任。2016年「Web人賞」受賞。翻訳書に「マーケティング・ゲーム」「P&Gウェイ」等。オンラインサロン「無双塾」主催。

角勝(すみ・まさる)

角勝(すみ・まさる)

元公務員(大阪市職員)。前職では「大阪イノベーションハブ」の立上げと企画を担当し、西日本を代表するイノベーション拠点に育てた。 現在は、「共創の場をつくる」、「共創の場から生まれたものを育てる」をミッションとして、共創人材の育成や共創ベースでの新規事業創出を主導するオープンイノベーションオーガナイザーとして活躍。大手企業5社・ベンチャー企業1社と顧問契約を結ぶとともに、ハッカソンをはじめとするイノベーションイベントのスペシャリストとして年間で50件を超えるイベントに携わる日本でも有数の共創分野の実践者である。

 

ビジネスセンスを発揮していた大学時代

 

角:今日はお会いできて嬉しいです! さっそく足立さんのことをいろいろ聞かせてください。まず大学時代からお聞きしたいのですが、どんな学生生活だったんですか?

 

足立:ちょうどバブルの時代で、やっていたのはテニスサークル。夏はテニスで冬はスキーっていう、チャラいやつですよ。もうひとつはイベント屋をやっていましたね。

 

角:どんなイベントですか?

 

足立:いや、バブル時代のよくあるやつですよ。パーティー券を売ったら何十万ももうかるとか、ディスコで貸切イベントやったり、学生を北海道の貸切ツアーに送り込んだり。あとは9/1になると、バーっと電話かけて、12/24と12/25のホテルの予約をして、それを転売するとか(笑)。

 

角:やっぱりビジネスセンスあるんですね、その時から商売するってのは。バイトより儲かる。

 

足立:バイトも普通に飲食店でやってましたよ。ステーキ屋さんで2年くらい。

 

角:ステーキ屋さんに行ったのはなにか理由があるんですか?

 

足立:家から徒歩30秒だったから(笑)。終わるのが深夜1〜2時とかだと、歩いて帰れたらいちばんいいので。

 

角:この間Facebookでも職住近接型でやってらっしゃるって書かれていたので、その当時からなんですね。でもバイトよりも、パーティー券を売る方が割がよくないですか?

 

足立:パーティーって大変なんですよ、人を集めなくちゃいけないし。だからバイトもやっていた。卒業して社会人になったらほんとにお金がなくてびっくりしました。メーカー(P&G)だったので、初任給が17万とかで家賃も払わなきゃだから、学生のときよりぜんぜん貧乏。学生のときは車もあったし、実家だったからコストがほとんどかからないので。

 

コンサルタントと社長の両方を経験

 

角:P&Gでさらにビジネスセンスを磨かれていたんですか?

足立:いや、そんなことはないと思いますよ。僕はあまりP&G出身って言われるのがしっくりこなくて。何しろ20年前だし、そんなに長くいたわけでもない。そういう意味ではたぶんそれ以降のコンサル(ブーズ・アレン・ハミルトン〜ローランド・ベルガー)での経験がいろんなことを学んだかなっていう気がしますね。コンサルって数か月でバンバン担当する会社を変わっていきますよね。なので数か月ごとに専門が変わっていくわけですよ。キャッシュフローだったりサプライチェーンだったりCRMだったり、営業から組織まで。すごい濃かったです。



角:それはすごいですね、コンサル時代の学びは濃そうだ!

 



足立:その後、(シュワルツコフ)ヘンケルでいきなり社長になるわけです。そしてやっぱりコンサルの時にいろんな会社の内情を全部見ていたから、知らないことがあんまりなかったんですよ。就任していきなりリストラしているし、工場を閉めているんですが、それもコンサルとして既にやったことがあるわけです。35で社長やる前にコンサルをやってたのが僕の中では比較的良かったかなと思ってるんですよ。

 

角:一方で、コンサルと、自分が責任を持って事業をやるっていうのとはまたちょっと違う感覚があるのかなと思うんですけれども、どうですか?


足立:あると思います。実際コンサルを辞めたのは、自分が正しいと思ったことが実行できないからです。提案するだけで、それはクライアントさん次第。何か月も時間かけてみんなで一生懸命作ったのに、お蔵入りってことが結構なきにしもあらず。なので自分でやりたいなと思って、実業に戻ったんです。


角:自分たちが汗水たらしてつくった提案が無下にされるっていうのは悔しいもんですよね、きっと。


足立:正しい事は必ずしも実行されない。会社にはいろんな事情とかしがらみとかがあるので。そういう意味で自分が社長だったらしがらみなく実行できるので、社長の時はカンファタブルでしたね。

 

50歳になって感じた3つのこと

 

足立:その後の日本マクドナルドにはマーケティングで入ったので、売上を伸ばすこと以外はしなくてよかった。それは集中できてすごく良かった。


角:エネルギーは全部マーケティングに注げたわけですね。

 

足立:そう。あまりポジションにもこだわってないので、いま転職中なんですけど(笑)。次のポジションとか何か希望はありますかって言われても、ありませんと答えている。事業部長でも経営企画でも社長でも、なんでもいいやって思ってるんです。

 

角:でもいろんな会社からいっぱいオファーが来ているでしょう?

