スペシャリスト村上臣さん、グローバルなスタートアップ投資家として有名なリブライトパートナーズの蛯原健さん、そしてフィラメントCEOの角勝が相談員として回答しています。
本記事では、動画で配信している『新規事業お悩み相談室』を1分で読めるダイジェスト版としてお届けします。
今回いただいた相談は「BtoBからBtoBtoCへ。現場経験の必要性、社員の納得感をどう高める?」です。
質問者:
SIer業界Cさん
相談の背景や理由:
これまでBtoBのサーバサイド領域を主軸としてきたSIerですが、新規事業としてBtoBtoC向けの在庫管理商材を開発しています。社内でこの新規事業を進めるにあたり、社員の知識や感覚の不足を補うため、現場経験を積ませるために半年単位での出向や派遣の仕組みを検討しています。しかし、一部のメンバーから「店頭や倉庫に立つために入社したわけではない」と強い拒否反応があり、狙い通りに機能していません。現場経験の意義を伝え、全員が前向きに取り組めるようなアプローチはあるでしょうか?動機づけや納得感を高める工夫を模索しています。
角:本日の相談員は村上さん、田中さん、そして角でお送りいたします。今回のご相談はSIer業界のCさんから、「BtoBからBtoBtoCへ。現場経験の必要性、社員の納得感をどう高める」についてです。
人の気持ちについての悩みっていうのはなかなか奥深いですからね。まずは田中さんからいかがでしょうか?
田中:まず、実際にメンバーの方とかに向けて「こういう理由で店頭倉庫に行って欲しいんです。こういうことを学んで帰ってきてほしいんです」という説明は当然されていると思うんですが、それに対して強い反発や拒否反応があるってことは、あんまり納得感がないんじゃないかなと私は思いました。私も、ご相談内容を見た時に「半年って長くない?」って思ったんですよね。
角:たしかに半年単位での出向は長いですね。
田中:もちろん半年間ずっと倉庫の現場で作業するとか、店頭で接客をするわけではないのかもしれないんですけど。いずれにしても、長期間の体験を通して学びを得るよりも手っ取り早くて簡単なのは、どういう業務をやっているかについて1時間ぐらい概要説明を受けることだと思うんですよね。ただ、それだけではわからない現場の空気感であったり、実際に業務をやってみて「実はここ悩みがあるんだ」と気づくことはできないので、それは1日一緒に作業したり、現場の方の業務を1つ1つ見ていくみたいなことが必要になってきます。その次の段階は結構難しくて、1週間ぐらいその現場にいるとか、棚卸しの瞬間みたいなたまにあるイベントの現場をちゃんと見るといったところだと思うんですよね。
と考えたときに、Cさんには「半年間現場に行ってもらうことで何を持ち帰ってきてもらいたいのか」というのをもう1度考えていただきたい。そして、それを持ち帰ってもらうためには、本当に半年間必要なのかという部分を考えてもらえると良いのかなと考えました。
角: 半年はかなり長いんだろうなっていう気はしますね。もしかすると、業務内容的をすべて見るには半年必要という仕組みしかないのかもしれないですが、及び腰になっちゃう気持ちはわかります。なので別のアプローチもないかなというところですよね。村上さんはいかがでしょうか?
村上: 割と相談内容の細部がふわっとしてるなというのが第一印象です。なんで半年かという部分は田中さんが言ってくれたとおりなんですけど、「社員の知識や感覚の不足」というのがすごくふわっとしてると感じました。
要するに、toCの基本的なプロセスってtoBとあまり変わらないはずなんですよね。もちろん、ユーザーインターフェースを作るのは初めてなのかもしれないですけども、基本的には対話から要件を切り出してやっていくことなので、そこまで離れた業務じゃないですよね。感覚不足っていうのは、お客さんがそういう発注に慣れてないとか、自分たちが使いたいものが自分たちでもわからないとか、そういった提案して作る段階でCさんから見ていろいろな苦労があるように思えました。
角:なるほど。
村上:で、じゃあそれが社員の出向や派遣でわかるようになるのかっていう話なんですよね。なので、まず課題をもうちょっとはっきりさせましょう。となると、それは多分2つあって、toC向けの要件を切れるプロダクトマネージャーが多分いないんだと思います。
「なんか使いづらいんだよね」「こういうことができないんだよ」ってみんなが好き勝手言ってることのコアの課題は何なのかをまとめて仕様に落としていくのがプロダクトマネージャーの役割です。多分この役割をできる人がいないので、採用するしかないですね。もしくは、社員を育てるでも良いんですけど、今toBをやっていて全くそういった役割をできる人がいない状況だとすると、必要な人材が社内にいない訳なのでこれは雇うしかない。あるいは業務委託的に客先常駐で来てもらうしかないです。その人に教育係もお願いするっていう形で、一定期間、お願いするのが必要かなと思います。
角:なるほど。
村上:多分、Cさんは、現場に行って向こうの社員のように働けば課題がちゃんとわかるだろうと思っているんだと思うんですね。ただ、今話していてうまくいかないのは、お客さんもよくわからないからなんですよ。それに、お客さんが言う課題が本当の課題かどうかもわからなくて、要望通りに一生懸命作ってみても、実際には業務の中で全然必要なくて、使われない機能になることってことがよくあるわけですよ。なので、そういった本当の課題や悩みは現場を見ないとわからないわけですけども、それは多分出向をしても多分わからないんじゃないかなと思うんですよね。
角:なんかすごくイメージできてきましたね。お二人のコメントを聞きながらプロファイルはどんなものだろうと思っていたんですが、まず相談者さんはSIerだということで、文章にもある「知識や感覚の不足」みたいなところは多分SIerさんあるあるで「要件定義してもらったものを作るのが好き」っていう部分があって、お客さんの目線に立ったり、アジャイルに作っていくみたいなところが、カルチャーとしてちょっと希薄であるところがあるんじゃないでしょうか。そんな中で、自分たちの新規事業としてBtoBtoC向けの商品を作ったとしてもお客さんにそっぽを向かれるものになってしまうんじゃないかという懸念や危惧がCさんの中ですごく強いんだろうなっていう気がしました。だから、「顧客目線を獲得してほしい」という思いも込めての半年みたいな感じになってるような気がします。
村上:SIerなので客先常駐っていうカルチャーがあって、そのノリでこれをやっているからこういうことになっている気がしますね。
角:なるほど。ちょっと色々な要素が絡み合っていますね。半年単位の出向拒否もわかりますし、半年間行ったとしても身に付けられないでしょみたいなところもあるし。既存の仕組みを変えることができないなら、村上さんがおっしゃってたような業務委託で来てもらうところからのスタートの方がやりやすいのかもしれません。けれども、一方で、「新規事業に取り組むことを通じて、社内の目線の変革をして顧客視点を取り入れたい」と思っているのであれば、仕組みの方から何かを変えるといった手立てを経営層向けにアプローチすることも必要かもしれないですね。
SIer業界のCさん、ぜひご参考にしていただければと思います。
回答のまとめ
1,BtoBtoCへの展開における課題と解決策:
・出向期間の最適化と目的の明確化
・現場体験の必要性と社員の納得感向上
・toCに特化したプロダクトマネジメント能力の獲得
2,効果的なアプローチの選択肢:
・半年出向の代替となる短期集中型の現場体験設計
・プロダクトマネージャーの採用または業務委託
・顧客理解のためのより効率的な手法の導入
今回ご紹介した内容は、以下のリンクから動画で視聴できます。
本記事では要約をお伝えしましたが、テキスト化できなかった部分もありますので、回答のフルバージョンをぜひ動画でご覧ください。
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