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大企業にいてもチャレンジはできる! シャープ液晶技術を転用してイノベーションを仕掛ける4児のママ【Re:Framing the Flame】

大企業にいてもチャレンジはできる! シャープ液晶技術を転用してイノベーションを仕掛ける4児のママ【Re:Framing the Flame】

【イベント情報】

2017年4月9日開催

Filament.Inc創業2周年イベント『Re:Framing the Flame』

スタートアップセッション

 

【登壇者】

シャープ株式会社テキオンラボプロジェクトリーダー西橋雅子(にしはし・まさこ)氏

1992年シャープに入社後、主に商品企画を担当。2014年より研究開発事業本部にて、開発テーマをいち早く事業化につなげる「事業ブリッジ」活動に取り組み、「蓄熱技術」との出会いから社内ベンチャー「テキオンラボ」を立ち上げる。

 


 

Filament.Inc創業2周年イベント『Re:Framing the Flame』は、Filamentが日頃の感謝を込めて、つながりのある人達とのセッションを通じ、今後社会に提供すべき価値について皆様と共有するイベントです。

ここでは、お酒をマイナス2℃に保つ『冬単衣(ふゆひとえ)』を手がけるシャープ西橋氏の取り組みをご紹介します。

 


 

「蓄熱技術」との出会い

 

西橋:商品企画にずっと携わったあと、2014年に研究開発をする部署に異動しました。そこで「蓄熱技術」という面白い技術に出会い、社内ベンチャーの「テキオンラボ」を2017年3月28日に立ち上げました。

 

今回紹介する 『冬単衣(ふゆひとえ)』 は、蓄熱技術を応用した当社独自の蓄冷材料を活用しています。この蓄熱材は「温度」を設定して保冷できるものです。保冷する温度はマイナス24℃からプラス28℃の間で設定できます。保冷したいものに対して「適温」で保冷することができるのです。

 

氷は0℃で融けて水になりますが、その時に周囲の熱を奪いながら状態が固体から液体へ変化します。この状態変化を相転移(そうてんい)と呼びますが、材料によってこの相転移が起きる温度帯は異なります。当社の研究開発チームは相転移温度の違う材料を組み合わせることで、凍る温度(凝固点)と溶ける温度(融点)を自在にコントロールできるのではないかと考え開発しました。

 

この技術の特長を、「体験」いただきたいと、クラウドファンディングをすることにしました。もちろんシャープ公式としては初めてのことです。その結果、開始後10日あまりで、800万円を集めることができました。

 

注:クラウドファンディングは2017年6月末をもって終了、最終的に1869万円を集めることに成功した。

 

液晶から冷蔵庫、そして『冬単衣』へ

 

蓄冷材料の元となる蓄熱技術は、もともとはシャープの液晶材料の技術を応用したものです。液晶は、どんな環境でも絶対に凍ってはいけません。その液晶を開発する過程で、逆に「どこでも凍らせることができる」という技術が生まれました。

 

蓄冷材料は、電力事情の悪いインドネシアなどの冷蔵庫にも活用されてます。シャープの社員がインドネシアの出張中に、冷蔵庫の中のものを食べて、お腹を壊してしまったというエピソードがきっかけです。

 

私は、蓄熱技術に出会ったとき、「冷やす」ということは太古の昔から行われていたことですが、

「単に冷やす・・それでいいのか?」

「人やものには、適した温度があるのではないか?_

「その温度って一体何℃なんだろう? それは「適温」というものがあるのではないか?」

と考えました。

 

例えばものを美味しく食べる、ものを運ぶ、冷やす・・冷たすぎない温度を保つことで、役に立つことがたくさん世の中にはあるのではないかと。そこには「幸せ」があるはず!

「適温」を追求し、「適温」を届けるという、「適温」を軸とした事業の可能性を感じ、社内ベンチャー組織 テキオンラボが生まれました。

 

私には4人子どもがおり、母親をしながらシャープで20数年働いています。テキオンラボは5人目の子どもとして、世の中に役に立てるよう懸命に育てていこうと思っています。

 

まずは私がファーストペンギンになろう

 

ーー西橋さんは、現在は一人プロジェクトとして活動していて、さらにそのプロジェクトを事業化しようとしているんですね?

 

西橋:そうです。私には、研究開発の過程で埋もれてしまった技術を、商品として出せる仕組みを作りたいという想いがあります。蓄熱材技術は事業化できる、そう思って取り組んでいます。ただ、ソニーや富士通のように新規事業プログラムはまだないので(2017年4月時点)、まずは私がファーストペンギンになろうとしています。

 

ーー後進のために道を作ろうというわけですね。

 

西橋:そうです。後に続く人が、これをきっかけにたくさん出てくると思います。

 

ーーその埋もれた技術は、なぜ表に出てこないのでしょうか?

 

西橋:今は、多分どこの会社も新規事業をやれって言われているとは思うのですが、実際にものを世に出そうとすると、「それで、どのくらいのユーザー数を見込めているんですか?」と会社に聞かれます。そこで「千人くらいです」と回答すると、「何を言ってるんだ?」と。「では、頑張って3万人を目指します」と言うと、「3万では全然単位にならない」と言われてしまうんです。

 

ーーそれはやはりメーカーなので、どうしても「MOQ(最低発注数量)はいくらですか?」という話になりますよね。

 

西橋:ただ、MOQだけでは測れない価値が、世の中にあります。それを追求するためにはオープンイノベーションで異業種と繋がらないといけないと考えています。例えば『冬単衣』は石井酒造と一緒に作っています。日本酒業界には、「夏は売れない」という悩みがあります。夏に1本売れると、冬の10本分くらいの価値があると言われます。そのような異業種とのコラボレーションもこれからは必要です。

 

テキオンラボは一人プロジェクトですが、地道に活動してきたことで、社内に賛同してくれる仲間も増えています。例えば佐藤(啓一郎氏。ブランディングデザイン本部デザイン開発センターUXデザインスタジオ部長)にも関わってもらい、ネーミングから一緒に作りました。

 

ーー佐藤さんもすごい人で、例えばヤフーとも「UXTED」というデザインプロジェクトで関わっていますね。それに、昨日もちょうどシャープの人たちが、「The Deck」に来てくれて、付箋をいっぱい張りながらディスカッションしていました。

「社外との関わりを持ちたい」という発想を持っている人たちが、これからどんどん交わっていくと良いなと思います。

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