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【イベントレポート】わたし達の未来をつくる「アイデアソン・ハッカソン」~世の中を変える商品開発【視覚障害を持つ方編】~ 1日目

【イベントレポート】わたし達の未来をつくる「アイデアソン・ハッカソン」~世の中を変える商品開発【視覚障害を持つ方編】~ 1日目

 障害を持つ方自身に商品開発をしていただき、「障害を持つ方が何もあきらめなくてよい世の中」をつくることを目的として、2018年8月18日、26日の2日間にわたり開催された、わたし達の未来をつくる「アイデアソン・ハッカソン」~世の中を変える商品開発【視覚障害を持つ方編】~。

 

 主催はWebのアクセシビリティ向上に寄与する活動を展開するNPO法人アイ・コラボレーション神戸

 そして、昨年フィラメントが企画・運営に携わった復興庁主催イベント、「Fw:東北第6回共創イベント 『スポーツを通じて、ダイバーシティを実現するまちづくり』」に、同団体の北山ともこさんに審査員となっていただいたご縁で、今回フィラメントが本イベントに協賛。企画段階から角がアドバイザリを実施し、当日は角・牧が参加しました。

 

 今回は、その1日目「アイデアソン」の様子をレポートします。

 当日は、アイ・コラボレーション神戸の代表である板垣さんと、角による開会の挨拶で始まりました。

 

 

 今回のイベントの特徴は、各テーブルにお一人ずつ、視覚障害者の方がいらっしゃるということ。ゲストに来ていただくことはあっても、各テーブル……というのは、かなり珍しいのでは。主催者である、アイ・コラボレーション神戸の意気込みを感じます。

 

視覚障害を抱える当事者が想いを伝えるインプットトーク

 

 インプットトークとしてお一人目に登壇したのは、NPO法人神戸ライトハウス理事長の、太田勝美さん。

 太田さんは約25年前に失明。点字も読めず、テープを聞こうにも、頭出しにつまづく。しかも同音異義語の聞き分けが難しい……。

 家族に読んでもらうにも、何度も声をかけるのは気が引けてしまいます。

 そして、何をどうしたらいいのか、わからなくなってしまったそうです。 

 しかし、もともとコンピュータが大好きだった太田さん。

 東京のメーカーが開発したOCRソフトを購入して使い始めます。

 OCRであれば、自分のペースで理解して読み進めることができます。

 問題だった同音異義語については、「音訓読み」という機能で対応。

 

 

 太田さんは神戸市や兵庫県などに視覚障害者がパソコンを学べる施設を作って欲しいと要望しますがかなわず、それなら自分でつくってしまおうと、自分で始めたのが「ライトハウス」だったのです。

 世の中に無いなら、自分がつくる。太田さんの話に皆さん聞き入っていました。

 

 お二人目は、エクスポートジャパン株式会社 代表取締役 高岡謙二さん。

 同社は、日本国外向けのウェブマーケティングや、多言語ウェブサイト制作を専門とする会社です。一見、視覚障害者と関連が薄いように思えます。

 

 高岡さんは、「QR Transrator」というアプリを紹介。

 スマートフォンのアプリで、説明文の横にあるQRコードを読み込むと、翻訳した音声を読み上げるものです。もともとは都庁の展望台や伏見稲荷、日本酒のラベルなどに導入されている外国人向けのサービスですが、視覚障害者にも応用できるのでは? と、ライトハウスと研究を開始。

 

 (さっそく試してみる参加者の皆さん)

 

 実際に視覚障害者の方に「QR Transrator」を使ってもらい、ニーズを拾い上げる。

 NEDOの補助金を申請し、認可が降りたため、さらに規模を拡大し、全国で実験をすすめているそうです。

 

 また、「VIPコードリーダー」というものを紹介。

 一般的なQRコードリーダーは、いちいち、リンクを開きますか? と確認してきますよね。これをなくし、読み取ったら即リンク先にジャンプする、視覚障害者のニーズを汲み取ったリーダーです。

 

 さらに、紙とかではなく、商品などの立体物にも、QRコードを用意して読み取れないか……というニーズもあります。そして、実は、カナダにDavid Barman氏という同じことを考えて要る方がいらっしゃり、コラボレーションが持ち上がっているそうです。

 

 3人目は、視覚障害者向け支援機器の販売とサポートを行う株式会社ラビット 代表取締役の荒川明宏さん。

 荒川さんは、もともと太田さんが最初に出会ったOCRソフトを開発する会社の社員でした。視覚障害の当事者でもあります。コンピュータを使うのが難しい人に寄り添うために、同社を設立したそうです。

