フィラメント公式YouTubeチャンネルでは毎週水曜日に『新規事業お悩み相談室』を配信しています。この番組では、実際に新規事業に携わっている方々からお寄せいただいた質問やお悩みに、数々の新規事業の現場を見てきたスペシャリスト村上臣さん、グローバルなスタートアップ投資家として有名なリブライトパートナーズの蛯原健さん、そしてフィラメントCEOの角勝が相談員として回答しています。

本記事では、動画で配信している『新規事業お悩み相談室』を1分で読めるダイジェスト版としてお届けします。

今回いただいた相談は「生成AI活用で差別化するBtoB新規事業の可能性」です。

質問者:
化学メーカー・Aさん

相談の背景や理由:
BtoB向けの素材メーカーとして新規事業を進める中で、市場トレンドやエンドユーザーのニーズは徹底的にリサーチしているものの、競合との差別化ポイントを見出しづらく、他社との違いを明確に打ち出せていないことが課題です。また、事業仮説の検証に時間がかかるため、競争優位性を確立するうえでの指針が見えづらくなっています。そこで、「生成AIを活用し、自社技術を最大限に活かす競合差別化と事業仮説の効率的な検証方法」について知りたいと考えています。具体的には、実際に生成AIで試せる活用方法や事例などがあれば教えていただきたいです。

角:本日の相談員は蛯原さん、柿木原さん、そして角でお送りいたします。今回のご相談は化学メーカーのAさんから、「生成AI活用で差別化するBtoB新規事業の可能性」についてです。要は「事業の仮説検証に時間がかかってしまう」「競合との差別化ポイントがどこなのかよくわからない」といった点について、生成AIを使ったらうまいこと早めにわかりませんかねという感じですかね。蛯原さんはいかがでしょうか?

蛯原:素材メーカーさんってそれこそ本業で生成AIというか、コンピューティングは相当使ってるはずですよね。配合とかユースケースで相当使っているはずです。我々も某案件で、特殊な半導体とかコンピューターとかを作ってるようなものがあります。ただ、多分そういう話ではなく、ここに書いていただいてるような「差別化をちゃんとする」「事業仮説を効率的に検証する」っていうのはプロンプト職人に尋ねるものですよね。

角:そうですよね。

蛯原:で、これはちょっと質問のそもそもの着眼から点検したいなと思います。結論から言うと、市場調査では基本的には差別化っていうものはわかりません。というか、「そもそも新規事業なのになんで競合が存在するんだっけ?」「なんで差別化って話になっているの?」という部分に違和感がありました。であれば、既に御社が持っている素材そのものを生かすわけじゃなく、本当にゼロからの新規事業なのかもしれないですね。なんというか、仮説や前提が文章だけでははっきり理解できませんでしたっていうのが1つです。

もう1つは、新規事業ってのはお客さんに聞いてもわからないということです。つまり、市場調査というのは要するに新規事業にとっては全くもって有益ではないと、ドラッカーさんなんかも言っています。なので、それ以外のアプローチがいくつかあって、たとえば、現状と将来のギャップ(人口動態・社会状況の変化など)をちゃんと分析しながらギャップを考える「ギャップ分析」などがあります。この手のものはほぼ学術論文に近いレベルの類計ないしは理論に近いものがあるので、そこまで考えたらAIに聞いてみる。ただ、今あらゆるAIでそれを試してますけど、「じゃあそれの具体的な事例は?」と尋ねてもほとんど答えられないですね。まだウェブ上の実績が甘いので、人力で物知りの長老に聞いた方がいいかもしれないです。

角:まだDeep Researchとかを使ってもやっぱりそんなものですか?

蛯原:そうですね。プロンプトの精度を上げていけばマシにはなりますけど、この手のビジネスの実例ってそもそもオープンになってないってことも多いですし、ほとんど有益な回答は出てこないですね。

角:なるほど。ちょっと生々しいご回答でしたね。今世の中で起こってることは、ネットのネタにはなってない場合がまだまだ多いということですよね。僕も「多分こういう感じでプロンプトを入力したら、それらしい答えは出てくるだろうな」っていうのはなんとなくありますが、それが本当かどうかはわからないですし、なかなか難しいとこありますよね。柿木原さんはいかがでしょうか?

柿木原:相談者さんが求めているような答えで言うと、進んでいる領域、たとえば医療や創薬みたいな領域でのAI活用については論文とかもまあまあ出てきているので、そういうものを見たらヒントは見つかるんじゃないのかなと思いました。とは言え、こういう技術が出ると生成AIに限らず、「新しいサービスや考えを活用したい」みたいな相談をよく受けるじゃないですか。でも、その相談をしてくる人自身が意外とその新サービスなんかを使っていないんですよね。なので、まずはこの質問文をそのままChatGPTに聞いてみるのはどうかなと思うんですよね。

角:なるほど。まずは1回漕ぎ出してみてくださいってことですね。僕がよくやってるやり方ですと、「今状況の説明をする(自分はこういう会社で新規事業に携わっています)→自社の強みを活かした新規事業を作りたいのでまずは自社の強みを教えてください→自社の強みが生かしやすい業界を教えてください」と段階的にお願いをしていく。そして、「次は課題を教えてください→競合の状況を教えてください」と質問をしていき、壁打ちをしながら自分もその業界についての理解度を深めていくみたいなやり方をしていくと、AIを使いながら、自分の知識や業務に関するそのケイパビリティを少しずつ広げられて、新規事業に向き合って精度を高めていけるかなと思いましたね。

あと、これはTipsになりますけど、最後に「もしあなたの最高のパフォーマンスを出すために必要な質問があれば、私に積極的に質問リクエストしてください。」みたいな感じのプロンプトを入れると、向こうから質問してくるようになります。そうやってAIから質問されると、自分の会社のこと調べたりすることになるので、自分も成長していいですよ。ということで、化学メーカーAさん、参考にしていただければと思います。

回答のまとめ
1,生成AIのBtoB新規事業への活用可能性と限界:
・業界特化型データの不足による回答精度の限界
・オープンになっていない業界情報の取得困難性
・医療や創薬など先行事例からの学びの重要性

2,効果的な生成AI活用のアプローチ:
・段階的な質問設計による自社理解の深化
・AIとの対話を通じた業界知識の拡充的な情報収集

今回ご紹介した内容は、以下のリンクから動画で視聴できます。

本記事では要約をお伝えしましたが、テキスト化できなかった部分もありますので、回答のフルバージョンをぜひ動画でご覧ください。

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