フィラメント公式YouTubeチャンネルでは毎週水曜日に『新規事業お悩み相談室』を配信しています。この番組では、実際に新規事業に携わっている方々からお寄せいただいた質問やお悩みに、数々の新規事業の現場を見てきたスペシャリスト村上臣さん、グローバルなスタートアップ投資家として有名なリブライトパートナーズの蛯原健さん、そしてフィラメントCEOの角勝が相談員として回答しています。

本記事では、動画で配信している『新規事業お悩み相談室』を1分で読めるダイジェスト版としてお届けします。

今回いただいた相談は「新規事業とワークライフバランス」です。

質問者:
エンタメ業界Eさん

相談の背景や理由:
仕事全般においてもワークライフバランスの兼ね合いは難しいかと思いますが、新規事業業務を担当しているとさらに難しいなと感じます。裁量労働制だからこそいいものが生まれる部分もあるとは思うのですが、私生活(主に家族との時間捻出や睡眠時間)に影響が出てしまいます。新規事業はこういうものだと割り切ってしまう方が気が楽になるでしょうか?

角:本日のご相談はエンタメ業界Eさんから「新規事業とワークライフバランスについて」です。スタートアップとかでもね、全然時間がなかったりとかしますもんね。ずっと仕事のことばっかり考えてるみたいになりがちで。まずは普段から睡眠時間を大事にされてる村上さんからお伺いしてみましょうか。

村上:そうなんですよ。僕はすごく寝るんですよね。で、基本的に土日も含めてルーチンを変えないんですよ。基本的には11時〜11時半ぐらいに寝て、6時半〜7時ぐらいまでに起きるっていうのがルーチンです。基本的に7時間は寝たいので、徹夜は嫌いだし、とにかくなるべく寝たい。7時間を切ると途端にパフォーマンスが悪くなるんですよね。

なので、重要なのは、自分がどのタイプなのかっていうのをわかっていることです。僕はあんまりライフとワークのバランスについて考えたことがないんですよね。ワークとライフのどちらかという切れ目ってないなと思っていて、僕はワークライフインテグレーションみたいな言い方をしています。どちらも混ざり合っていて、仕事も含め、自分が楽しいことに繋がる仕事をしてる方が幸せだよねと思ってます。

で、質問に直接お答えすると、まず、何を絶対にやらなくちゃいけないのかっていうのを先に確保した方がいいです。僕の場合は、まず睡眠。あとは、家庭でやらなくてはいけない家事とかその他のいろいろなタスク。こういった時間はルーチンとしてこの時間って決めています。

角:なるほど。 

村上:時間をどう使うか考えるとき、仕事から考えて、溢れた部分を家庭やプライベートに使おうとすると、たいていうまくいかないんですよね。なぜなら、仕事は無限にできてしまうからです。ですから、逆にした方がいい。まず「ここは絶対に譲れない」というプライベートの時間を確保し、残った枠の中でどう仕事をするかと考えるべきです。足りないと感じる時間は、自分の効率を上げるとか、人に任せるといった様々な工夫によって、この枠内でどう生産性を上げるか、と考え方を変えた方がいいと思います。

角:うんうん。体壊しちゃいますからね。ここは絶対確保した方がいいというところから確保していくというのは、すごく大事な視点だなと思いましたね。

村上:大体ね、寝れば解決しますから。寝れば大丈夫です。

蛯原:最近のビジネスパーソンはなんかロングスリーパー全盛って感じですよね。ビルゲイツもみんなそうですよね。だから私は、村上さんが「ロングスリーパーです」って言うから、8〜9時間と言うのかなと思ったら、7時間だったからそんなロングでもないなって思いました(笑)。

角:ちなみに蛯原さんの睡眠時間はどれくらいですか?

蛯原:私も基本7時間くらいですね。

角:僕も7時間だな。蛯原さんからもコメントいただいていいですか?