 

 

 まずは「BlindSquare」というアプリのご紹介。

 https://itunes.apple.com/jp/app/blindsquare/id500557255?mt=8

 BlindSquareは、現在地を取得し、優先度の高い順に施設名や道路の情報を教えてくれるアプリです。荒川さんは、一般的なナビアプリを使用しないそうです。なぜなら、知らない道をナビゲートされてしまうから。それで何度も危険な思いをしてきた。そうではなく、距離感や方角をつかみ、知っている道を渡りたい……そんなニーズがあります。

 

 続いて、超音波メガネのご紹介。障害物を検知してくれるものです。このメガネを使えば、電車と電車の連結器のくぼみから、今何両目かを数えることができるそうです。

 

 また、さまざまなものを読んでくれる「ORCAM」というデバイスの紹介もありました。

 

 4人めは公益社団法人NEXT VISION(ネクストビジョン)の和田さんによる、「パームソナー」のご紹介。

 

 

 和田さんもまた、視覚障害の当事者です。

 パームソナーは、音や振動で障害を知らせる歩行補助のデバイス。大きな特徴は、左右の指向性。前方だけでなく、横の壁などの障害物もお知らせしてくれることにより、まるで白杖をついているように歩けるそうです。 

 

 

5人目は、京都福祉総合ネットワーク 理事長の園順一さん。

 園さんは約20年前に視覚障害者に。ご自身で、電話を名刺を読み取ったり、エンターキーで電話をかけられるMS-DOSのシステムを開発していました。

 

 

 その後、ある企業の電子手帳のモニターに応募し、当選。しかし「視覚障害者には使えない」と感じ、モニターの感想とともに企画書を送ったそうです。それが社長の目に止まりました。そして形になったのが、視覚障害者用の音声手帳「ぴっぽっぱれっと」です。社長に「1000台ではペイできない」と言われ、「3000台売れる」と伝えた園さん。結果、ぴっぽっぱれっとは5000台を売り上げる商品になりました。

「ニーズと具体的な技術を知っていれば、いろいろなものを開発できる」という言葉が印象的でした。

 

 今回インプットトークをしてくださった皆さん、実は既につながりがあり、終始和やかな雰囲気でした。

 

 続いて、後援団体や協力企業の紹介。

 まずは、公益財団法人ワールドマスターズゲームズ2021関西組織委員会の岡田さんと足立さんによる、プレゼン。

 ワールドマスターズゲームズは、4年に一度、オリンピック・パラリンピックの次に開催される、世界規模の国際総合競技大会。30歳以上ならどなたでも参加できます。

 

 

 1985年に、トロントで初開催。これまではポートランド、メルボルン、シドニー、トリノなど、1都市のみで開催されていましたが、2021年は初めての関西広域会場。大阪、兵庫、奈良、和歌山、滋賀、京都、徳島、鳥取のさまざまな都市が会場になるそうで、盛り上がりそうです。

 

 続いて、マイクロソフトでアクセシビリティ担当の技術統括室 小坂菜生さんによる、「HoloLens」のデモ。

 

 

 この技術で、例えば、椅子を認識して、椅子の上に仮想の物体を置き、椅子を引くとそれが落ちる、HoloLensでみえるVRの世界を、Skypeで相手と共有できる……というようなことができるそうです。アプリはUnityなど、エンジニアになじみのあるツールで開発できます

 HoloLensで世界を体験できる、HoloTourのデモ。

 https://www.youtube.com/watch?v=pLd9WPlaMpY

 

 続いて、アイ・コラボレーション神戸のメンバーで、かつ神戸デジタルラボ役員でもある村岡さんによる、アイデアソンについての説明とチームビルディングがありました。技術などを考慮した結果、7チームが結成されました。

 チームビルディング後、村岡さんから参加者に対して2点、アドバイスが。

 

 

 1つ目は、わからないことがあれば、お互いに素直に聞くこと。伝達ミスや認識違いが発生すると、チームの中でアイデアを形成することができません。

 2つめは、お互いの意見やアイデアを楽しもうということ。お互いに「それは無茶だ」と感じても、それは裏を返すと新しいやり方かもしれない、それを前向きに楽しんでほしいというお話がありました。

 

当事者の声に耳を傾け、つくりあげたアイデア発表

 

