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対談

蛯原健 × KiNG × 村上臣(友情出演)× 角勝【緊急鼎談/テクノロジー思考とアート思考】#3/6

昨年立ち上がったLinkedIn(リンクトイン)編集部が主催するミートアップ、「これからの働き方、生き方」を通底のテーマにした、コラボレーション・イベント。 10/16(水)に丸ビル カンファレンススクエアにて、LinkedIn x Filament, inc.のミートアップが開催されました。

【目次】

テクノロジーの安定には成熟が必要

「先端と安定の天秤」でアートを語る

気づけばブランドの話で盛り上がりすぎ

 

 

テクノロジーの安定には成熟が必要

:では次のトピックは、「先端と安定の天秤」。これも『テクノロジー思考』を読まれた方はなんとなく分かっていていただけると思うんですけど。蛯原さんにふれていただけるとうれしいかなと。

 

蛯原:これは歴史を紐解くと、100パーセント先端的なテクノロジーが実社会とかビジネスに活用された事例はないということ。必ずテクノロジーは成熟しなきゃいけなくて。

 

分かりやすい例が、自動車だとT型フォードの大衆化って話がさっきありましたけど、自動車自体はもっと前に作られてるんですよね。ダイムラーやベンツが。だけど、それは結局は早すぎたし定着しなかったし、何よりもめちゃ高かったと。だから定着するためには何十年という単位の時間による熟成が必要で。ただ、いったん熟成すると普及するのはすごく早いんです。これは全てのテクノロジーに対して言えますね。

 

だってインターネットも、もともとARPANETなんて50年ぐらい前からあったわけで。だけどHTTPができて、WWWができて、そこではじめてウワッと広がった。一気に広がるとそれは7、8年ぐらいで定着する。全部そうなんです。携帯電話も最初はめちゃでかかった。

 

村上:ショルダーフォンの時代。

 

蛯原:ありましたよね。そのあとやっぱり何十年かかってる。あらゆるテクノロジーは、それができてから定着まで数十年って単位は絶対かかってるって話です。

 

:結構ショルダーフォンの時代は長いですよね。

 

蛯原:めちゃ長いですよ。何十年もかかってます。

 

村上:基礎研究って20〜30年のスパンで動いていて。Appleのマッキントッシュの例でいえば、ゼロックスのパロ・アルト研究所が20年ぐらい前からマウスとか今のGUI(グラフィカル・インターフェース)というベースは作っていた。ただ、それはマスにはならなかったし、研究者の論文の世界で満足されていた。それがパソコンの中に入ったことによって、いまのマッキントッシュがあるわけです。

 

蛯原:ブロックチェーン、サトシ・ナカモトが論文を書いたのって2008年でしたっけ。たかだがそれくらい前なので、その点でいうと実用化までははるかに遠いと私は思っているんです。

 

この前ノーベル賞をとったリチウムイオン二次電池の吉野さんも、はるか昔に彼は発明してたんだけど、足を棒にして歩いても全然売れなかった。でも携帯電話なるものが世の中に出てきて、軽くてめちゃ長持ちするってことでいきなりブワーって売れた。

 

村上:しかもバッテリーだとその前はニッカド電池というのがあって。その時代のほうが長いわけ。リチウム電池は本当につい最近で。小型化で使いやすいというニーズに合致した。

 

蛯原:EVって今世界中で流行ってますけど、あれって結局税金で下駄履かしてるだけなので、経済的にペイするわけないんです。電池革命が起きなきゃいけない。テスラは例外で、あれは超ハイエンドだからギリギリ黒字転換するかもですけど、あれだってテスラの中に単三のもう一回りでかいやつが3000個ぐらい入ってるんですよ。だからめっちゃ重い。普通の車1トンぐらいなんですけど、あれ3トンぐらいです。

 

村上:要は電気代が0円にならない限りは基本的にはペイしないですよね。

 

蛯原:専門家は分かっておられるんだけど、普通の人は「EV革命起きてすごいね」みたいな感じになっていたりする。

 

 

村上:なんとなく長らくオイル優位で世界が動いていた、それこそモータリゼーションとともに。内燃機関としてのエンジンはガソリンで動くので、その構図だと中東が富とパワーを持っているわけです。そこに対するカウンターとしてEVを普及させればオイルが弱くなるよねっていう、そういうトラップをやっているので、地政学が絡んでくるわけです。

 

:たしかにね。ガソリンエンジンで動いている限りは、世の中を動かす力はオイルになっちゃいますもんね。

 

蛯原:それを走らせてるのは日本とドイツの内燃車ですが、その構図が絶対崩れないので中国はそれを崩すためにEVにガッと下駄履かせて、BYDという実はテスラよりもはるかに業績がいい会社があるんですけど、それを国策で作っちゃって。そうすると勝てないんですよ、普通のガソリン車は。

 

「先端と安定の天秤」でアートを語る

村上:だから電池のイノベーションはまだまだ時間がかかる。「全個体電池」もそうですし、日本が若干強いのは「空気電池」。産総研がやっている安全でエネルギー密度の高い電池があるんですけど、量産化はまだまだ遠いと言われている。あとは大穴で水素っていうのがある(笑)。ちょっと笑っちゃいましたけど。

 

:「トヨタ MIRAI」ですよね。

 

村上:燃料電池ね。水素で動くので超クリーンって話で、「トヨタ MIRAI」は水素ステーションが近くにある人は、乗らない理由はないですよ。全部の補助金を足すと実質0円で買えますから。

 

:そうなんですか!?

 

村上:そのかわり水素ステーションが必要。

 

:それを探すのがすごい大変。ちょっと遠出した時に水素が切れたらすごい大変ですよね。

 

村上: そこは一生懸命、理科の授業で習った水の電気分解とかで水素を合成して(笑)。

 

KiNG:それで動くんですか?

