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AIの時代に、いかにしてオーナーマインドを育てていくか?【WiL 松本真尚氏×角 対談・後編】

後編では、異なる立場のふたりがイノベーション人材の素養について話し合います。
イノベーションへの最短経路を設計するプロデューサーとして立ち回る松本さんと、新規事業の伴走支援をしているプレイングマネージャーの角、様々な人を見守るふたりが共通して持つ課題意識は「パッション」と「行動バイアス」!?
どうすれば行動バイアスを外せるのでしょうか?後編も引き続きお楽しみください!

プロフィール

松本 真尚(まつもと・まさたか)

松本 真尚(まつもと・まさたか)

株式会社WiL 共同創業者/ジェネラル・パートナー

1999年にPIMを設立し、CEOとして2000年にYahoo! JAPANとの合弁を指揮。Yahoo!社長室で戦略投資を担うほか、数々の社内新規事業の統括部長を務め、2011年よりCIOとして同社の新規事業創出、他の事業会社との連携やJVを多数仕掛ける。2013年にWiLを創業。ベンチャー投資に加え、これまでの経験を活かし大企業との事業創出を数多く手掛ける。

角 勝(すみ・まさる)

角 勝(すみ・まさる)

1995年~2015年、大阪市役所に勤務し、「大阪イノベーションハブ」の立上げと企画運営を担当。2015年、大阪市を退職し、フィラメントを設立した。多くの企業で新規事業開発プログラムの構築・実行支援や独自設計したワークショップとコミュニティマネジメント手法を用いた人材開発・組織開発を手掛ける。2016年には企業アライアンス型オープンイノベーション拠点「The DECK」の立上げにも参画し、他のコワーキング・コラボレーションスペースのコンセプトメイキングや活性化にもアドバイザリーを提供している。

パッションがあることをやった方が楽しいのに、なぜそれを選ばないのか

行動バイアスはどうやったら外れるのか?

 

パッションがあることをやった方が楽しいのに、なぜそれを選ばないのか

Filamentってオープンイノベーションのコンサル業務をしていて、特に大企業に風穴をあけられない人たちに伴走して支援し、かつ人をつくるところまで組織に入り込んでやっているケースが多いんです。

 

そこから見ていると、大企業の方ってすごい頭がいいんだけど、頭がいいということは先が読める。すると失敗するかもしれないけど成功するかもしれないことみたいなことに、あまり価値を見出さなかったりするんですよね。だからオーナーマインドやパッションがなかなか育たない。

 

松本それって賢いからですか?

 

賢いというか、相対的にパッションが弱くなる感じでしょうか。損をせずに利得を得るということが、やりたいということよりも勝ってる。松本さんはその反対ですよね。

 

松本反対だと、賢くないってことに(笑)。

 

いやいや(笑)。なので、始動に来る人たちは、パッションを持って何かをやり遂げた人に対して憧れは持っているんだけど、自分が今まで選んできた人生の選択肢はそうではないので、大きなギャップがある。

 

松本角さんやいろんな人とお話する時に、僕はそこが分かってないんです。パッションがあることをやったほうが楽しいに決まっているじゃないですか。それをなぜ選ばないのか。

 

多分それまで特にやりたいことを見つけられていないわけです。僕も公務員になったのは別にやりたいことがなかったからですし。

 

松本自分にパッションがないんだったら、友達で好きなことをやってるやつにとりあえず乗っかってみるのもひとつの選択肢じゃないですか。今って明日にはロボットやAIに自分の仕事が置き換えられてるかもしれない世界なんだから。だから、頭がいいんではなくて、未来が見えていない。僕からすると、想像力が欠如しているのではないかと思うんです(笑)。要は日経インデックスを買ってるのが一番安心って言ってるようなのと同じ。

 

なるほど、それは面白いな。だから世の中の人たちの多くは、日経インデックスを買っていると思ったほうがいいと思います。

 

松本でもゲームのルールがどんどん変わるので、通貨が円ですらなくなるかもってのが未来予想。そのときに日経インデックスを買ってても、ただの紙きれになっちゃうでしょ?