 

 

足立:いちばんおもしろいのは、銀座の黒服やりませんかっていうのが来ました。バイトやってくれない?って。結構かせげると思う、僕に会うためには銀座の店に来なきゃいけないので。

 

角:なんかレンタル彼氏もやってるそうですけど、名刺もあるんでしょ? あれ見たいです。

 

足立:あーあれですね。ありますあります。女性用なんですけどね(笑)。

 

角:これって頂戴してもいいもんなんですか?

 



足立:いいですよ。これ100枚以上配ったのに、一件も注文がない。初回無料キャンペーン中なんですけど(笑)。やっぱり料金を名刺に入れなかったのがよくなかったかな。

 

角:なんかめちゃめちゃ高そうな名刺です。

 

足立:昼間用の個人名刺は200枚で2000円くらい、こっちは2.5万円もする。

 

角:すいません、そんな貴重なものを(笑)。いまはそうやって、いろんなことを試されてるって感じがしますよね。

 

足立:まさにそれです。いろんなことをしたいと思っていますね。旅行もしたいなと思って先週まで行ってきましたし、この間オンラインサロンを開きました。

 

角:ああ「無双塾」ですね。

 

足立:50歳になった時に思ったことが3つあって。1つは健康なんですよ。僕は不健康な生活をしているんですよね、なのでそれは健康じゃないとできない。「不健康な生活は、健康から(笑)」。なので、毎月採血したり、いろんなことやってるんです。

 

角:トレーニングされたりもしてるんですか?

 

足立:たまにね。僕はカバンがすごく重いので、それがトレーニング(笑)。あと2つ目は、できれば価値を提供する側になりたいなと思っていて。若い方とかに、自分ができることがなにかあったらできるだけ提供したい。それでこのサロンもボランティアのつもりで始めたんです。僕はもうロートル(中国語で老人を意味する)で、定年制でいうともう終わりの方なんで、次の会社もいままでの経験を提供できるようなとこに行こうかなと思っていて。たぶんそういう若い会社とか小さい会社に行くような気がします。たぶんどこに行っても給料は3割ダウンな感じ。

 

角:やっぱり人生において、お金が重要じゃないってのはあるんですかね

 

足立:僕は貧しい家の人なので、あんまりお金なくても生きていけるんですよ。なのでおもしろいことをしようと思って。で、できれば人に貢献したい。

 

角:へえー。

 



足立:で、3つ目は、人生100年だとしても半分過ぎてしまっているし、もしかしたらあと10年くらいで死んじゃうかもしれない。だからやろうと思ったことを全部やろうとしている。まあわかりやすいのは旅行で、先週は長岡花火にも行きましたけど、あれも行ったことがなかったんで、無理矢理行った。モロッコから帰った次の日だったんで、死ぬかと思ったんですけど。去年の末から伊勢神宮に行き、4月にはバハマとキューバ・初めてのカリブ海ですね。行こうと思ったところ、やろうと思ったことを全部やろうとしているんです。

 

角:これまでの過酷なビジネス人生では、時間がまとまって取れなかったりでしょうね。

 

足立:たぶん余裕がなかったんでしょうね。本当はヨーロッパにあんなに出張していたのに、2日ぐらい休んでドイツの城を見てくるとか全然問題ないはずなのに、仕事してる自分が好きだったんでしょうね。あちこち行ったのに、結局会議終わったらすぐ帰ってきちゃってて。いまから思えばすごくもったいなかったなと思ってます。

 

角:毎月のように行くわけですよね。

 

足立:そうですね。結局、いつでも来れるやと思ったのが失敗でしたね。若い子にはよくいってるんですけど、出張があったら前後を休んであちこち行ってこいってアドバイスしています。

 

角:お店もやってらっしゃいましたよね(六本木のバー「夜光虫」)。

 

足立:かつてね、いまは経営とか運営は人に任せていますが。

 

角:「夜光虫」には、足立さんがいるからみんな行きますよね。

 

足立:いやいや、僕がいるから来ない人もいるかもしれませんよ。呑まされると思って。

 

角:でもおもしろいですよ、あそこは。

 

足立:ふだん会わない人にも会えるんですよね。そういう出会いって結構大事で、まずお友達として会う、そうするといろんなことがどんどん進んでいくんですよね。MERYの江端さんも、たまたまある呑み屋で紹介されて、それからしばらくして別の呑み屋で会ったりして。こないだ無双塾でも、僕に夜しかお会いしたことがない人が結構いた。そういうネットワークってすごい大事、お友達から入るんです。

 

角:それは楽しいからなのか、それとも学びがあるからなのか。

 

足立:それはどっちも。僕はひらめくときって、頭の中でシナプスがピピピっとつながるんですよ。音がするぐらい。話してて、あ、つながったって思う。自分でずっと考えるのは苦手なんですよ、子供のころから。団体スポーツとかみんなで話すとかすごく好きなんですよね。だから、お話をしてる間にいろんなものがつながってアイデアになるってパターン。

 

