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対談

IoTからひと創りまで。社会の最先端に精通した、いまスタートアップに求められる弁理士3.0とは?

大阪出身、特許事務所を経て東京の企業でで弁理士としてご活動、さらに講演会などでお仕事の幅を広げていた佐竹星爾さん。その佐竹さんが、大阪に帰って来る! ということで、公務員時代から交流の深いCEO角との対談が実現。前編では、佐竹さんと角との出会いから、東京で得たこと、これから大阪を起点にチャレンジしていきたいことをお聞きしました。

プロフィール

佐竹星爾(さたけ・せいじ)

佐竹星爾(さたけ・せいじ)

弁理士。京都大学経営管理大学院修了。
関西の特許事務所にて勤務し、モバイル通信・クラウドサービス分野を担当。

その後、東京のコンテンツ・ゲーム事業会社の知的財産部門にて特許権利化・渉外業務を担当する。

業界団体向けのイベント登壇、デザイナー向けのイベント登壇、事業部門・投資部門向けのビジネスモデル特許のアドバイザリーを提供。
2019年2月よりIPTech特許業務法人に参画。

角勝(すみ・まさる)

角勝(すみ・まさる)

1995年~2015年、大阪市役所にて勤務し「大阪イノベーションハブ」の立上げと企画運営を担当。2015年、大阪市を退職し、フィラメントを設立。多くの企業で新規事業開発プログラムの構築・実行支援や独自設計したワークショップとコミュニティマネジメント手法を用いた人材開発・組織開発を手掛ける。

2016年には企業アライアンス型オープンイノベーション拠点The DECKの立上げにも参画し、他のコワーキング・コラボレーションスペースのコンセプトメイキングや活性化にもアドバイザリーを提供。

目次

■学びが多かった「角総研」

■『Business Model Generation』との出会い

■UXとビジネスモデルを結びつける

■スタートアップの需要に弁理士の供給が追いついていない

 

■学びが多かった「角総研」

 

角:僕がフィラメントを起業したのが2015年。佐竹さんとはその前からのお付き合いだから、もう長いですよね。

 

佐竹:グランフロント大阪ができたのが2013年春で、そこで初夏くらいに開催されたウェアラブルデバイス「Telepathy One」のアイデアソンからですよね。

 

角:それから2014年の春くらいからかな、当時シャープだった佐藤さんたちと「角総研」という活動を始めて。一年くらいやってたんですよね。私が冷蔵庫の特許を取りたいという話をしたりして。

 

佐竹:やってましたね。色んな業界の人とブレストしたり。

 

角:最初、佐藤さんに相談して色々と話をしてみたら、面白そうだからみんなでレクリエーションみたいな感じでやろうという話になって始めたんですよね。月一くらいでやってたのかな、多い時は月二回とか。佐竹さんにはコーヒーをおごる代わりに特許や知財のことを教えてくださいって。(笑)

 

佐竹:フィーとしてのコーヒー。

 

角:コーフィー。(笑)

 

佐竹:あそこは学びが多かったですよね。シーリングライトにセンサーをつけて、お掃除ロボと連動させてとか。懐かしいですね。当時あれでだいぶ鍛えられた感はありますね。

 

角:IoTがこれからどんどん出てくるよねって時に、どんな製品がってのを散々議論しましたもんね。あの頃話していたようなものが、今は製品として販売されていたりしますね。

 

佐竹:だいたい「こんなアイデアどや」みたいな感じで始まり「どうやって実現すんねん」って話になって。どの会社とどう組んで、どう進めていくといいというような話を角さんがどんどんされているのを見て、ああさすが制約が多い公務員ならではの思考スピードだなと思いました。

 

角さんは新しいアイデアを提言されていたりしてましたよね。実現までの絵を描くのがすごく早い。当時から相当鍛えられていたんじゃないかと思ったんですよね。

 

角:確かに、予算などもすごく制約があるから。

 

佐竹:2015年かな、会社名も角総研で決めましたよね。

 

角:みんなでやりましたね、角起業社名決定アイデアソン。(笑)

 

佐竹:色々出たんだけど、結局、角さんが最初から言ってたフィラメントに落ち着いた。(笑)

 

■『Business Model Generation』との出会い

 

角:ここで改めて佐竹さんの経歴の変遷をお話いただけますでしょうか。

 

