社内ビジネスコンテスト、いわゆる「社内ビジコン」や新規事業提案制度は、多くの企業で新規事業創出や人材育成の手段として実施されています。一方、制度を継続する中で、応募者の確保、アイデアの質、事業化、既存事業部門との連携など、さまざまな課題も生まれています。
株式会社フィラメントは、2026年6月10日に開催した「BIZCON AWARDS 2026」の来場者を対象にアンケートを実施しました。本ページでは、回答者66名・所属45社のうち、社内ビジコンの開催実績がある40社のデータをもとに、制度の目的、対象範囲、事務局体制、成熟度ごとの課題を整理します。
社内ビジコンの課題は、開催回数とともに変化します。開催1〜2回の黎明期では、エントリー数や応募者の熱量、アイデアの質といった「入口」の課題が中心です。開催5回以上の成熟期になると、事業化、事業規模の拡大、既存事業部門との連携といった「出口」の課題へ重心が移ります。
また、同じ社内ビジコンでも、制度の主目的、社員の職種構成、対象範囲によって課題の現れ方は異なります。社内ビジコンの制度設計や運営改善では、他社の成功事例をそのまま取り入れるのではなく、自社の成熟度や組織構造に合った方法を選ぶことが重要です。
数字で見る社内ビジコン実態調査2026

