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日本の課題、その答えは「地域」にある! QUM BLOCS開催レポート

日本の課題、その答えは「地域」にある! QUM BLOCS開催レポート

2018年11月21日(水)、フィラメントは「日本各地にイノベーションの連鎖をつくる!!」をテーマに掲げたカンファレンス「QUM BLOCS」を開催。平日昼間、しかも大阪での開催、さらに有料のカンファレンスだったにもかかわらず、180名もの方が来場! はたしてどのようなことが語られたのでしょうか? ライターの川合和史氏にレポートいただきました。

 

ライター:川合 和史(かわい かずひと)
合同会社かぷっと 代表
大阪府立大学経済学部経営学科を卒業後、クリエイター養成スクールを経てデジタルコンテンツ振興業務に従事。2010年9月、合同会社かぷっと設立。Webを中心とした各種コンテンツ制作、コンサルティング、セミナーおよび研修の企画・運営を行う。ODCC(大阪デジタルコンテンツビジネス創出協議会)幹事。特定非営利法人日本ウェアラブルデバイスユーザー会理事。

 

目次

人の「つながり」を連結・連鎖

「キーマン」は探すものじゃない(Session1)

利用者は50代、60代の女性(Session2)

最終的には、人と人(Session3)

共に汗をかく”共汗力”が大切(Session4)

地方が課題のフロンティア!

 

人の「つながり」を連結・連鎖

「日本各地にイノベーションの連鎖を作る!!」をテーマに掲げ、地域創生に繋がる連携と行動を生み出す場「QUM BLOCS」。2018年11月21日に大阪で開催されたカンファレンスでは、国内各地で課題に取り組むイノベーター16組17名をゲストに迎え、4つのセッションが開かれた。

 

会場となった関西大学梅田キャンパス KANDAI Me RISEは、開場とともに参加者が続々と入場。用意された180席がみるみるうちに埋まっていく。しかし席にじっと座っているのはむしろ少数で、開演時間ギリギリまで会場のあちらこちらで交流したり紹介し合ったりする光景が見られた。「QUM BLOCS」はもう始まっていた。

 

大阪開催、かつ平日にもかかわらず、会場にはたくさんの人が詰めかけた

 

開演時間を迎えて、まずはオープニングセッションとして、主催であるFilament, Inc. 代表取締役CEO 角勝氏から開催趣旨が語られた。

 

 

今の日本が様々な課題を抱えていること、悲観的な未来が語られていること、しかしその悲観は希望に変化しうること。日本の抱える課題に真っ先に直面している「地方」各地で、その課題と向き合い活動している人々との出会いから角氏が地域と「人」の可能性を感じたこと。そういった「人のつながり」を連結・連鎖させていくことで、その可能性を倍加させていく、それがこの「QUM BLOCS」だと。

 

本編の各セッションは、主催者からの「お題」に対してゲストがそれぞれ回答となるキーワードを示し、モデレーターが詳しい話を引き出していく形式で行われた。

「キーマン」は探すものじゃない

Session1 地域×サービス そこで行われる新しいサービスの価値とは

 

パネリスト

長井伸晃氏(神戸市企画調整局産学連携課担当係長)

勝瀬博則氏(handy Japan株式会社 CEO)

田村慎吾氏(関西電力株式会社経営企画室 イノベーション推進Gマネージャー)

下村祐貴子氏(フェイスブックジャパン執行役員 広報統括)

近藤洋祐氏(株式会社電脳交通 代表取締役)

モデレーター

角勝氏(Filament,Inc. CEO)

 

最初のセッションから興味深い話が次々に飛び出したが、中でも印象的だったのは、勝瀬氏の話だった。(姿も印象的だった)

 

写真左より 長井氏、下村氏、勝瀬氏、近藤氏、田村氏

 

このセッション3つ目のお題「地元のキーマンが必要か?」に対して、「他人に任せていてはダメ。結局自分がキーマン」と答えた勝瀬氏は、「裸の男とリーダーシップ」という短い動画を紹介しながら、リーダーが発生してムーブメントが起こる様子を説明した。

 

・裸の男とリーダーシップ

https://www.youtube.com/watch?v=KAfETQCLZGU

これは2010年に起業家のデレク・シバーズがTEDトークで「社会運動はどうやって起こすか」と題したプレゼンテーションの中で紹介した有名な動画で、最初のフォロワーの重要性を説明したものだ。

 

勝瀬氏はその動画を紹介しながら、実際に実演して一人の行動がムーブメントに発展していく様を見せてくれた。勝瀬氏が踊り、それに追従して踊る人が出てくると、さらに何人かが後を追って踊り始めた。勝瀬氏は、最初に追従する人は事前に仕込んだと種明かししたが、その後に続いた人は自然発生したものだった。

 

