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対談

5年を経て、「始動」は実戦のステージをめざしたい【WiL 松本真尚氏×角 対談・前編】

今回のゲストは、大企業とスタートアップの架け橋となり、イノベーションを加速させているWiL共同創業者の松本真尚さん。
フィラメントCEO角が「始動Next Innovator2019」のメンターをさせていただいたことをきっかけに対談をさせていただきました。

松本さんがヤフー・ソフトバンク時代に影響を受けた3人、
“事業をやっている孫正義さん” 、
“(当時の)ヤフー社長 井上雅博さん” 、
“米Yahoo!の創業者 ジェリー・ヤンさん” 、
と過ごした黄金の10年とは!?
そして、「始動」が目指す次なるステージについてもお話を伺います。

プロフィール

松本 真尚(まつもと・まさたか)

松本 真尚(まつもと・まさたか)

株式会社WiL 共同創業者/ジェネラル・パートナー

1999年にPIMを設立し、CEOとして2000年にYahoo! JAPANとの合弁を指揮。Yahoo!社長室で戦略投資を担うほか、数々の社内新規事業の統括部長を務め、2011年よりCIOとして同社の新規事業創出、他の事業会社との連携やJVを多数仕掛ける。2013年にWiLを創業。ベンチャー投資に加え、これまでの経験を活かし大企業との事業創出を数多く手掛ける。

角 勝(すみ・まさる)

角 勝(すみ・まさる)

株式会社フィラメント 代表取締役CEO

1995年~2015年、大阪市役所に勤務し、「大阪イノベーションハブ」の立上げと企画運営を担当。2015年、大阪市を退職し、フィラメントを設立した。多くの企業で新規事業開発プログラムの構築・実行支援や独自設計したワークショップとコミュニティマネジメント手法を用いた人材開発・組織開発を手掛ける。2016年には企業アライアンス型オープンイノベーション拠点「The DECK」の立上げにも参画し、他のコワーキング・コラボレーションスペースのコンセプトメイキングや活性化にもアドバイザリーを提供している。

ヤフー、ソフトバンク時代に影響を受けた3人

「自分でコトを起こせるスキル」以外は、AIに置き換えられる

 

ヤフー、ソフトバンク時代に影響を受けた3人

--そもそも、角と知り合ったきっかけは何だったんでしょうか?

 

松本尾原さん(尾原和啓氏)に紹介されて、「始動Next Innovator2019」のメンターをやってもらったのがきっかけですね。次に『起業の科学』著者の田所雅之さんたちと飲み会をやって仲良くなって。だからほんとに最近。もっと言うと、角さんの会社が何してるかも実はよく知らない(笑)。

 

飲み会で仲良くなると、対談したくなるんです。でも松本さんがすごい人だってのは、僕はもともと知ってましたよ。ヤフー時代のころから。

 

松本僕がヤフーに入ったのは2000年で、社員番号は301番とかでしたから。そこから倍々ゲームで社員が増えていって、めちゃくちゃ面接しましたね。

 

急速に大企業に変わっていっていたということですよね。

 

松本でも僕は2年で辞めようとしてたんです。M& Aされてヤフーに入っているから、2年のロックアップがあって。 志半ばだったから、もう一度自分で会社を興したかった。その後2年ごとに井上さんに退職の相談に行ってました

 

そうだったんですね。

 

松本ヤフーにはモバイルの会社として評価されてM&Aされたのに、モバイルチームには参加させてもらえなくて、そのまま社長室に配属だった。そこで、ヤフーBBの構想に携わるんです。だから24時間365日いつでも孫さんが活動している時間で連絡がくる。それくらいのスピード感です。

 

すごい、周りの人は大変ですねやっぱり。

 

松本一方、ヤフーの当時の社長だった井上雅博さんはインターネット企業としてあるべき姿に対するこだわりがすごく強くて、「インターネットってまだまだ可能性あるから伸びるんだ」と。お客様の最後ラストワンマイルを全部とったら、あとは銀行つくろうが不動産を始めようが絶対成功する。でもヤフーは全部の面をとりきれていない、だからそこに邁進するべきなんだ、と。

 

だから井上さんは利益率にはすごいこだわっていた。 インターネットバブルの崩壊やリーマンショックを挟んだうえで16期増収増益を繰り返すなんて、普通できないですよ。すごい天才経営者だと思います。

 

サービスへのこだわりもすごかったって聞いてます。

 

松本ヤフーというロゴがついたサービスで、使ったことがないサービスはないって言うぐらい細部まで全部見ていた。Yahoo!きっずのここが使いづらいって文句が来たときに、「井上さんが大人だからですよ」って返したら怒られたなんてこともありましたね(笑)。

 

じゃあヤフーとソフトバンク時代に一番影響受けたみたいな人ってのも?

