フィラメント公式YouTubeチャンネル『新規事業お悩み相談室』では、実際に新規事業に携わっている方々からお寄せいただいた質問やお悩みに、数々の新規事業の現場を見てきたスペシャリスト村上臣さん、グローバルなスタートアップ投資家として有名なリブライトパートナーズの蛯原健さん、そしてフィラメントCEOの角勝が相談員として回答しています。

本記事では、動画で配信している『新規事業お悩み相談室』をダイジェスト版としてお届けします。

今回いただいた相談は「地方でのビジネス展開のありかた」です。

質問者:
電子部品業界 Dさん

相談の背景や理由:
長年、地方に事務所があって社員も多く住んでいることから、地域にもっと貢献できるビジネスを立ち上げたいと考えています。しかし電子部品業界であるため直接地域とのかかわりはあまりないのが実情です。敷地が広いのでスポーツ施設やコミュニティスペースの提供などは考えられますが、これから必要とされる地方事業のトレンドはどんなものがあるのでしょうか。

角:本日のご相談は電子部品業界Dさんから「地方でのビジネス展開のありかた」というご相談です。まずは村上さんからいかがでしょうか?

村上:はい。ちょっと質問で読み解けなかったのが、「地域に貢献したい=ビジネス」ではないのではというところですね。でも、別だけど一緒にもできることかなとは思います。

地域貢献を考える際、それが本業で得た利益を還元する「メセナ(文化支援)」的な活動なのか、あるいは地域を巻き込んだ新しい「ビジネス」を構築したいのかによって、選択すべきオプションは大きく変わります。単なる貢献ということであれば、手法は多岐にわたります。たとえば、多くの企業がスタジアムを建設したり、プロスポーツチームを支援したりすることで、その拠点を中心に地域を活性化させている事例があります。バスケットボールをはじめ、さまざまな競技でこうした動きが見られますので、それらを参考に「地域を盛り上げるために何ができるか」を検討するのも一つの手でしょう。一方で、持続可能な仕組みとして地域と共生していくのであれば、コスト負担としての支援にとどまらず、いかにして地域社会と事業を一体化させるかという視点が不可欠になります。

ビジネスとして取り組むとなると、非常に難易度が高くなります。地域を基盤とした新たなビジネスを構築するのはかなりカロリーの高い話なので、たとえば社内副業制度などを整え、社員のリソースを一定期間地域にコミットさせるような仕組みが必要になるでしょう。その地域のニーズと自社の専門領域をマッチングさせて事業を作るなど、手法は様々ですが、まずはどの程度の規模でどちらの方向に進みたいのかを明確にすべきですね。本気でビジネスを成立させようとするならば、相応の人・モノ・金を投入しなければ中途半端になり、かえって地域に迷惑をかけてしまう恐れもあります。長期的にコミットする覚悟があるのかを問い直し、もし進むのであれば、地元の人々を巻き込み、自社社員もしっかりと投入して、場合によっては子会社を設立するなどの体制を整えるべきです。そこを起点に新たなビジネスを創出することは、これまでにない新しい企業の在り方として、今まであんまりない形なので面白いんじゃないかなと思いますね。

角:なるほど。たしかにこの質問からは、稼ぎたいのか貢献したいのかどちらの方向性なのかっていうのはちょっとはっきりしないですもんね。でも一社員の人が決めらんない話でもありますよね。

村上:そうですね。なので地方でのビジネスや地域貢献という文脈で言えば、要するに「外貨を稼ぐ」という話になるのだと思います。自社のノウハウを投入し、たとえばその土地の産品があるならば、そこにコミットして雇用を作り出す形で貢献する。あるいは、ふるさと納税の返礼品となるような特産品を一緒に開発して利益を上げるといった形も考えられます。もし製造に関わる分野であれば、本業のノウハウを活かして雇用を生み出しながら、新たな取り組みができるかもしれません。そのように、地域に貢献しながらビジネスを展開する方法はいろいろあると思うんですよね。

角:どういう方向を望んでおられるのかがまだ読み解けない部分ありますけれども、蛯原さんはいかがでしょうか?