勝瀬氏と、事前に打ち合わせしなかったにもかかわらず踊るフィラメントのメンバー

勝瀬氏は「この動きの中でキーマンは最初に追従したフォロワーだが、実際の活動においては普通仕込みなんてできない。そもそもこの動画で最初に踊っている男は、フォロワーを求めて踊り出したわけではない。ただ踊りたいだけ。大事なのは、その人を見て踊りたいと思う人が出てくるかどうか。みなさんが最初に踊り出す人でないならば、その二番目に踊り出す人になれるかどうか。キーマンは探すものじゃない。最初に踊り出す人になるか、二番目に踊り出して自分がキーマンになるか、しかない」と結んだ。

 

利用者は50代、60代の女性

Session2 ローカルブロック経済 お金の動きを通して見る未来

 

パネリスト

堤真良氏(国際大学グローバルコミュニケーション研究所客員研究員)

坊垣佳奈氏(株式会社マクアケ 取締役)

秋山瞬氏(株式会社ネットプロテクションズ 執行役員)

古里圭史氏(飛騨信用組合 常任理事 総務部長)

 

モデレーター

クロサカタツヤ氏(株式会社企(くわだて) 代表取締役)

 

経済をテーマにした二番目のセッションでは、スマートフォンで決済する電子地域通貨「さるぼぼコイン」に取り組む飛騨信用組合 古里氏の話が印象的だった。

 

写真左より、モデレータのクロサカ氏、パネリストの境氏、秋山氏、坊垣氏、古里氏

 

「今の取り組みに対する反応はどうか?」というお題に「予想外」と答えた古里氏。「始める前、地域通貨なんか絶対成功しない、しかも決済の際にユーザーにひと手間発生する方式なんて通用するはずがないとネガティブな意見ばかりだったが、いざふたを開けてみると、事前に懸念されていたことはまったく問題にならなかった」そして「利用データを調べてみると、利用者は50代から60代の女性が突出して多かった」とのこと。利用者層については会場がざわめくほど、参加者にとっても「予想外」だった。古里氏は、大手の電子決済が浸透していない、日常買い物をするような近所の個店で使えることやポイントサービスの存在が理由ではないかと分析。

 

そして、その話を受けて、株式会社ネットプロテクションズ 秋山氏から、後払い決済システム「NP後払い」の利用者も同じく女性層が多いとの話が出て、再び会場がざわめいた。秋山氏によると、男性に比べて女性はネット上でカード情報を入力することに抵抗を感じる人が多く、一方で、ポイントサービスの利用などに関しては、男性は保守的な傾向があるが女性は進取の気性に富んでいるように感じるとのことだった。

 

古里氏はセッションの最後、さるぼぼコインについて「一般的な電子決済と違いキャッシュレス化という部分には力点をおいておらず、自分たちの地域で使う、地域通貨という部分を大事にしている。さるぼぼコインを使うというのは、主体的に自分が属する経済圏を選択する行為。今後5年10年かけて、自分の経済活動の10%でも、自分たちの地域の中で巡るお金を使おうというメンタリティを育てていきたい」と結んだ。

 

最終的には、人と人

Session3 地方の魅力発掘 新しい視点からのそれぞれの魅力づくり

 

パネリスト

鳴海禎造氏(glafit株式会社 代表取締役)

豊原弘恵氏(古都里(ことり) 代表)

安彦剛志氏(株式会社ソニー・ミュージックコミュニケーションズ)

森平和歌子氏(株式会社農業の未来研究所)

 

モデレーター

藤田功博氏(株式会社のぞみ 代表取締役)

 

 

スポンサーセッションをはさんで、三番目のセッション。「フルーツ輸出の手続きを考えたら、購入者を輸入したほうが早い」「共感するなら金をくれ」などパワーワードが次々に飛び出したセッションだったが、中でも飛び抜けて印象に残ったのは株式会社農業の未来研究所 森平和歌子氏の「お金がなければ体で払います」のひと言だった。起業でお金に困るのは都市でも地方でも当たり前で、大きな問題とは考えない。お金がなければ、自分の知見や労働力を提供し、「能力の物々交換」で必要なものが得られた、と。

 

この部分だけを切り取って文字で読むと、当たり前のように思えたり、ともすれば原始的な行動のように思えたりするが、セッションを通じてこの言葉を振り返ると、実に本質的なことであると気づかされた。

 

貨幣という抽象化されたものを通じての経済ではなく、この「能力の物々交換」が成り立つためには、大前提としてそこに人と人との信頼関係が必要だからだ。近年話題の「評価経済」が、見えない形で根元に含まれている。

また森平氏の「能力の物々交換」は「これをするから、それちょうだい」というような単純な話で終わらなかった。日常的に近隣へ能力を提供し、巡り巡って結果的にビジネスに有利に働くものに繋がったと。

 

これは、セッション最後のお題「地域でビジネスを成功させるためのカギは?」に「付き合い」と答えたglafit株式会社 鳴海禎造氏の話も、まさに同じものだった。

 

左から鳴海氏、豊原氏、森平氏、安彦氏、モデレータの藤田氏

 