 

松本それはもう間違いなくお二人です。ビジネスでいうと孫さんは、「昔はオイル、これからは情報が市場をつくるんだ、だから情報革命だ」ってずっと言っていたわけですね。それが孫さんのロジック。

 

井上さんはそれも理解したうえで、ヤフーはその中でインターネットカンパニーであるってところに対するブレがなかった。インテルになりたいわけではないんです。もっと言うと別に金融をやりたいってわけでもない。彼はとことんインターネットに拘っていた。

 

お二人からの影響が、今の仕事にも受け継がれてますか?

 

松本僕が幸せだったのは、“事業をやっている孫正義”と仕事ができたことです。ヤフーBBの前も、今も“投資家・孫正義”じゃないですか。でも孫さんが事業家である時期の、ヤフーBB、ボーダーフォン、ソフトバンクモバイル、iPhoneを手がけたこの時代って事業に邁進していて、実は孫さんの中では特異な時代なのかもしれないですけど、僕はこの10年間をご一緒してるわけです。

 

確かに、それは貴重ですね。

 

松本孫正義と井上雅博、お二人が一番脂の乗っている40歳代中頃に10年間ぐらい一緒にお仕事をさせていただいた。だから事業に対する判断とか経営に対するパラメーターの持ち方は、やっぱりお二人から教えてもらったんです。

 

もうひとり。ジェリー・ヤン(米Yahoo!の創業者)はインターネットの父、良心です。インターネットってダークサイトにいきやすいところもある。いまのGAFAにもそういう側面が一部あったりするかもしれないですけど、ジェリーはブレないんですよね。

 

すごいですよね。3人とも違いがあるし。

 

松本孫さんと井上さんって違うじゃないですか。ジェリーも違う。その3人がYahoo! JAPANの成長のためにフォーカスしていたタイミング、彼らが本気で仕事をしようとしていたタイミングに一緒に仕事ができて、それが最高に楽しかったです。

 

「自分でコトを起こせるスキル」以外は、AIに置き換えられる

WiLでも、「始動」でも、「新しい人をつくる」って事業をやられていると思うんですけど、ご一緒してみて始動の進め方って結構独特だなと思ったんです。外部からいろんな講師の人を呼んで、座学をやったりワークショップやったりしながら、ネクストイノベーター養成をやられていますよね。

 

松本まず僕は個人的には、ちょっと言い方が間違ってるかもしれないですけど、MBAとかはあまり信用していないんです。体系立った教育プログラムをつくりたいと思っていなくて、まさに「究極のOJT」をつくりたいんです。なので講師も誰か1人がずっとやっていくというやり方よりは、実行者を呼びたいんです。

 

なるほど。

 

松本「Thinker to Doer」というのが始動のセカンドタイトルなんですけど、thinkerをつくりたくないんですよ。多分独特だと言われているのは、基本的にみなさんがthinkerを育成するプログラムに慣れているからです。要はアカデミックに知識をためていったり、理解していったりするのが大事だと思われがちなんですけど、僕の理想は、さっきのお三方から実際に僕が影響を受けたような、「心の琴線の何かに引っかかる」ことをやりたい。

 

まさに始動はそういうプログラムになっていますね。

 

松本始動に参加する人は、まだスタートラインに立っただけなんです。でも、まず大事なのは、この「立つ」ということ。そして次は例えばマラソンだと42.195キロ走りきれるという「自信」だったり「コミット」だったりなんです。それを僕らは「Doer」と呼んでいる。40キロまでどれだけタイムが良くたって、リタイアしたらリタイア者にしかならないくて、10時間かかったってゴールのテープ切ったら完走者なわけです。

 

日本人は座学は得意ですよね。

 

松本 事業の勝ちパターンってありますよね。じゃあそれを習得している、例えば外資のめちゃくちゃ優秀なコンサルタントがベンチャーで成功するかというと、これはもう決してイエスではない。大学の先生だってしかりです。でも、メルカリの山田進太郎さんのような起業経験者がもう一度事業やりますっていうと、多分成功しますよ。孫さんが新しい事業をやりますというのも、グリーの田中良和さんがやりますというのも、恐らく成功するんだと思います。これは学問じゃない、走りきるという「自信」と「コミットメント」なんだと。だからランナーなんです。アントレプレナーというか、事業を創造するという生き物に変わってほしいんです。