 

昨日と同じ今日があるから、今日と同じ明日があるはずだという推測ですよ。自分のこれまでの経験にバイアスで引っ張られるから、みんなそういう判断をしがち。

 

松本なるほど。じゃあRPAやAIがこれだけ普及してるけど、俺の仕事は一生なくならないと思っていらっしゃるということですよね。シンプルに言うと。

 

シンプルにいうとそうでしょうね。終身雇用がなくなるって経団連とかTOYOTAとかが言い出してます。でもこれまでの人材育成の計画とか幹部育成とかは意味がないから止めたかっていったら、たぶん止めてないですよね。つまりそういう認識に立って、組織全体が変わっていくまでには相当時間がかかる。

 

松本ポートフォリオという観点で見るとどうなんでしょうか。ずっと車が売れ続けるのであれば、TOYOTAはウーバーに投資をしないし、サブスクリプションの車を始めない。だからそういう世界になると思っているのでTOYOTAは自分たちの10というリソースの何割かを未来に張り始めている。

 

そうだと思います。

 

松本それが日本のデジタルトランスフォーメーションの一環だとすればですよ。ポートフォリオとしてニッパチの2に張ろうとしているんだとしたら、日本の20%はイノベーターになるはずです。けど、人口分布でいうと2%:98%ぐらいが実態ですよね。

 

分かります。だからそれは同調圧力が強かったり、何らかの行動バイアスがかかっているということだと思います。そう教えたり、気づくための場が必要で、始動はそういう場なのかなと思う。

 

松本それは角さんがちゃんと言語化してくれたおかげだと思ってます。そういう行動バイアスがあったり、ロジカルに考えていない人がほとんどなんだって言われて、すごい納得したんですよ。

 

それはでもみんながアホなんじゃないですか。

 

松本さっき賢いって言ったじゃん(笑)。

 

人間って馬鹿というかアホな側面を持ってるという。ソフトバンクモバイルが金曜日は吉野家がタダになるサービスやったじゃないですか。

 

松本プレミアムフライデーね。

 

あれって、牛丼390円とかそんなもん。でもそのためにすごい時間並んでたりとかするでしょ? 時給で換算したらあきらかに損じゃないですか。それはロジカルに物事を考えている人にとってはアホみたいって思うんだけど、それはそういう行動バイアスがかかっていて、そこに幸せを見出しているわけです。

 

松本その時間にアルバイトしてたら800円は稼げるのに、390円得したというバイアスがかかっている。

 

だからさっきのパッションがあって、すごい儲かるかもしれない。けど利益確定を急ぐんだったらサラリーマンをやって、毎月確実な20万円、30万円をもらうほうがいいよねということになっている。だからそういう同調圧力や行動バイアス、親からの目線とかもあるから変わらないんだと思います。

 

松本じゃあ僕はすごくラッキーでしたね。親を早くに亡くしてるから同調バイアスはないし、バイアスがかかるグループに所属しないまま現在に至っちゃっている(笑)。

 

ヤフー時代もそうだったですしね。

 

 

行動バイアスはどうやったら外れるのか?

松本じゃあバイアスがかかっている人たちって、何をもったら外れるんですか?それが多分一番大事なテーマ。外れた人もいるわけでしょ?

 

僕が一番外れてますから(笑)。

 

松本そうですよね。元は公務員ですもんね。

 

僕が公務員を辞めたのは、これが面白いって本気で情熱を傾けられるものを見つけたからですよね。

 

松本角さんはなんで見つかったんですか?

 

僕の場合は、子どもが産まれたのがきっかけ。その時に「ハッ!」と思ったんです。この子が育って、そして大きくなって、お父さんのこと看取ってくれる時に、お父さん精いっぱい生きたよって言えるぐらいのことってなんだろうって考えて。そして市役所の新規事業の提案制度に応募したんですよね。

 

松本ちなみにその時のプランはなんだったんですか?

