トップ > 対談 > 新産業共創スタジオ『SUNDRED』ローンチ半年の進化。「Industry-Up Day 2020 Spring」へ向けて

対談

新産業共創スタジオ『SUNDRED』ローンチ半年の進化。「Industry-Up Day 2020 Spring」へ向けて

元レノボ・ジャパンの代表取締役の留目真伸氏が立ち上げた新産業共創スタジオSUNDRED。

フィラメントCEO角もパートナーとして参画するSUNDREDは、2019年7月の設立から約半年が経ち、2020年2月12日に『Industry-Up Day 2020 Spring』と題したカンファレンスを開催します。

 

Industry-Up Dayは「社会善・共通善」に基づいた新たなオープンイノベーション型価値創造、新産業・新規事業の開発、組織開発/人材育成に携わるビジネスパーソンのためのプロジェクトローンチ&ネットワーキングイベントです。

開催に先立ち、SUNDRED代表取締役パートナー留目真伸氏とフィラメントCEO角の対談で立ち上げからの軌跡を振り返りました。(文:伊藤紗恵)

 

SUNDRED立ち上げ時の対談記事はこちら

『新産業共創スタジオ』とは? 元レノボ・ジャパン社長 SUNDRED CEO 留目真伸氏と緊急対談前編後編

プロフィール

留目真伸(とどめ・まさのぶ)

留目真伸(とどめ・まさのぶ)

レノボ・ジャパン、NECパーソナルコンピュータ 元代表取締役社長、資生堂 元チーフストラテジーオフィサー。総合商社、戦略コンサルティング、外資系IT、日系製造業にて要職を歴任。HIZZLEにて「経営者の育成」「未来型企業へのトランスフォーメーション支援」に取り組む。「100個の新産業の共創」を目指し2019年7月よりSUNDREDの代表に就任し、「新産業共創スタジオ」を始動。2019年8月VAIOのチーフイノベーションオフィサーに就任。

角勝(すみ・まさる)

角勝(すみ・まさる)

株式会社フィラメント 代表取締役CEO

1995年~2015年、大阪市役所に勤務し、「大阪イノベーションハブ」の立上げと企画運営を担当。2015年、大阪市を退職し、フィラメントを設立した。多くの企業で新規事業開発プログラムの構築・実行支援や独自設計したワークショップとコミュニティマネジメント手法を用いた人材開発・組織開発を手掛ける。2016年には企業アライアンス型オープンイノベーション拠点「The DECK」の立上げにも参画し、他のコワーキング・コラボレーションスペースのコンセプトメイキングや活性化にもアドバイザリーを提供している。

 

キラーアプリケーション「ネクステート」をトリガー事業とした遠隔医療のエコシステム

陸上養殖のプラットフォームを同種のアプリケーション事業へ展開

新産業創りは目的とチームを探しながら進む「クエスト」

『Industry-Up Day 2020 Spring』の見どころ

 

:SUNDREDを立ち上げられたのは去年の夏ぐらいでしたよね。

 

留目:2019年7月1日ですね。

 

:今日は立ち上げから約半年の間で実現できたこと、これからやっていくことの2つの軸でお話を伺えたらと思います。

 

留目:はい。SUNDREDでは、社名にも由来しますが「100(Hundred)個の産業(太陽 Sun)を生み出す」という目標を掲げています。

まずは最初の1年で7つ産業のトリガー事業の部分の立ち上げをしたいというお話をしていましたが、おかげさまで現在10個程度のプロジェクトが動いています。

 

【SUNDREDが新産業を生み出す仕組み】

新産業共創スタジオ (Industry-up Studio)* では、新産業テーマの設定、エコシステムのデザイン、プロトタイピングから事業体設立、アクセラレーションのプロセス全体を最適な形でサポートし、新産業創出を実践。

「産業」をエコシステム全体ととらえ、核となるトリガー事業を設定し、プラットフォーム型事業とアプリケーション型事業を組み合わせて、エコシステムを創り上げていく。

 

