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対談

参加チームの4/5が実証実験へ、お金を動かすチームも! 障害者ニーズドリブンなハッカソンの3つの成功要因とは

「ハッカソンから、新しい製品は生まれない」 そんな言葉を聞いたことはないでしょうか?
しかし、2018年8月に神戸で開催された『わたし達の未来をつくる「アイデアソン・ハッカソン」~世の中を変える商品開発【視覚障害を持つ方編】』は、そのときに出たアイデアを9カ月かけてブラッシュアップ。最終報告会に参加した5チーム中4チームが、実証実験をしたり、サービスとしてローンチしたり、そこからお金を得られるところまでこぎつけています。
フィラメントでは主催者であるアイ・コラボレーション神戸の板垣さん、北山さんに賛同し、企画段階からサポート。この神戸の事例を、ぜひ多くのビジネスパーソンに伝えたい! そんな熱い想いを持って、CEO角がお二人に成功の秘訣を聞きました。

プロフィール

板垣宏明(いたがき・ひろあき)

板垣宏明(いたがき・ひろあき)

NPO法人アイ・コラボレーション神戸 理事長
2005年に入社。神戸のポートアイランドに事務所を構え、スタッフの大半が当事者で、主にウェブサイト制作/アクセシビリティ診断業務(JIS試験/ユーザ評価/職員研修)などを行っている。2015年より開催している「アクセシビリティの祭典」を主催。

北山ともこ(きたやま・ともこ)

北山ともこ(きたやま・ともこ)

NPO法人アイ・コラボレーション神戸 理事 
2003年に就労継続支援A型事業所 NPO法人アイ・コラボレーション神戸を設立。事業所の運営全般及びシステム開発・Webサイト制作・JIS X 8341-3試験・ユーザ評価・実証実験などのプロジェクトマネジメントを行っている。

角勝(すみ・まさる)

角勝(すみ・まさる)

20年間にわたり大阪市役所にて勤務し「大阪イノベーションハブ」の立上げと企画運営を担当。2015年、大阪市を退職し、フィラメントを設立。多くの企業で新規事業創出プログラムの構築・実行支援や、独自設計したワークショップとコミュニティ創出手法を用いた人材開発・組織開発を手掛ける。2016年には企業アライアンス型オープンイノベーション拠点The DECKの立上げにも参画し、他のコワーキング・コラボレーションスペースのコンセプトメイクにもアドバイザリーを提供している。

【目次】

チームによってサポートの仕方を変える

多くの企業を巻き込めた理由

テクノロジーの民主化で当事者の声を届ける

進化を続ける『わたし達の未来をつくる「アイデアソン・ハッカソン」』

 

チームによってサポートの仕方を変える

 

『わたし達の未来をつくる「アイデアソン・ハッカソン」』が成功した理由は、主催者がやりっぱなしにせず、その後も各プロジェクトが進捗するように働きかける役割を果たしていたことが大きいと考えています。各チームに対して、どのようなサポートをしていましたか?

 

北山チームに合わせて、サポートのやり方を少しずつ変えるように心がけました。

例えば「IoTバス降車サポート」チームについては、その後もメンバーがバス会社等に連絡を取るなど、こちらが何をしなくても自らどんどん動かれています。

 

自分が乗車したいバスが来たことがわからない、降車ボタンがどこかわからないといった、バス利用における課題解決に取り組む「IoTバス降車サポート」チーム

 

 

北山また、「AR音声案内システム」チームには、業務用の音響機器とセキュリティ機器を扱うTOA株式会社のメンバーがいらっしゃいます。しかし、いきなりTOA社内のプロジェクトとして提案するのはハードルが高くなってしまう可能性がありました。

 

自動改札の通行方向は?何番ホームへの階段?左右どちらが何番ホーム? といった駅構内での課題解決に取り組む「AR音声案内システム」チーム

 

北山そこで、私たちアイ・コラボレーション神戸が主体となって実証実験を行い、TOAさんに「技術支援」という形で関わっていただく方法を提案しました。ノウハウとして会社に還元できるので、TOAさん側にも技術協力のメリットはあるのではないかと考えています。

神戸市立須磨海浜水族園の実証実験にも、TOAの開発者の方々が来てくださったんですよ。

また、神戸常盤大学も今後実証実験に参加くださる予定です。

2019/6/25、TOA、神戸市立須磨海浜水族園、アイ・コラボレーション神戸が連携し、目が不自由な人向けにトイレの位置を音声で案内する実証実験を実施

 

それはすごい! どんどん広がっていきますね。

 

北山避難所でのAR音声、イベントでのAR音声による誘導について、助成金を申請し、実証実験をするところまでを、今年1年でやろうとしています。

 

ぜひ、実用化してほしいですね。最優秀賞を受賞した「メモメール」チームについてはどうですか?

 

日常で思いついたことを忘れずにサッとメモしたい、という当事者の想いを組んで開発に取り組んだ「メモメール」チーム

 

北山他のチームは事業化がゴールになっていますが、こちらは大きなビジネスよりも「当事者が使えるものを作ろう」というのを目指されています。アプリは当事者の方の個人名義でAmazonに登録されました。当事者の方のご自宅にチームのメンバーが訪問して、Amazonへの登録をされています。当事者の方が報告をしてくださるので、私たちが打合せに同席させていただいたのは、今後の方向性について一緒に話をした時くらいです。

 

Amazonには、利用者の多い優秀なAlexaスキルの作成者に対する報奨金制度がありますが、「メモメール」はその対象にも選ばれているんですよね。素晴らしいです!