 

村上:動かないですけど(笑)。

 

:僕が思い出したのは任天堂の横井軍平さんの「枯れた技術の水平思考」。おもちゃの光線銃とか、赤外線でWiiを作った。要は、みんなが手に届くようになってきた技術が世の中を変えるってことなのかなって。さっきバウハウスの話をKiNGさんがされてましたが、あれも「先端と安定の天秤」って部分では同じことかなと思った。

 

KiNG:バウハウス。

 

:アートがすごく貴族のものだった時代は、例えば椅子にも装飾がいっぱいついていますけど、それが普通の人にまで行き渡るようになると、例えば「ワイチェア」(ハンス・J・ウェグナーがデザインした名作家具)って非常にシンプルだし、使い勝手もいいし、そこに美も感じるみたいな。

 

KiNG:生産性の高さとか、輸送が楽とか。

 

:そうそう。大衆のものになっていくみたいな。

 

KiNG:東急ハンズとかで売っている椅子は、例えばコンテナに何個入れられるかでデザインを作ってますよね。座り心地よりも。

 

:スタッカブルみたいな感じですか?

 

KiNG:はい。それによってコストが下げられて、それらしい椅子を低価格で私たちが買える。そういう領域になっていくんですね、最終的には。コストが下がって大量生産化するには、本来の目的とは違うところにいかないと実は広がらなかったりする。メゾンブランドのオートクチュールと大量生産の洋服では、衣料品なのかひとつの作品なのかっていうくらい違いがある。

 

村上:プレタポルテからフォーエバー21まで、いろいろです。

 

KiNG:ZARAはわりといいですね。COSもいいですよね。日本への参入失敗しちゃったんですけど、めちゃくちゃヨーロッパでは評価されてます。

 

村上:青山の店は結構いいですよね。

 

 

KiNG:すごく素敵なんですよ、H&M(エイチアンドエム)の高級版みたいなので。ほかのメゾンブランドがすごいテクノロジーかけて作った生地をそのまま使って、縫製も結構いいので、かなりチートして圧縮していいものが買えますね。

 

気づけばブランドの話で盛り上がりすぎ

: GAP(ギャップ)とかはどうですか。

 

KiNG:ギャップは今立ち位置が微妙…ですよね。安くも高くもなくて。「ギャップって何?」みたいに私の中ではなっちゃってますね。

 

村上:今はだから、安くも高くもない真ん中の人たちの存在理由が薄れてる気がするんですよね。それはファッションだけじゃなくてインテリアも全般そうだと思う。いわゆるセレクトショップが頑張ってSPA(「スペシャリティー(S)・ストア・リテーラー・オブ・プライベート(P)・レーベル・アパレル(A)」の頭文字で、直訳すると「自社ブランドを販売するアパレル専門店」)をやったりしてる。ZOZOもそうだと思うんですけど。

 

: JOURNAL STANDARDが家具作っちゃったりとかもありますよね。

 

村上:すごく安くて品質が一定のものがバーッと広がりましたよね。ハイブランドは、クリエーションって意味では唯一無二のブランドを作ってる。それにインスパイアされて、安くて手が届くけど、どこかハイブランドで見たことのある商品がセレクトショップに多い。

 

:Francfranc(フランフラン)をディスってます?(笑)。

 

村上:いやいや。具体的なブランド名はディスってないですけれども(笑)。ZARAにしてもなんにしても、各メゾンブランドのトレンドを早くキャッチアップして、場合によっては買ってきて解体してってパターンをやっている。

 

:リバースエンジニアリングみたいですね。確かにファッション業界だけじゃなくて、同じことが起こっている感じがしますよね。ニトリとかIKEA(イケア)とか。

 

KiNG:イケアなんて原宿の駅前にできますからね。驚愕です。

 

村上:イケアジャパンはマネジメントチームが入れ替えになったらしくて。ニトリがなんで成功しているかっていうと「駅近」なんですよね。

 

KiNG:そこだ!(笑)。

 

村上:ヨドバシ、ビックカメラにしても日本の都市部は電車で移動するので、駅の近くに出店して成功した。中目黒とか。

 

KiNG:渋谷もですよね。

 

:イケアもそう思ったんだ。

 

村上:多分そうだと思います。

 

:でもイケアに行くってことは買った家具を持って帰るってことでしょ? だから車で行くから高速道路の出口沿いにこれまでは出店していましたよね?

 

村上:グローバル展開してきたので、日本も基本的には車で持って帰ると思ったら、意外と日本は配送する人が多くて。最初に日本に来た時は配送コーナーがすごいしょぼかったのが、だんだん配送コーナーや組み立てサービスが増えてきた。あれは日本独自で進化したローカルサービス。

 

:組み立てるの結構大変ですもん。

 

村上:でもよくできてると思いますよ。マニュアルが破壊的に分かりにくいだけで。

 

KiNG:よくできてます。マニュアルは読まないほうがいいです(笑)。

 

村上:ネジとか器具とかの構図は本当に「このネジよく作ったな」って思いますよ。

 

蛯原:平均年齢が低いアジアで普段仕事をしていると気づかないけど、高齢化による日本の特異性ってのがありますね。ニトリもそうじゃないですか。要するに日本は、内需の3分の2は中高年なので。イケアで買っても持っていけないし、組み立てられない。だからお値段以上で駅に近くて、中高年層にオプティマイズされたブランドにみんな行く。

 

村上:アイリスオーヤマもそうですよね。めちゃ伸びてます。

 

蛯原:日本の事象の結構な理由を高齢化で説明できますよ。キャッシュレス率が低いのもそうだし。村上さんの古巣のヤフーはpaypayめっちゃ頑張ってるけど。

 

 

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