40社の調査から見えた、社内ビジコンの3つの現在地
結論1 課題は「入口」から「出口」へ移る
社内ビジコンの課題は、制度の成熟度によって変化します。
開催1〜2回の黎明期では、エントリー数の確保、応募者の熱量維持、アイデアの質など、「人を集め、挑戦を継続してもらうこと」が中心的な課題になります。
開催3〜4回の定着期では、エントリー数の確保に加えて、採択されたアイデアを事業に移す「事業化」が課題として現れます。
開催5回以上の成熟期では、事業化だけでなく、事業規模の拡大や既存事業部門との連携など、「生まれた事業を育て、社内に接続すること」へ課題の重心が移ります。
結論2 制度の目的が違えば、課題も変わる
新規事業創出を主目的とする企業と、人材育成を主目的とする企業では、直面している課題が異なります。
新規事業創出を主目的とする29社では、「事業化」が62%で最も多い課題となりました。一方、人材育成を主目的とする8社では、「エントリー数の確保」が75%、「アイデアの質向上」が62%となり、事業化を課題に挙げた企業は38%でした。
制度の目的が曖昧なままでは、何を成果とし、どこを改善すべきかも曖昧になります。応募数、育成人数、事業化件数などの指標を設定する前に、制度の主目的を明確にする必要があります。
結論3 参考にすべき企業は、同業他社とは限らない
社内ビジコンの課題は、業種だけでなく、社員の職種構成や事業構造によっても変わります。
技術職中心の企業ではエントリー数の確保、営業・販売職中心の企業では事業化、製造・生産職中心の企業ではアイデアの質向上が、それぞれ主要な課題として挙がりました。
そのため、他社事例を探す際には「同じ業界か」だけでなく、「技術者中心か」「顧客接点を持つ社員が多いか」「受託型か」「グループ横断で運営しているか」など、自社と似た組織構造を持っているかを見る必要があります。
社内ビジコンの制度設計・運営に関する9つの疑問
社内ビジコンの主な目的は何ですか?
社内ビジコンの主目的として最も多かったのは「新規事業創出」です。開催実績のある40社のうち29社が、新規事業創出を最も重視する目的として挙げました。
人材育成や組織風土の醸成も重要な目的ですが、今回の調査では、新規事業創出を補完する目的として位置づけられている企業が多いことが分かりました。
社内ビジコンを設計する際には、複数の目的を並列に置くのではなく、最も優先する目的と、副次的に期待する効果を分けて整理することが重要です。
社内ビジコンの事務局は何人で運営されていますか?
調査対象40社では、「2〜3名」で運営している企業が19社と最も多く、次いで「4〜5名」が13社、「6〜10名」が6社でした。1名で運営している企業も1社あり、少人数体制が基本となっています。
また、社内ビジコンの運営に直接関与する担当者64名のうち、59名が運営経験5年未満でした。多くの企業では、少人数かつ経験の浅い担当者が事務局運営を担っています。
制度が成熟すると事務局体制も拡大する傾向があり、開催5回以上の企業では、4〜5名または6〜10名で運営する割合が高くなっています。
社内ビジコンでは、どのような運営課題が生まれますか?
社内ビジコンに共通する単一の課題があるわけではありません。主な課題としては、次のようなものがあります。
- エントリー数の確保
- 応募者の熱量維持
- アイデアの質向上
- 事業化
- 事業規模の拡大
- 経営層の巻き込み
- 既存事業部門との連携
どの課題が強く現れるかは、制度の開催回数、主目的、社員属性、対象範囲によって異なります。そのため、自社の課題を把握する際には、単純な他社平均ではなく、自社と近い条件の企業と比較する必要があります。
社内ビジコンの課題は、開催回数によってどう変わりますか?
開催1〜2回では、エントリー数、応募者の熱量、アイデアの質など、制度への参加を促す「入口」の課題が中心です。
開催3〜4回になると、応募を集める課題に加えて、採択案件を実際の事業へ移行する「事業化」が課題として現れます。
開催5回以上では、事業化、事業規模の拡大、既存事業部門との連携など、「出口」の課題が中心になります。
制度を継続しても課題がなくなるわけではありません。制度の成熟に伴って、解決すべき課題の種類が変化していきます。
新規事業創出型と人材育成型では、何が違いますか?
新規事業創出型では、提案を実際の事業へ移す「事業化」が最大の課題です。新規事業創出を主目的とする29社のうち、18社、62%が事業化を課題として挙げました。
人材育成型では、参加機会を広げることや、提案の質を高めることが課題になります。人材育成を主目的とする8社では、エントリー数の確保が75%、アイデアの質向上が62%でした。
制度の主目的によって、応募者支援、審査基準、KPI、採択後の支援内容を変える必要があります。
技術職中心の企業では、なぜ応募者の確保が課題になるのでしょうか?
技術職中心の企業15社では、10社、67%が「エントリー数の確保」を課題として挙げました。
背景としては、新規事業提案の担い手が一部の技術者に偏ることや、顧客課題や市場機会に接する社員が限られることなどが考えられます。
ただし、これは調査結果から導かれる仮説であり、今回の調査によって原因が直接証明されたものではありません。各社の組織構造や応募条件、通常業務との両立状況を個別に確認する必要があります。
グループ横断型の社内ビジコンでは、どのような課題が生まれますか?
グループ会社を含めて制度を運営する企業では、既存事業部門との連携が課題になりやすい傾向があります。
グループ会社を含む17社では、「事業部との連携」を課題に挙げた企業が47%でした。自社単体で運営する13社では23%であり、対象範囲を広げるほど、組織間の調整や採択後の受け入れ体制が課題として現れています。
グループ横断型の制度では、募集や審査だけでなく、採択後にどの法人・事業部門が案件を受け入れるのか、意思決定や予算をどこが担うのかまで設計する必要があります。
社内ビジコンで参考にすべき他社事例は、どう選べばよいですか?
同業他社だけでなく、自社と似た社員属性や事業構造を持つ企業を参考にすることが重要です。
例えば、受託SI企業とエンジニアリング企業は異なる業種ですが、技術者中心、顧客接点が限定的、プロジェクト型収益という共通点があります。一方、同じIT業界でも、営業主体のSaaS企業と技術者主体の受託SI企業では、社内ビジコンの課題が異なる可能性があります。
他社事例を探す際には、次の条件を比較することが有効です。
- 制度の開催回数
- 制度の主目的
- 社員の職種構成
- 自社単体かグループ横断か
- 既存事業のビジネスモデル
- 顧客接点を持つ社員の範囲
- 事務局の人数と経験年数
社内ビジコンを事業化につなげるには、何が必要ですか?
今回の調査では、事業化に成功する企業の条件や、特定の支援施策の効果を直接検証しているわけではありません。
一方、制度が成熟するほど、課題が応募者の確保から、事業化、事業規模の拡大、既存事業部門との連携へ移ることが分かりました。また、成熟期では事務局の人数も増える傾向があります。
この結果からは、事業化を進める段階では、応募促進や研修だけでなく、次のような論点を見直す必要があると考えられます。
- 採択後の検証予算と活動時間
- 事業責任者と意思決定者の設定
- 既存事業部門との接続
- 経営層による継続判断
- 事業化後の受け入れ部門
- 事務局の役割と運営体制
- 応募時とは異なる事業化審査の設定
これらは今回の調査から導かれる実務上の示唆であり、具体的な成功要因については、今後の継続調査や個別事例の分析が必要です。
制度の成熟度別・企業数

分析対象40社の内訳は、開催1〜2回の「黎明期」が10社、開催3〜4回の「定着期」が12社、開催5回以上の「成熟期」が18社でした。本調査では、この3区分を用いて、制度の課題や事務局体制の変化を分析しています。
社内ビジコンの目的

社内ビジコンで重視される目的は「新規事業創出」が最も多く、40社中29社が第1位に挙げました。人材育成と組織風土醸成も重視されていますが、主目的としては新規事業創出が明確に位置づけられています。
事務局人数