 

「メモメール」のAlexaスキルはこちら

 

 

多くの企業を巻き込めた理由

 

『わたし達の未来をつくる「アイデアソン・ハッカソン」』には、TOA以外にも、アシックスなど多くの企業の方が参加しています。なぜ集めることができたんでしょうか?

 

北山課題ありき、課題を大切にしているからだと思います。

例えば、「靴センシング」チームについては、まず当事者の方に声をかけ、どんなものをつくってみたいかと問いかけたところ「靴」という答えが返ってきたんですよ。「靴は視覚障害者にとって第二の目だから」と。そこで、もともとつながりのあった靴メーカーの方に声をかけさせていただきました。

 

せっかくの点字ブロックも靴底が厚かったらわからない、普段どおり歩いている通勤ルートもいつの間にか外れてしまっている……そんな2つの課題解決に取り組む「靴センシング」チーム

 

課題を先に見つけて、その課題解決に対して一番フィットしそう、かつ主催者サイドで何らかのつながりがある企業をマッチングした、ということですね?

 

北山はい。そのパターンと、実はもう1パターンあります。

 

どんなパターンでしょうか?

 

北山さんと板垣さん

 

北山「すごくよい取り組みだから参加したいけど、まだアイデアはない」という当事者の方がいらして。でもやり遂げる強い意志を持っている方なので参加してほしくて、その方とは、VRやIoT、データ活用等なんでもできる「神戸デジタルラボ」さんをつなぎました。

 

なるほど。今はアイデアを持っていないけど、キャラクターでお声がけした当事者の方に対しては、広くなんでもできる、カバー範囲の広い企業技術者とマッチングしたんですね。

細かな配慮のもとにチームビルディングを設計したイベントだというのも、ひとつの勝因だと言えますね。

「市販薬パッケージ」チームについてはいかがですか?

 

北山あちらはもともと今回参加いただいている塩野義製薬株式会社側で「視覚障害の方に使いやすいパッケージに改良したい」という想いがありました。「薬の箱が開けづらい・薬の種類が分からない」というのは、多くの視覚障害者の方が感じていることなので、お互いにメリットがあってビジネス化を進めています。

障害者の方だけでなく、高齢者や外国人の方も開けやすいパッケージを目指いらっしゃいます。

 

ああ、それすごく大事ですね!

 

視覚障害を持つ方の服薬バリアをテーマにビジネス化を進めている「市販薬パッケージ」チーム

 

テクノロジーの民主化で当事者の声を届ける

 

ハッカソンから生まれた製品が、社会に実装されていくというところに対する、すごく強いこだわりというか、思いを感じます。そこの想いはどこから出てきているのでしょうか?

 

北山それは弊所理事長の板垣がお話した方がいいですね。

 

板垣そうですね。僕は先天性、生まれたときから身体障害を持っています。

そして、昔から「ユニバーサル」と名のつく製品、スプーン・お箸とか、鉛筆、靴……を試してきたんですが、結局、使っていないんですよ、「ユニバーサル◯◯」を。既製品を工夫して使っています。

 

それは何故ですか?

 

板垣さん

 

板垣おそらく、当事者の意見を聞かずに作っているものが多いんですよ。作った人の発想や知識や思い込みといった個人的なユニバーサルの概念で作られているんだと思います。でも、当事者も使いづらいなと思っても、どこに、だれに言えば改善されるのかわからなかったんですよね。

昔は、我慢して使うか、使うことをやめるか、という選択肢しかありませんでした。

でも今は、IoTとかAIとかいろんな技術があるから、アイデアを出し合って、当事者たちで創れるんじゃないかと思ったんです。

 

なるほど。まさにテクノロジーの民主化ですね

 

板垣はい。創るまでいかなくても、今は当事者が発信することもできますよね。

ユニバーサルデザインとして売られていたものでも、当事者にとっては使いづらかった。そのときに声を上げることができる。

 

僕たち当事者も作っている途中段階で巻き込んでほしい。むしろ巻き込まれたいんですよ。

『わたし達の未来をつくる「アイデアソン・ハッカソン」が成功したのは、当事者の意見が最初から入っているから、というのも大きいと思います。

 

そうですね。それが生産性の高い成果に結びついたんだと感じます。

 

進化を続ける『わたし達の未来をつくる「アイデアソン・ハッカソン」』

 

お二人の話を聞いて、

・主催者サイドが強い課題意識を持ち、当事者を巻き込む

・主催者サイドが適性を見極めて企業と個人をマッチングする

・主催者サイドがイベント後も適切にサポートする

という3点が、このハッカソンを成功に導いたんだなと再確認しました。

そんな『わたし達の未来をつくる「アイデアソン・ハッカソン」ですが、2019年度も開催するんですよね?

 

板垣はい。8月17日(土)、8月25日(日)の2日間、神戸でやります。

前回は視覚障害がテーマでしたが、今回は身体障害をテーマにする予定です。

 

北山また、実は神戸だけでなく、東京でも開催しようと考えています。

 

おお、ぜひ東京でもやりましょう! 障害をお持ちの当事者の方はもちろん、アイデアソンやハッカソンでは結局何も生み出せないと考えている、企業の新規事業担当者やエンジニアの人たちにも、ぜひ参加してほしいですね。

 

北山はい。いろいろとありがとうございます!

 

こちらこそ、貴重なお話をありがとうございました! 引き続きよろしくお願いします。

 

(文:牧 美帆)

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