佐竹:キャリアのスタートは、特許事務所ですね。2004年頃、まだ携帯電話が普及し始めたくらいの時、携帯電話の特許に関する仕事をしていました。電波の送受信とか、OS上で動くソフトウェアとかの。

 

角:まだまだ3Gで、おサイフケータイが出始めたくらいの時代ですね。

 

佐竹:その後、そこを退職して、産学連携の技術移転機関で京都大学の研究成果をいかに産業界に移転していくかということをやっていました。

 

 

佐竹:2010年から2011年にかけて、一度きちんとビジネスについて学びましょうということで京都大学のビジネススクールに行きまして。それが今のベースになっています。そのMBAを修了して大手特許事務所へ。そこから最初の、角さんとの出会いに繋がっていく感じですね。そして、角総研へ。

 

角:ありがとうございます。(笑)

 

佐竹:MBAを修了したのが2011年で、その頃、ビジネスモデルのフレームワークが海外からきて。

 

角:Business Model Generation』ですね。

 

佐竹:そう、ビジネスモデルジェネレーション。まだ日本語版が出る前の段階から英語版で読書会をやってる人たちもいて、なんだこれはと。2012年には日本語版も出ましたが、私も自分でワークショップをずっとやってみて。ビジネスモデルについて学び、実務を通じて理解し、さらにその理解を角総研で深めるという流れで。(笑)

 

角:僕はそこから2015年にフィラメントを立ち上げたんですが、佐竹さんもその頃に転機を迎えられましたよね。

 

佐竹:2016年に東京へ。いわゆる「位置ゲー(位置情報を利用したゲーム)」を作ってきた会社に移りました。

 

角:どうでしたか?

 

佐竹:東京に行って良かったですね。スタートアップや彼らに投資しているベンチャーキャピタリストたちとも話をする機会が多く、スタートアップやベンチャーほど法務や知財の需要はあるなと感じました。例えば、特許の出願はスタートアップに必要なんですよ。投資家がそれを求めるから。どこで特許を取るかということが問題になるんですよね。

 

角:それで話相手になりながら、ここ特許取れますよ、みたいなアドバイスを?

 

佐竹:ビジネスモデルから「ここで特許を取った方がいいよね」というのを見つけて。そこからいかに権利化するかというのは、非常に難しく、専門家として腕が試されるところですね。

 

UXとビジネスモデルを結びつける

 

佐竹:最近またビジネスモデル特許というキーワードが流行り始めているんですけど、相談されて私が伝えているメッセージは「UXとビジネスモデルを結びつけて考えましょう」ですね。今までにない体験を与えるから、ユーザーはそれを選ぶ。UXは選ばれる理由になり、ブランドになり得る。今までに無いUXを実現しているのはどこか。そこを特許で守れないかと考える。

 

角:なるほど。

 

佐竹:例えば、マッチングアプリの「Tinder」は右スワイプ、左スワイプで「いいね」「よくないね」ってサクサク分別していくスマホに適したUIが気持ちよく、結果的にマッチングの可能性を高めてビジネスモデルを強くしている。

 

 

角:なるほどなるほど、そのUIが気持ちいい体験を生み出して、それが価値に繋がっているんですね。

 

佐竹:メルカリもUXをより良くするUIがあって、そのUIがあるからビジネスモデルがこう強くなる、そういう目線で考えましょうと。

 

角:メルカリのUIはどのあたりが良くできているんですか?

 

佐竹:まず、縦スクロールですね。そもそもスマホの本質って縦なんじゃないかと思うんですけど、縦スクロールって、横に比べて、わりと早くスクロールさせてもなんとなく見えるんですよ。

 

例えばシューティングゲームでも、縦スクロールのゲームって敵の弾が速くてもわりと避けることができる。だからどんどん飛んでくる。

レトロゲームの本にあったんですが、シューティングゲームはあるタイミングで縦シューと横シューに分かれましたと。縦シューの方向性を決めたのはボンバーシステムを確立させた「究極タイガー」というゲームで、どんどん飛んでくる弾を避けたり、ボンバーで敵弾を一掃する爽快感がある。

 

角:確かに、横シューでボンバーシステムは珍しいですよね。

 

佐竹:縦シューは爽快感を重視。横シューはじっくりパターンを覚える「覚えゲー」が増えていくんですよね。メルカリに話を戻すと、メルカリは3つの出品物が縦にずっと並んでいて、しゃーっとスクロールさせてもなんとなく目で追え、出品者と購入者を結びつけるチャンスを高めている。こういうUIが大事なんです。