蛯原:いつもとは趣を変えてズバリ単語でお答えすると、これから必要とされる地方事業のトレンドとして、まず挙げられるのは「行政DX」です。行政DXといえばシンガポールを想起する方が多いようで、先日も県の職員の方が学びに来られるなど、高い関心が寄せられていて、問い合わせがかなりあります。電子部品業界の本業領域とどこまで重なるかは分かりませんが、スマートシティなどの文脈も含め、可能性がある分野です。もう1つは「インバウンド観光」です。これは各所で繰り返し述べていますが、もし活用できる敷地があるのなら、思い切ってラグジュアリーな施設を建設するといった選択肢も考えられるでしょう。

結局は地域に人を呼び込むことができれば、結果としてその地方への貢献につながります。たとえば、大企業のオーナー家がフィランソロフィー(社会貢献)の一環として運営している美術館や博物館のように、文化的な拠点を設けることも地域にお客さんを引き寄せる立派な地域貢献と言えるでしょう。また、地方発のブランド育成も一つのトレンドです。お酒や食品などのブランドは海外でも非常に喜ばれます。最近では、漢字で商品名が書かれたウイスキーなどが各地で作られ、バーなどで提供されるケースも増えています。そのほか、糖度の高い高品質な野菜や果物の発掘、およびそのサプライチェーンの構築なども考えられます。

さらに、地方が抱える過疎化や高齢化といった課題に対応するビジネスも重要です。今月始まったライドシェアや遠隔医療のように、従来の仕組みが維持できなくなった領域で、シェアリングエコノミーの手法を取り入れる動きがあります。これらは新興国で普及しているモデルですが、日本の地方都市にも同様のことが言えます。地方のビジネスにおける主なトレンドとしては、このあたりが挙げられますね。

角:素晴らしい。ありがとうございます。ライドシェアもそうですよね。自動運転バスへの取り組みなどは、実は地方ではスタートしてたりとかもしますよね。ウイスキーの商品名が漢字二文字がいっぱいある気もしますよね。そして、行政DXもアリということですね。

蛯原:行政DXのベンダーさんがいらっしゃるんですけど、それを電子部品業界さん的に全部請け負うってことにならないとしても、たとえばハードウェアの部分で多少あるのかなとか思いますね。行政と言っても広く、証明書を取りに行くだけじゃなくて、スマートシティや交通やら色々あります。
角:ありがとうございます。色々なトレンドが参考になると思います。電子部品業界であるこちらの会社さんが、いわゆる地方豪族系の企業さんだとすると、地域に対してしっかり還元するっていう意識が強かったりしますよね。そういう意味では、村上さんがおっしゃっていたように、貢献するというアプローチで考えるべきだと思います。そして、蛯原さんのおっしゃっていた、たとえば行政DXということであれば、それを展開するための商社機能などを担って、そこで地域の中でインバウンドの振興といったところにもつなげていくといったビジネス的な貢献も考えられると思います。ぜひ参考にしていただけたらと思います。

回答のまとめ
1,地域貢献とビジネスは目的を分けて整理する必要がある:
・地域への貢献活動なのか、収益を生む事業なのかによって取り組み方は大きく異なる
・利益還元型の活動であれば、スポーツ支援や文化施設などメセナ型の取り組みも選択肢になる
・事業として成立させる場合は、人材・資金・組織を投入し長期的にコミットする体制が不可欠になる

2,地域ビジネスは「外貨を稼ぐ仕組み」を作ることが鍵になる:
・地域外からお金を呼び込む仕組みを作ることで雇用や産業が持続する
・地元の産品や特産品と企業のノウハウを組み合わせて新しい価値を生み出す
・ふるさと納税や地域ブランド開発など地域資源を活かした事業化の余地

3,地方ビジネスの有望領域は社会課題と観光の交差点にある:
・行政DXやスマートシティなど公共サービスのデジタル化は重要な成長分野
・インバウンド観光やラグジュアリー施設など人を呼び込む拠点づくりが地域経済を動かす
・過疎化や高齢化への対応としてライドシェアや遠隔医療など新しい仕組みが求められている

今回ご紹介した内容は、以下のリンクから動画で視聴できます。