 

生活保護費を電子マネーで給付するってものだったんですよ。大阪市の生活保護費って年間3000億円もあるんですけど、4分3は国がお金を出すことになっているので、それを大阪市内でもっとグルグル回るようにすればすごい特だよね、みたいな感じでプランを立てたんですよね。

 

松本面白い。

 

その次の年もまた別のプラン出して、入賞しまして。自分はこういうのを考えることが得意だし、他人がやっていることに意味を見出してそれを言語化して教えてあげることもできるなって気づいたんですね。 

 

松本なるほど。ちなみにそういうマインドやパッションを育てるのって、結局は百社百様じゃないですか。

 

ですね。ただ、基本的にはやっぱり人間って褒められるとその気になるんです(笑)。うまく褒められると、すごくその人が前に進む原動力になる気がします。

 

松本素晴らしい。それをぜひ始動でも伝えてほしいな。

 

例でよく言うのは『建もの探訪』っていうテレビ番組があるんです。新しい家を建てた人を渡辺篤史さんという俳優さんが訪ねて、その家を褒めまくるという番組で。家を建てた人のこだわりポイントを見つけるのがすごいうまいんです。新規事業を作ろうとしている人も同じで、自分が発見できていないその人の価値、その人のプランの価値を言語化してあげる。

 

松本ちなみに角さんがお持ちになっていらっしゃるそのスキルは、トランスフォームできるものなんですか?

 

それをいまフレームワークにしようと、すごい頑張ってる。難しいんですけど。

 

松本ですよね。一子相伝とは言わないですけど、角さんの生きてきた歴史も含めてのメソッドな側面もたくさんおありになりそうな気がしているから。

 

ひとつ一番大事な要素は、教養とかムダ知識の広い人じゃないとできないなと思います。最近リベラルアーツの勉強会やイベントをやってみたり、まったく逆にふるようなことをよくやるようにしています。「面白がり力」というキーワードなんですけど、なんでも面白がってそこに突っ込んでいく。そうやって引き出しを増やすと、ものの見方が増えるんですよね。そうすると、褒める要素もいっぱい見つかる。

 

松本それはすごい。角さんはプレイングマネージャーですよね。僕はプレイングはやらないんです。トータルで世界観をつくるんだけど、そこのプレイングは、例えば褒めるのが必要ならば角さんに任せればいいじゃんと思う。キャスティングはするんだけど、僕はそのプロになりたいとか、前に立って喋りたいとかいう気持ちがまったくないんですよ。多分独特感があるのはその辺にも理由があると思う。

 

前に出ないですよね。

 

松本興味がないんです。正しい道があって、そこに最短で到達できる道を探して設計する方が好きなんです。その道を一緒に走りたいわけでも、ゴールで待ってるねってわけでもない。それを俯瞰して、足りないものを足していきたいんです。

 

プロデューサーですよね。

 

松本ピラミッドをつくりたくないんです。「始動アルムナイ」と言っているのも、アルムナイのキーマンは僕じゃなくて角さんであり、講師であり、もっというと受講生であってほしいんです。

 

インフラですよね。道をつかって、誰がどれだけ車を走らせてもいいですし、旅行者が使おうが軍隊が使おうが、それはもう道なんだからOKということですよね。

 

松本もしかしたら空港かもしれないな。管制室にいて機長は角さんがいいねって決めて、どこへ行くかはみんなが決めるし、最後に到達する都市もバラバラだけど、スマホ時代なのでみんな繋がっているじゃん、と。情報で繋がっている仲間に入るつもりはないけど、パケットは見ているからねっていう話。

 

インフラだ! リコメンド機能がついた通信インフラ(笑)。

 

松本というのが始動の根底に流れている。だからWiL主催で1回ぐらいやればいいじゃないですかってよく言われるんですけど、やったことないんですよ。

 

前編はコチラ

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