 

それで、いろんな人をお呼びになっているんですね。

 

松本それも起業家、CEOにこだわりたいのはそういうことなんです。責任を持ってやりきっている人たちの「A」という言葉は同じ「A」じゃないことに気づける人たちが増えればいい。

 

パッションとコミットメント、そして一番大事なやりきる経験をする場が、始動ってことですね。

 

松本だから本当は次に「始動する場」をつくりたいんです。いまの始動はエントリーポイントでしかない。まだ集まっただけで、卒業生だってヒヨコにしか過ぎない。だから何かあったら動けるというプログラムにすべきと僕は思っていて。そこに参加して武者修行ができる場をつくってあげたいんですね。2020年からはここを設計したいんです。

 

これは面白い。

 

松本次のステージは「失敗できる場所」をつくること。ステージを用意するから「戦え!」なんです。戦うという経験が、ロールプレイングではなくて本当の痛みを伴う。日々、不安で寝られない生活になってしまうような環境じゃないと新規事業もベンチャーも生まれないです。

 

WiLでは、大企業における「出島戦略」も進めてらっしゃいましたよね。

 

松本やはり日本だと大企業にいちばんリソースがあるから、チャレンジはできるはずなんですが、ブランドや例えば、収入とか家族とか色々とあって人材が飛び出せないんですよね。だから僕らはずっと「出島戦略だ」と言っていて、例えばSONYのSAP、ANAさんのDD-Lab、みずほさん、セブン-イレブンさんがやってるラボも、全部WiLのLP企業が創設されたんです。

 

だから、大企業のラボと連携して、本当の戦う島を始動でつくろうということです。この時に、ビジネスプランができてVCが集まって投資しますっていう、Yコンビネーターみたいなことをやりたいわけではなくて、やっぱり「人」をつくりたいんですね。だから特殊に見えるかもしれないです。どこかと競合するとも思っていないですし。

 

その戦場のイメージって大体ついてるんですか?

 

松本それを今、喧々諤々自分の中で考えているんですけど、認めたくはないけど、多分まだ僕には掴みきれていないんです。いわゆる大企業に普通に勤めたことがないわけですよ。学生からずっとベンチャーしかやっていないし、ヤフーもソフトバンクもM&Aされてジョインしているし、社長の孫さんや井上さんに直談判に行けるようなポジションだったから。だから背中を押してほしいとか、大企業からすごい勇気を持ってジャンプしますとか、そういう会社員という生き物としてのリスク感覚が本当に麻痺しているんですよ。

 

なるほど(笑)。なんとなく分かります。

 

松本そういう意味では、始動にエントリーする人たちに一番大事なのは「当事者意識」だってよく言ってますけど、そもそもなぜそれを持っていないのかが僕は多分分かっていないんです。さっき言ったように、「何がそんなに難しいの?」と思っていたりする。

 

でも本当にAIが普及し、ロボットが普及し、社会が劇的に変わっていく中で、「自分でコトを起こせるスキル」以外は、AIでできちゃうよって思う。唯一AIができないのは、「課題設定」ですよね。

 

課題設定は人間にしかできないということですね。

 

松本人間には見たいビジョンだったり、お子さんに残したい世界だったり、日本の姿だったりがある。それはAIにはできない。いつかできるんでしょうけど、当分はできない。幸せな街を、幸せな人を、幸せな将来をつくろうという課題設定って、AIからするとまずは幸せの定義をしてくれっていう話になるからできない。

 

まだない課題を見出すのは人間にしかできない。誰の目線から見てそれが幸せなのかっていうところですよね。

 

松本おっしゃる通りです。だから当事者意識を持っていないのが謎で…。謎なんですけど、逆に始動を5年もやっているとなんとなく分かってくるんです。そういう意味では、さっきおっしゃった「戦場ってどうしたいんですか?」ということでいうと、それを考えられる場所をまずはつくりたい。そこでちゃんとディスカッションできて、ワークショップで終わっているものをもう1歩前へ進めてみませんか、ということです。

 

プロジェクトをつくるってことですか?

 

松本プロジェクトをつくるのが目的じゃなくて、結局は「未来」をつくりたい。これはそれを支えられる人たちと次世代をつくるエントリー者と、その2つが増えて初めて回るものだなと気づいたので、5年やりきって仲間は集まったかなという感覚です。

 

でも次のステージがやっぱり面白そうですね。大企業に所属している人たちが自分たちの会社以外で実戦をするのはすごくいいなと思いました。

 

後編はコチラ

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