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【イベントレポート】わたし達の未来をつくる「アイデアソン・ハッカソン」東京 世の中を変える商品開発【視覚障害を持つ方編】〜後編

【イベントレポート】わたし達の未来をつくる「アイデアソン・ハッカソン」東京 世の中を変える商品開発【視覚障害を持つ方編】〜後編

2019年10月19日(土)と10月27日(日)、Yahoo! JAPANオープンコラボレーションスペース LODGE(東京都千代田区)で「わたし達の未来をつくる『アイデアソン・ハッカソン』東京 世の中を変える商品開発【視覚障害を持つ方編】」が開催されました(主催:NPO法人アイ・コラボレーション神戸、共催:NPO法人インクルーシブデザインネットワーク・フィラメント、協力:ペタビット株式会社)。このイベントが目指すことや参加した方々の声は、本レポートの前編で紹介しています。後編では各チームの成果をお届けします。(文:小山香織)

 


 

【目次】

■チームメンバーが抱える課題を解決するアイデアソン・ハッカソン

■発表された課題とソリューション

■製品化を目指したアウトプット

■あきらめずに共生社会をつくる

■今後の実用化に向けて

 

チームメンバーが抱える課題を解決するアイデアソン・ハッカソン

参加者は5チーム(2日目は6チーム)に分かれて2日間のイベントに臨みました。1日目がアイデアソン、2日目がハッカソンです。

約20名の参加者のうち1日目は視覚障害者が8名、2日目は9名と、障害当事者が多いイベントとなりました。各チームに1〜3名の当事者がいるメンバー構成となっています。

各チームの当事者の方が困っていることを、チームの課題として取り上げます。基本的に同じチームメンバーで、1日目のアイデアソンで検討したアイデアを踏まえて、2日目のハッカソンで実際にプロトタイプを作成したり提案内容として仕上げていきました。

 

 

発表された課題とソリューション

各チームの課題、ハッカソンで発表されたソリューション、受賞した賞を紹介します。

 

【最優秀賞】Aチーム

課題(提起した当事者:辻さん)

居酒屋や回転寿司などで導入されている注文用のタッチパネルは視覚障害者には使えない。あのデバイスを使えるようにしたい。

◆ソリューション:「タブレットの解放運動・メニューを我が手に」

既存の視覚障害者向け外食メニューサービスとセルフオーダーシステムを検討し、それらをもとにして、視覚障害者がテキスト読み上げ機能などを利用して注文できるようにするタブレット用システムの構想を披露しました。


【感動賞】Bチーム

課題(提起した当事者:酒谷さん)

周囲のどこに点字があるのかがわからない。また中途失明者は点字を読むのが得意ではない。どこに点字があるか、何が書いてあるかがわかる仕組みがほしい。

◆ソリューション:「点字スキャナー」

街なかにある点字画像を収集し、画像分析をしてアプリを作る構想です。SNSを通じて画像を収集し、クラウドの画像認識テクノロジーで分析した結果と今後のアプリ開発への道筋を発表しました。


【アイデア賞】Cチーム

課題(提起した当事者:植村さん)

足元の状況は白杖などである程度わかるし対策も進んでいるが、顔のあたりの高さの安全対策は二の次になっている。自分も止まっている車などにぶつかって額にけがをしたことがある。周囲の状況がわかるものがほしい。

◆ソリューション:「Let's Go Out! 〜Safe & Fun〜」

持ち込みやサンプルのさまざまなセンサー類を使って、前方にある胸から上程度の高さの障害物を検知し、ユーザーに知らせる試作品を作成しました。当事者の植村さんが実際に試作品を使い、挙動のデモンストレーションを行いました。

CチームとFチーム


【ビジネス賞】Dチーム

課題(提起した当事者:立川さん、川口さん)

立川さんは動く光を見るのが苦手、川口さんは視野障害と、タイプの異なるロービジョンの2人がチームにいることから、さまざまな問題点を話し合いながら今回取り組む課題を絞り込んでいった。