鳴海氏は「都市部の方にはピンとこないかも知れないが、地方では生活の場所と仕事の場所が同じ場所であり、消費者と生産者、サービス提供者が同じ場所にいる。奉仕活動ふくめ、仕事外の付き合いがそのまま仕事に繋がっていく地方でビジネスを考えるなら、そこに住むことが一番の成功のカギ」と語り、それを受けて森平氏も「このお題の答えは、表現は違ってもみんな言いたいことは同じで、最終的には人と人だということ」と話し、続けて「そこをきちんと押さえて地方で成功できる人は、都市部でも成功できる」とエールを送った。

 

共に汗をかく”共汗力”が大切

Session4 自走する地域 人をつくり継続する仕掛けを解明

 

パネリスト

小紫雅史氏(生駒市長)

古山隆幸氏(一般社団法人イトナブ石巻 代表理事)

木村篤信氏(日本電信電話株式会社 NTTサービスエボリューション研究所)

木継則幸氏(株式会社インフォバーン クリエイティブ・フェロー)

 

モデレーター

村上臣氏 (フィラメントCSO(LinkedIn 日本代表))

 

最後のセッションでは冒頭、モデレーターであるFilament CSO(LinkedIn日本代表) 村上臣氏から「課題先進国と言われる日本の中で、最も早くその課題が顕在化している、課題の最前線は地方にあるのではないか。そこでは課題解決の事例が生まれているのではないか、と仮説を立てたところ様々な話が集まってきたので、そこを深掘りしていきたい」と、改めてテーマが語られた。

締めにふさわしく多種多様な話題が飛び交ったセッションだったが、ここではその中でも特に、他ではなかなか聞く機会がない話を紹介したい。

このセッションにはなんと現役の市長、生駒市長である小紫雅史が登壇され、地方行政の長から現場のリアルな話が語られた。

 

左から モデレータの村上氏、小紫氏、古山氏、木村氏、木継氏

 

最初のお題「どうやって地域を巻き込んでいますか?」に「シビックプライド+行動力」と答えられた小柴市長は「自走する地域をつくるためには市民力をいかに高めるか。その市民力とは、地域愛、地域への誇りと結びついた行動力である」「地域愛が元々強い地域はあるかもしれないが、ニュータウンである生駒市では、生駒市という地域の良いところを市民へ丁寧に伝えることに取り組んだ。そして地域のために挑戦する人がいれば積極的に加わり、共に汗をかく”共汗力”を示すことで、行動力を高めていただくように取り組んでいる」と。

 

「市役所に勤める公務員は、窓口で待っているだけだとしんどい仕事ばかりになる。それも仕事だが、我々は街に飛び出していかないといけないし、その市民との近さが何より市役所の職員の面白さだと思う。街に飛び出せば、面白い人がいくらでもいる。だから、地域に飛び出す公務員を養成した。すると職員がどんどん面白い挑戦をしている人の所へ行き、共に汗をかき、地域が自走しはじめる」と、現役市長ならではの地域の巻き込み方を語られた。

 

が、そこで話は終わらない。同時に課題として、市役所の意識改革の難しさを語った。「市町村といった地方自治体はずっと、国の方針を法律などに基づいてきっちりやることを第一に刷り込まれているので、新しいことをつくろうとか、地域に飛び出すとか、ましてや市民にも汗をかいてもらうなんてことはタブーのようになっている。地域のために我々が汗をかくんでしょ、と。市役所には、これまでずっと地域のために汗をかいてきた自負もある。きちんとそこに取り組んできた生駒市だけに、これからは自分たちだけではなくいかに市民にも汗をかいてもらうかも重要なんだよ、という話は理解されにくく、ジェネレーションの壁が大きな課題になっている」と。

 

この話を聞いている大阪から生駒市は電車で一時間とかからない、いわばお隣の街だ。しかしそこで生駒市長が、生駒市役所がどのような活動をされていて、どのような課題と向き合っているのか、まったく知らなかった参加者も多いだろう。ましてや、石巻や北海道ともなればなおさらだ。

 

地方が課題のフロンティア!

最後のクロージングセッションでは角氏と村上氏が全セッションを振り返ったが、地方が課題のフロンティアであること、そこにはそれらの課題に取り組む面白い人たちがいること、そして角氏が地域と「人」の可能性を感じ、そういった「人のつながり」を連結・連鎖させていくことで、その可能性を倍加させていこうとこの「QUM BLOCS」を企画されたことがよく分かるイベントだった。

 

村上氏・角氏の両名が、各セッションを総括

 

ここではほんの一部しか紹介することができなかったが、とても伝えきれないほど多くの知見や示唆にあふれていた。それは、5時間を超える長丁場にも関わらず最後まで満席だったこと、そして最後の最後まで盛り上がり続けた交流会にもあらわれていた。

 

熱気あふれる交流会のようす

 

開場から閉会まで、広い会場の酸素が薄く感じられるほど、濃密な時間が過ぎていく「QUM BLOCS」。ここから何が生まれていくのか、またその先に何があるのか、今後の開催にも期待したい。

 

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