蛯原: ワークライフバランスというのは、起業家やスタートアップの界隈では本当によく議論されるテーマです。日本だけでなくシンガポールやインドのエコシステムでも、Twitterなどで「ワークライフバランスなんて言っている起業家はダメだ」というツイートが炎上するなど、健全に議論されています。これが示しているように、私は「答えはなくて、十人十色」なんだと思っています。

この議論になるとよく出てくる言葉が「ワークライフブレンドだ」というものですが、私はどちらかというとこのブレンド派ですね。というか、気づいたらそんな感じなんです。たとえば、さっき子どもを少年野球に見送りに行っていたのですが、その間もメールチェックしたり、インドのメンバーとWhatsAppでやり取りしたりと、オンオフの切り替えをあまり意識したことがありません。土日もずっとPCの前にいるパパだ、なんて子どもにも言われます。これは特におすすめするわけではなく、単なる私のタイプなんです。ただ一つ言えるのは、「我慢は続きません」ということです。これは個人も組織も同じで、組織的にも無理をさせていると、それはインセンティブに見合わないので、無理をしてもひずみが生じるだけです。だから、結局はタイプによるんじゃないでしょうか。

ご質問の最後に「もう割り切ってしまった方が楽になりますか?」とありますが、これは我慢しているということなんじゃないかと思います。我慢は続かないので、アジャストした方がいいのかもしれないですね。村上さんがおっしゃったように、譲れないタスクと睡眠時間を確保したり、チームで協力して「何曜日と何曜日は頑張るんで、他の曜日の時は君が頑張ってね」みたいな割り振りをしたり、そういうことなんじゃないでしょうか。家族内でもそうですよね。パパはここ、ママはここ、という割り振りをやるしかないんじゃないかなと思います。

角:そうですよね。結局、特効薬みたいな「こうしたらうまくいく」という方法はない話だと思いますよね。

蛯原:そうですね。なんか、正解があるみたいな前提で議論されるんですけど、私はそんなことはなくて、人とか組織によるし、あと組織のフェーズにもよりますよね。

角:個人の成長具合とか、仕事とのフィットの具合みたいなところもあるなと思いますね。僕は前職が公務員だったんですが、就職したての頃は、自分の時間を切り売りするのが仕事なんだと思っていたんです。そういう認識だと、ワークとライフが常にせめぎ合うという観点で仕事を見てしまうんですよね。でも、今ここにいる私たちは、みんなそれなりに自分の好きな仕事や、面白いと思ってやっている仕事をしていると思うんです。そうなると、自分の時間を切り売りするのが仕事だ、という感覚ではなくなってくるんですよ。

だから、ちょっとした隙間時間が空いたら、仕事のメールをチェックしたり、資料を見たりすることが、別に嫌なことではなくて普通のことだと体に馴染んでくる。これがワークライフブレンドだと思うんです。切り売りするんじゃなくって、時間の中に自然と馴染んできて、違和感がなくなる状態。まずそういう状態になれたら良いと思うんですが、質問者さんは多分そうじゃないのかなというところですよね。だとすると、やっぱり生活が大事ですから、生活のために必要な要素の時間を最初に確保した上で、「仕事のどこが面白いのか」を見つける意識を持たれると楽になったりするのかなと思いました。たとえば、新規事業の「ここがやっぱり面白いよね」という部分を見つけていくと、だんだんワークライフブレンド的な雰囲気になってくるのかもしれないなと思いました。ということで、エンタメ業界Eさん、参考にしていただければと思います。

1,「譲れない時間」を明確にし、生活のリズムを基盤に働き方を設計する:
・睡眠や家庭など、自分にとって欠かせない時間を最初に確保する
・必要な時間を除いた上で仕事をどう配置するかを考えることで、無理のない働き方を考える
・時間の使い方を「削る」のではなく「整える」

今回ご紹介した内容は、以下のリンクから動画で視聴できます。