角:業務以外の呑む時間をこんなに有効活用している人はほんとにいないと思うんですよね。記事を読んでても、実際に一緒に呑んでもそう思いました。バイタリティーもそうですし、反応が早くてみんなをおもしろがらせる力がものすごいな、と。

 

足立:客商売ですからね(笑)。よくカラオケやってても、歌は仕事なんですっていうんですけど、ラップから軍歌までなんでも歌えますよ。

 

足立さんが考える、マーケティングの3つの定義

 

角:足立さんは引き出しの数がものすごく多い。そういうのをひとつひとつおもしろがって、自分の引き出しにしまってらっしゃる感じがすごくしています。

 

足立:実際にそうやっていろんな言葉を集めているんです。マクドナルドで打ち出したのが「背徳感」って言葉。マクドナルドはそれまで少し「健康」の方に流されていたんですよね。 お客様の声を聞くと、健康的なものが欲しいって言葉が出てくるじゃないですか。それで野菜が入ったバーガーとか、カロリーが低いバーガーとか出したら、まあ失敗してたわけです。マクドナルドって僕の中ではポジショニングが「背徳感」なんですよね。あ、食っちゃったっていう。しまった! ……でもおいしかったっていう。夜中のラーメンと一緒ですね。マクドナルドに入る前にPwC(プライスウォーターハウスクーパース)のパートナーの方とご飯食べているときに「背徳感」って言葉を言われて、あ、これだと思って使い始めて、いまや僕のもの(笑)。

 

角:そういうタイプなんですね。

 

足立:これはいいなって思ったものを、つなげて自分のものにしちゃう。それって編集能力だと思いますよね。

 

 

角:ぜんぜん違うものでも、ひらめいて、つなげちゃうんですね。それがご自分の社業だと、ハンバーガーになって出てきちゃう。

 

足立:ものを売るときって、それが優れていて差別化されていることなんてまずないんですよ。実際ハンバーガーを差別化することなんてほとんど無理なんですね。というのもマクドナルドっていろいろ制約があるわけで、このパティしか使えないとかバンズしか使えないとかあるわけですよ、その中でやらなきゃいけない、結局組み合わせの問題なんですよ。なので、ものがどうこうではなくて、そういう風に見えればいい。マーケティングはそういうもので。たとえば価格の低いシャンプーなんて正直どれもあんまり変わんないんですよ 。それがこんなにいいっていう風に感じてもらえばいいって話なんですよ。

 

角:なるほどー。

 

足立:マーケティングとかビジネスはみんなそうだと思うんですけど、「人の心を動かして結果的に行動を変える」というのが一番の使命なんです。基本的には人身操作だと思っています。なのでハンバーガーを一個買ってもらうのも、シャンプーを一本買ってもらうのも、選挙で一票入れてもらうのも、宗教で壺を買ってもらうのも、全部仕組みは一緒なんです。

 

角:人の心を動かして行動を変える、と。

 

足立:そうそう。僕はそれがすごくおもしろいと思っていて。

 

角:それがマーケティングってことですか?

 

足立:マーケティングの3つの定義のうちのひとつです。

 

角:ひとつですか。あとの2つってお聞きしてもいいですか?

 

足立:もうひとつは、「そのビジネスのためになることは全部やる」ことです。誰の仕事でもないようなタスクを、ぜんぶ拾って誰かをアサインするとか。とにかく最初から最後まで全部やらなきゃいけないのがマーケッターですね。生産部門がなければモノを作れないし、サプライチェーン部門がないと調達できないし運べないし、営業部門がなかったら売れない。売るためには全部コーディネートして、間をつないでいく。全体を見て必要なことは全部やる、映画のプロデューサーみたいな感じですね。

 

 

最後3つ目は、経営者に近いんですが、「継続的に収益を出す仕組みをつくる」ってこと。ブランドっていうのはその方法のひとつでしかなくて。ブランド価値が高いと、みんな信用してお金を継続的に払ってくれる可能性が高いってことなんです。マーケティングの定義って日本にも世界にも決定的なものはないんですけど、たぶんこの3つにあてはまらないものはないと思います。

 

角:これって足立さんの定義なんですか?

 

足立:これは僕の定義です。

 

角:めっちゃ勉強になりますね。これどっかでオープンにしています?

 

足立:ときどき言ってます。講演とかで。

 

角:すごくいい。まさに商売のすべてですよね。

 

足立:「ハケンの品格」ってドラマがありましたけど、あれってマーケティング部なんですよ、実は。地方の営業部隊のなかにある販促部隊のことをマーケティング部って呼んでいる。なのでマーケティングってすごい幅が広くて、同じマーケティング部とか名前がついていても、会社によってやってることもずいぶん違う。でも僕の中ではマーケティングはほとんど経営と一緒。結局どんなお客さんにどんな価値を提供してどうやって儲けていくかなんですよ。これが決まらないと、どんな営業を作るかとかどんなITインフラをつくるかとかは決まらないはずなんです。なので経営戦略の最初にあるのがマーケティング、という風に僕は理解しています。

 

 

後編はこちらです。

広告しなくても売上UP!! 足立光さんに聞くマクドナルド時代の成功体験と今後

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