事務局人数は「2〜3名」が19社で最も多く、「4〜5名」が13社、「6〜10名」が6社、「1名」が1社、「その他」が1社でした。制度が成熟するほど事務局体制が拡大する傾向が見られます。
成熟度別の課題

黎明期ではエントリー数、応募者の熱量、アイデアの質が中心的な課題です。定着期ではエントリー数と事業化が並び、成熟期では事業化、事業規模の拡大、既存事業部門との連携へ課題が移ります。
目的別の課題

新規事業創出型では事業化が62%で最大の課題でした。人材育成型ではエントリー数の確保が75%、アイデアの質向上が62%となり、制度の目的によって改善すべきポイントが異なります。
社員属性別の課題

営業・販売職中心の企業では事業化、技術職中心の企業ではエントリー数の確保、製造・生産職中心の企業ではアイデアの質向上に課題が寄る傾向が見られました。
対象範囲別の課題

グループ会社を含めて実施する企業では、既存事業部門との連携を課題に挙げる割合が47%となりました。自社単体で運営する企業の23%に比べて高く、制度の対象範囲を広げるほど組織間連携が重要になります。
調査概要
| 項目 | 掲載内容 |
| 調査名 | BIZCON AWARDS 2026 参加者アンケート |
| 調査主体 | 株式会社フィラメント |
| 調査・分析 | ビジコンAWARDS事務局(株式会社フィラメント) |
| 調査日 | 2026年6月10日 |
| 調査対象 | BIZCON AWARDS 2026来場者 |
| 回答者の属性 | 社内ビジコンの事務局担当者、または制度の導入を準備・検討中の企業担当者 |
| 調査方法 | 会場での任意回答によるアンケート |
| 回答数 | 66名 |
| 回答者の所属企業数 | 45社 |
| 当日の参加者数 | 158名 |
| 回答率 | 41.8% |
| 制度実態の分析対象 | 開催実績のある制度保有企業40社 |
| 分析対象の内訳 | 現在実施中37社、過去に開催実績があり現在は休止・準備中の3社 |
| 担当者経験年数の集計対象 | 社内ビジコン運営に直接関与する64名 |
| 集計方法 | 同一企業から複数回答があった場合、制度設計・運営体制に関する回答を企業単位に集約 |
調査結果を見る際の注意事項
本調査は、BIZCON AWARDS 2026の来場者を対象とした任意回答による調査です。回答者は全員、社内ビジコンの運営または導入に関わる当事者ですが、当事者の中でも社内ビジコンへの関心が比較的高い層に偏っている可能性があります。
また、制度の成熟度、主目的、社員属性、対象範囲ごとのクロス集計では、各区分の対象企業数が数社から数十社規模になります。そのため、調査結果は国内企業全体を代表する統計ではなく、参加企業に見られた傾向としてご覧ください。
本調査では、相関関係や傾向を整理していますが、特定の制度設計や施策が課題の原因であること、または課題解決に直接的な効果を持つことを証明するものではありません。
本調査における「黎明期」「定着期」「成熟期」は、実施回数による分析上の区分(黎明期1〜2回/定着期3〜4回/成熟期5回以上)であり、各社の制度成熟度を判定するものではありません。 本調査の「事業化」は、アンケートの課題項目として回答されたものです。PoCへの移行、予算確保、事業部門への移管、売上創出など、具体的な到達基準は企業によって異なる場合があります。
社内ビジコンは「他社の型を導入する段階」から「自社に合わせて設計する段階」へ
今回の調査では、社内ビジコンの主目的は新規事業創出で共通している一方、制度の対象範囲、求める提案、運営体制、直面する課題は企業ごとに大きく異なることが分かりました。
特に重要なのは、制度が成熟するにつれて、課題がエントリー数や応募者の熱量といった「入口」から、事業化、事業規模の拡大、既存事業部門との連携といった「出口」へ移ることです。
社内ビジコンを継続的に改善するためには、他社の制度をそのまま模倣するのではなく、自社がどの成熟段階にあり、何を目的とし、どのような社員や事業構造を持っているかを整理する必要があります。
株式会社フィラメントでは、今後も社内ビジコン事務局の実践知を継続的に収集・整理し、各社の制度設計や運営改善に還元していきます。 なお、初年度の準備から募集テーマ、応募者支援、審査、KPIの考え方までの具体的な設計手順は、「社内ビジコン設計ガイド」で解説しています。
社内ビジコン実態調査2026をPDFで読む
BIZCON AWARDS 2026の開催概要、参加企業40社の制度設計・運営体制、成熟度や目的別に見た課題を、全18ページのレポートにまとめています。
出典:株式会社フィラメント「社内ビジコン実態調査2026」