:10個!すごいですね。8月のイベントで司会をさせていただいた際も感じたんですが、SUNDREDという舟に対する期待がものすごく高いと感じました。時代が求めていたようなプログラムだったんだなと。

具体的にうまくいっている事例をいくつかご紹介いただけますか。

 

キラーアプリケーション「ネクステート」をトリガー事業とした遠隔医療のエコシステム

留目:シェアメディカルというスタートアップが開発したデジタル聴診デバイス「ネクステート」という製品をキラーアプリケーションとしたプロジェクトがあります。ネクステートは、既存の聴診器の先端に取り付けて使うデバイスで、元々は「医師を耳の痛みから解放する」「聴力が減退しても変わらずに聴診を行えるようにする」ことと「デジタル化して録音可能にする」というシンプルなところから始まりました。

 

:医療現場のデジタル化への注目は高いと思うのですが、ネクステートの素晴らしいところは、医師が既に使っているものをなんら変える必要がないところですよね。医療機器でもないから制約も少なく価格も抑えられるし、いいところに目をつけたなと思いました。そこからデータを取って、AIを活用してというところへ繋げていくことをなんで気づかなかったんだろうという感じですよね。

 

留目:そこはもう本当に期待通りでした。ただ、実は今はデータよりもその一歩手前の段階で、遠隔医療のエコシステムとして注目され、最近はNHKや多くのメディアでも取り上げられています。(https://www.businessinsider.jp/post-206098

 

:なるほど。日本でも医師不足は大きな問題ですよね。離島や無医村も増えていると聞きます。

 

留目:そうなんです。そこに刺さりました。AIでの分析まで行かなくても、そもそも遠隔で聴診ができるということがとても画期的でした。医師がいかなくても看護師さんが患者の元へ行くことで、医師と繋がって聴診ができるというのが凄く大きなメリットですよね。

いままでは血圧・体温とウェブ会議システムで会話というのが基本的な遠隔診療だったのですが、そこに聴診を加えることが画期的でした。

 

:日本だけでなく、アメリカなど国土が広い国では、より一層日常的に求められていそうですね。

 

留目:はい。当初そこまで想定してなかったのですが、遠隔医療のニーズはとてもユニバーサルで、先進国ではヨーロッパ方面からの問い合わせも多いですし、もちろん新興国にも必要です。これはすごいチャンスで、新世代の診療に必須の医療機器になっていくのではないかと思っています。

 

:ネクステートの例を筆頭に、アプリケーション事業を使って高速でエコシステムづくりをしていくという形が見えてきていますね。

 

留目:やはりキラーアプリケーションの種がいいと、様々なプラットフォームとの接続の可能性が出てきて思った以上に広がっていくのが早いという実感があります。


 

陸上養殖のプラットフォームを同種のアプリケーション事業へ展開

:他の事例も伺えますか?

 

留目:SUNDREDの立ち上げ当初からやっている陸上養殖は非常にいい感じで進んでいます。年末に発表したのですが、宮崎大学発サクラマスの養殖ベンチャーのSmolt社とのプロジェクトが始まりました。ここではサクラマスの養殖と身とイクラの商品化を事業を展開しています。

元々、金子コードという会社の「チョウザメ養殖・キャビア事業」が世界でも高く評価され、日本での陸上養殖の素晴らしい成功例になってきている訳ですが、ここでのノウハウを集約しながら「陸上養殖6次化プラットフォーム」を整備し、陸上養殖新産業の育成を進めています。

 

:金子コードのやっている事業の中から、他の陸上養殖事業に活用すべき部分を集約して展開していくということですよね。

 

留目:はい。こちらはネクステートの時とは逆に、素晴らしいアプリケーション型の事業があっても産業化に必要なプラットフォームがないという例です。

陸上養殖という成長可能性の高い新産業テーマに対してプラットフォームとなる機能を提供し、新規参入や投資を活性化していくことを目指しています。

水質の管理やIoTなどのセンサー技術もそうですが、このプラットフォームで何より大事なのは、シェフやユーザーのフィードバックループを機能させて生産工程を改善していくというサイクルを生み出していくことです。今、それが機能し始めています。