 約3時間に及ぶアイデア出しのあと、いよいよ各チームによる発表。 1チーム5分で、アイデアについて説明します。

※ 事業化に向けて検討されるケースがあることに配慮して具体的なアイデア内容については記載していません。

 

1チーム。テーマは「白杖認識」

 

 

2チーム。テーマは「ユニバーサルバス予約」

 

 

3チーム。テーマは「メモ」

 

4チーム。テーマは「災害時の情報収集」

 

5チーム。テーマは「リードマイワールド」

 

 このチームは、関西アイデアソンあるあるの「寸劇」で発表してくれました。

 さらに、当事者である北畠さんは、「全盲高校生ミュージシャン・かしわもちかずと」としても活動。嘉門達夫さんとジョイントコンサートをするなど活躍しています。

https://www.youtube.com/watch?v=_VfCevzekFc

 

6チーム。テーマは「ユニバーサルな靴」

 

 

7チーム。テーマは「市販薬の改良」

 

 発表の後は、講評とクロージング。

 

 株式会社ユーディットの会長兼シニアフェロー、同志社大学大学院総合政策研究科の客員教授でもある関根千佳さんは、元IBM。約20年前に全員在宅勤務の会社を立ち上げ、障害をお持ちの方をテレワークで雇用してきました。

 もともと「こういうことを昔からやりたかった」と、アイ・コラボレーション神戸の皆さんへの感謝を述べられたあと、「音声認識を始めとするITの技術の大半は、障害者がいたから進歩している。イノベーションはユーザーと出会うところから生まれる。少しユニバーサルな視点を取り入れてくれるとすごく嬉しい。自分自身がハッピーになることを考えてください」

 と熱いエールを送ってくださいました。

 

 その後、フィラメントCEOの角が登場。

 

 これから8/26までの1週間の過ごし方について、3点伝えたいことを述べました。

 

 1つめは「課題のリアリティを感じてほしい」ということ。

 今回のアイデアソンの特徴は、課題の持ち手である視覚障害者の方がが一人ずつ入っているということです。本当に困っていることはなんなの? というのを一緒に突き詰めてほしい。

 今、視覚障害者の方が必要としているものは、いずれ高齢者となるわたしたち自身も必要となるもの。

 つまり、視覚障害者の方々は、一番繊細なアンテナを持っている、消費者でもあります。

 マーケッタビリティがある、市場を開拓できる、という気持ちで取り組めば、良いものができるはず。

 

 2つめは「技術を先行させない、引きずられない」ということ。

 エンジニアは新しい技術を使いたい人が多い、でも一番いいのは、誰も負担が少ないということ。

 経済的負担が少ないほうが優れたソリューション。

 すごく良いもの、だけどお金がかかる、というものではマーケットインしない。

 枯れた技術で出来るなら、それがベストだし、オペレーションだけで解決できるなら、その方がいい。

 例えば、点字ブロックは敷設にコストがかかります。しかし、昔はそれしか解決策がありませんでした。

 でも、道路に色を付けるだけなら、ずっと安上がりです。そうやって、今の技術でリプレースできないか? 例えば、西から東は赤色、北から南は青色に塗り、靴に色彩センサーをつけるなどが考えられます。点字ブロックに引きずられすぎない方が、いいアイデアが生まれる可能性があります。

 

 3つめは「出来ることにフォーカスする」ということ。「なんでもできますよ」では、アイデアの価値がぼやけ、マーケットインしない。例えば、Amazonは、まず「本」にフォーカスすることにより競争に打ち勝った。経営資源を優先的に投入すべき「ほかにない強み」を磨きこむことが大事です。そういう強みがフォーカスされたアイデアぜひ考えてほしい。そのためにも、1番の「課題のリアリティを感じる」を突き詰めて考えてほしい。そして、チームでディスカッションしながら、アイデアの練りこみ、磨きこみをすすめるためにSNSを使う、音声を使うなど、負担の少ないコミュニケーションのとり方を探ってほしいと参加者の皆さんに伝えました。

 

 そして、1日目が終了しました。

 

 インプットトーク、そして各チームの発表を拝見し、普段生活しているだけでは気づきにくい「あ、言われてみれば、これは目が見えないと確かに困るだろうな」というのがたくさん見えてきた1日でした。

 

 

 今回のアイデアは約1週間後、8月26日のハッカソンでブラッシュアップし、発表します。

 2日目のイベントレポートはこちらです!

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