 

■スタートアップの需要に弁理士の供給が追いついていない

 

角:なるほど。そして東京で刺激的な3年を過ごされて、今年大阪に戻ってこられるんですよね。

 

佐竹:10月だったかな、東京で知り合ったスタートアップ分野の弁理士が3人集まって飲んで。

 

角:弁理士同士だと、集まって飲んでも……。

 

佐竹:ずっと知財の話。「弁理士3.0はなんだ」というようなことをずっと。で、「スタートアップは特許や商標といった知財の需要は多いけど、弁理士の供給が追いついてない」という話で認識が一致して。じゃあ俺たちでやるしかないんじゃないかとなって。

 

スタートアップに限らず、大企業の新規事業も含め、ITや新しいUXを軸にして、理解ができて特許も書けるという人を増やしていこうと。

ビジネスモデルを理解した上で「それならこういうところで特許取った方がいいですね、どうやって特許取りましょうか」って考えられる人。それにはビジネスモデルの知識が要るし、UXの知識が要るし、弁理士としての力量も要る。

 

角:その三点を備えた人を増やす、と。

 

佐竹:特許の業界に限らずですけど、人生100年時代っていうじゃないですか。長く生きる一方で、変化のスピードも速くて。でもその変化を恐れる必要は無くて、変化についていけるように人を鍛えられるやつが強いんじゃないかと。その鍛えるという点において、一人で学ぶよりも集団で学ぶ方が学習効果が高いというのはもう明らかになっているわけですよ。だから組織を作りましょうと。

 

 

角:弁理士という特殊技能を持った人って母数がそもそも少ないなかで、変化し続ける時代にキャッチアップしていける人材となるとさらに少ない。そこを組織を作って増やしていきましょうというのは、ものすごく世の中に対して貢献できることだと思いますね。

 

フィラメントも「人づくりにどう取り組むか」という部分をやりたくて。フィラメントがミッションとして掲げているのが「Society Reframe Engine」なんです。テクノロジーが進んで、昨日できなかったことが今日できるようになっていく。そうやってどんどんリフレームしていかないと、いつの間にかマイナスが累積していく。日本の失われた10年、20年って、その結果だと思うんですよ。

 

そこでどうすればいいのかといえば、変革し続けるための新しいマインドセットを持ってる人を作っていく所から始めなきゃいけない。ビジョンとして「自ら変革する人を作り、その変革を導く」ということをやっていきたいんです。

 

佐竹:そうですよね。まったく同じ思いです。私の場合、そうして「弁理士3.0」の人材を増やしていきたい。トレーニングのメニュー自体はこれまでも作ってきたんですよ。「特許を取得するために、ある論点を元にどう納得感のあるストーリーを考えるか」という創意工夫のトレーニングを東京で2年くらいやってたんで、それで上手くいったところ、上手くいかなかったところという知見もあるし、弁理士を鍛えて組織構築していくということはできそうだと思っています。

 

ビジョンとしては、「ある分野で日本最強の特許事務所になるぞ」と考えていて、そのためにまずしっかり書き手を増やしていく。今年新しく参加する特許業務法人での最初の仕事は、組織構築をしていくためのトレーニングづくりからですね。

 

角:育てることで質を担保しつつボリュームを増やしていくと。

 

佐竹:専門家として判決文に詳しい人はすごく多いんですが、組織構築まで長けている人っていうのはそう多くない。IT系の知財、ソフトウェア系、IoTなどもふくめて、そこに強い弁理士は何人かいるんですけど、そこに対して組織構築で勝ちたいなと思っています。

 

角:新しい時代にキャッチアップしていける人を、自ら作っていくんですね。素晴らしいです。

 


後編:ひとを創り、地域をつなぐ。弁理士3.0を体現する最先端弁理士とフィラメントが組む理由

 


ライター:川合 和史(かわい かずひと)
合同会社かぷっと 代表
大阪府立大学経済学部経営学科を卒業後、クリエイター養成スクールを経てデジタルコンテンツ振興業務に従事。2010年9月、合同会社かぷっと設立。Webを中心とした各種コンテンツ制作、コンサルティング、セミナーおよび研修の企画・運営を行う。ODCC(大阪デジタルコンテンツビジネス創出協議会)幹事。特定非営利法人日本ウェアラブルデバイスユーザー会理事。

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