 

:フィードバックループの改善がアジャイル開発的にプラットフォームの中で回っていくって感じですよね。新たにその事業を始めたいという方に対しても、例えばシェフのネットワークからフィードバックを受けられる仕組みや水質や餌の改善ノウハウの提供ができて、産業としての価値がどんどん高まっていく感じですね。

 

留目:そうですね。ありがちなのが陸上養殖をただの生産技術として捉えてしまい、データを活用できなかたり、エンドユーザーのフィードバックが受けられないなど、コストがかかるだけで陸上養殖が持つ本当のパワーを生かせなかったりします。

そもそも、陸上養殖にどんなポテンシャルがあるのか、金子コードの例のように世界を目指していけるものであるということを認識してもらうことも含めてそのプラットフォームの機能だと思っています。

 

:このプラットフォームを作っていく部分をSUNDREDがやることによって、陸上養殖事業の多くの会社がその恩恵にあずかれるような、そんな産業ができていくんじゃないかと思いました。その仮説が証明される第一歩目がようやくできたというのが今の状態ですね。

 

留目:ありがとうございます。10個のプロジェクトが進行している中で、トリガーとなる事業体の育て方としてのカーブアウト、スケールアウトや共創会からの事業体創出であったり、そもそもエコシステムの構成としてのプラットフォーム事業とアプリケーション事業の組み合わせなど、ある程度のレベルで理論的な仮説の検証はうまくいったかなと思っています。

一方で、なかなか難しいと思っていることもありまして、進捗が良いプロジェクトと悪いプロジェクトの差という部分は、これは純粋に人の話だったりします。

 

:なるほど。人ですね。

 

 

新産業創りは目的とチームを探しながら進む「クエスト」

留目:コアになる人の部分でどんな人が携われば、新産業のプロジェクトが上手く回っていくのか、というのはやってみないと分からないところではあったのですが、そこがある程度見えてきたので、現在は新産業プロジェクトを推進していく人の定義を発展させているところです。

 

私は、新産業を創っていくことをロールプレイングゲームの冒険に例えて、「クエスト」だと言っているのですが、そのコアになる勇者となる人の見つけ方、もっと言えばあぶり出し方、そして見つけた後の育て方が本当に肝になります。そこが上手くいっているものもあれば、もっと工夫しなきゃいけないところもあるという状況ですね。しかも一人で成し遂げられる旅ではないので、他の適切なパラメーターを持つメンバーでパーティーを作ってクエストにあたっていく必要があります。

 

:人が集ってくるのもクエストそのものですね。

 

留目:その中で一番大事なのはやはり勇者で、オーナーとなる勇者はビジョンをもって自分事としてこれを成し遂げたい、実現したい、と心から思ってそれに賭けられる人がでてこないといけないわけです。

 

:会社の最小単位は「人」だとよく言いますが、人は変動パラメーターの塊なので、その目利きというのが一番難しいと思います。一般的に大企業で優秀だとされている人がスタートアップの社長になってうまくいくのかは全く別の話だったりもしますし。

 

留目:実は、僕は会社こそ変動要素が多いなと思っています。会社は、基本的な既存のオペレーションに関しては当然クオリティーも安定してるし、誰に頼んでも大体同じようなアウトプットは出てくるのですが、新規ビジネスや新産業というものは同じ会社でも誰と話をするかによって、まったくやり方も考え方も全然違うじゃないですか。

 

特に大企業では、どこにこのクエストに対して燃えてくれる人がいるのか?どうあぶり出してきて仲間にしていくのか?最初は勇者じゃなくても、どうやって心に火を付けてだんだん勇者になっていくのか?その辺りが難しいところです。

 