◆ソリューション:「飲料自動販売機に関する提案」

多くの課題とアイデアが話し合われた中から、どこに飲料自販機があるか、何が売られているか、どのボタンで買えばいいのかわからないという課題に着目し、これらを解決するアプリを提案しました。


【優秀賞】Eチーム

課題(提起した当事者:丹藤さん)

カラオケが好きだが、画面に出る歌詞が見えなくて困るし、選曲も難しい。いつでも自由にカラオケに行って歌いたい。

◆ソリューション:「Enjoy! KARAOKE」

歌いたい曲を事前に選んでプレイリストを作成したり、歌詞の読み上げなどをサポートするスマートフォンアプリのプロトタイプを制作しました。このプロトタイプをデモする丹藤さんの熱唱はお見事でした!


【アイデア賞】Fチーム

課題

2日目のみに参加したエンジニアのチームでチーム内に当事者はいないが、Aチームの課題をベースに居酒屋などで注文しやすいシステムを作った。

◆ソリューション:「Kamiからの注文」

印刷物のメニューを画像認識で読み上げや注文がしやすい形式に成形し、注文を決めたらプリンタから出力して店員に渡すだけというプロトタイプを作成しました。店側にとっても注文を取る負荷が減る方法なので、チェーン店などに働きかけたいとのことでした。

CチームとFチーム

 

製品化を目指したアウトプット

多くのグループが、今回提案するソリューションは視覚障害者だけでなく視覚以外の障害・高齢者・子ども・日本語のわからない人などにも有用であると考察していました。また、サービスを提供する企業にとっても、売上増が見込める、オペレーションの手間が省けるなどの指摘もありました。そして実装には社会全体、あるいはサービスや製品を提供する企業の協力が不可欠であるとの課題も挙げられました。

これらはすべて製品化、事業化を念頭に置いているからこその考察であり、今後10か月、さらにその先を目指すアイデアソン・ハッカソンならではのアウトプットといえるでしょう。

審査員とオブザーバーの方々からも、各チームの提案について「さらにこのような機能も追加してほしい」「高齢者はスマホアプリを使いこなせるか?」など、製品化を前提とした助言や指摘がありました。

審査員とオブザーバーの方々
左から 筑波技術大学名誉教授 須田裕之さん(審査員)、同志社大学大学院 関根千佳さん(審査委員長)、UDNJ(Universal Design Network Japan)総務担当 武者圭さん(審査員)、視覚障害リハビリテーション協会前会長 吉野由美子さん(オブザーバー)

 

あきらめずに共生社会をつくる

審査員の方々からは、

「当事者がエンジニアと出会う場は本当に重要です。ものをつくっていくのがどれほど面白いことか。当事者ほど積極的に参画してほしい」(関根さん)、

「どのチームも発想がとても面白かった。事業、サービスにつなげてください」(武者さん)、

「当事者が社会にどんどん出ていって共生社会を作りましょう」(須田さん)、

と今回のイベントの成果を高く評価し、今後の継続的な取り組みに期待する講評がありました。

そして、自身もロービジョンであり車椅子使用者であるオブザーバーの吉野さんからは、このようなコメントがありました。

「私も当事者です。自分は挑戦的なタイプだと思っていましたが、皆さんの発表を聞いて実はあきらめていたことが多かったと気づきました。こんなことを本当に考えているの?と思うような課題を真剣にぶつけて、プログラムに入れているのは素晴らしい。仕方ないと思わないこと、リハビリの専門家として生きる意欲を持ち続けることに、改めて思い至りました。障害者だからとあきらめていたけれど、それを捨てなくてはいけないと思いました」

 

 

今後の実用化に向けて

前編で紹介したように、このアイデアソン・ハッカソンはこの2日間のイベントがゴールではありません。障害当事者が中心となり参加メンバーとともに、今後の進捗報告、最終報告に向けて10か月かけて製品開発を進めていきます。製品化に携わる企業との橋渡しやクラウドファンディングなどは、アイ・コラボレーション神戸が中心となって支援します。

視覚障害者、そしてたくさんの方の生活が豊かになる製品の実用化と、障害者が製品開発に参加する取り組みの広がりが楽しみです!

 

前編はコチラ

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