:いい例えですね。クエストを事業に例えてみたら全くその通りだなと思いました。一つのチームの中に全くスキルの違う人たちがいるじゃないですか。そこに一つのミッションがあり、このクエストをクリアするという共通目標があるからカルチャーも言語も違う人で歩んでいける。

 

留目:その通りですよ。例えば最初は全然味方でも何でもない街の人たちと話をして、その人たちを「自分の仲間になりたそうにこっちを見ている」状態にしていくとか、それはやはり勇者の役割なんですよね。

 

そのなかで、SUNDREDは教会だと思ってるんです。例えばこういうクエストを始めませんか、このドラゴンを倒しに行く勇者いませんかと、呼びかけていく役割。

ただ、その目的は必ずしも最初の目的が本当の目的じゃない可能性ってあるんですよね。実はドラゴンはいいやつだったみたいな。で、本当に倒すべき人はこっちだったとか。

 

だから、結局その本質を見つける旅でもあるし、我々が中目的とか駆動目標と呼んでいる本当に実現すべき目的、を見つけながらそのクエストを攻略していくのが大事なんです。

 

:攻略への鍵は見えてきていますか?

 

留目:結局、何をしているかって「対話」なんですよね。プロジェクトには目的ありきの場合もあれば、何かしら課題のトリガーみたいなものから始まっているものもあるのですが、ワークショップや対話を通じて、本当にリアルなその駆動目標を下からでも上からでも創り上げていくという、これしかないと思ってます。

 

:その対話を続けていく中のクエストでチームができていくんですよね。自分はこんなことをしたいから勇者になりたい、あるいはこんな人がいるので紹介しますよみたいな。

 

留目:結局ロジックじゃなくて、対話なんですよね。

 

:対話って、心を擦り合わせて馴染せて同じ方向に向けていくためのプロセスですよね。

 

留目:そうですね。そうすることによってチームが出来上がっていきます。結局、探索ってそういうことなんですよね。新規事業って正直なところ、やってみないと分からないんですよ。その確度を高めて行くのがクエストチームじゃないかなと。 

『Industry-Up Day 2020 Spring』の見どころ

:まさに2月12日のカンファレンスでは、このあたりの話が聞けるわけですね。そして、やはり新たに仲間になってくれる人に来て欲しいという期待もあるのでしょうか。

 

留目:はい。まさにそれを目指していて、最終的なゴールはそのクエストをやりたい仲間を増やしていきたいというところにあります。ただ、それだけでなく、まずは今のSUNDRED/新産業共創スタジオをお伝えできる場になればいいと思っています。

 

そもそも最初の仮説としていた、新規事業はなかなかスケールさせられない、とかスタートアップがなかなか大きく育てられない、といった課題に対して、産業の文脈を作っていくことでスケールさせられるということがある程度見えてきているので、まずはそれをお伝えしたいです。

 

:新しいプロジェクト型の働き方という視点もありますよね。そこへの一歩の踏み出し方、といった個人に向けたメッセージにもなりますし、逆に企業側からしたら、既に動き出している個人がいるということを知ることもできますよね。

 

留目:企業は昔は戦士、つまり単純にバリバリ働いてくれる人を育てたかったんですよね。ところが今はそうではなくて、会社の外側で起こっている社会起点の課題に対して、目的を持った社内の勇者が会社のアセットを使って事業を創り上げていくことができ、結果として会社にもその利益を還元していくことに繋がる時代だと思います。

そういった目的意識を持つ人をどう会社の中で活用し、育成していくのかといったヒントが得られるのでないかなと思っています。

 

:ありがとうございます。大変期待に満ちた場になりそうですね。SUNDREDの2020年の飛躍をシンボリックに伝える場になるのではないでしょうか。

 

留目:はい。各セッションでも、ベンチャー企業だけなく中小企業発、大企業発というものなど、それぞれ違う生い立ちのものがありますので、色んなやり方、トリガーで産業創りが進んでいくというのを感じていただけたらと思います!

 

:楽しみにしています!今日はありがとうございました!

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

新着の対談をお届け