フィラメント公式YouTubeチャンネル『新規事業お悩み相談室』では、実際に新規事業に携わっている方々からお寄せいただいた質問やお悩みに、数々の新規事業の現場を見てきたスペシャリスト村上臣さん、グローバルなスタートアップ投資家として有名なリブライトパートナーズの蛯原健さん、そしてフィラメントCEOの角勝が相談員として回答しています。
本記事では、動画で配信している『新規事業お悩み相談室』を1分で読めるダイジェスト版としてお届けします。
今回いただいた相談は「新規事業向けの人的ネットワーク構築方法」です。
質問者:
化学業界 Dさん(研究開発部門)
相談の背景や理由:
当社は化学業界に属し、これまでは主に大学との共同研究開発を行ってきました。現在、一般ユーザー向けの商品開発を目的とした新規事業を推進していますが、この分野での人的ネットワークが乏しいと感じています。特に、アドバイザーやインタビュー対象者として適した人材との接点をどのように作り出すか、また異業種の専門家や市場の専門家との関係構築について具体的なイメージができていません。どのようなイベントや会合に参加すべきか、またどのようにしてこれらの人材と関係を築き、新規事業開発に活かすべきかについての具体的なアドバイスを求めています。
角:本日のご相談は化学業界Dさんから「新規事業向けの人的ネットワーク構築方法」についてのご相談です。まずは蛯原さんからお伺いしてよろしいでしょうか?
蛯原:現在は、大学発の知的財産と化学業界のリソースを掛け合わせ、一般ユーザー向けの商品開発やサービスを推進している段階かと推測します。このフェーズで直面するのが、そもそもマーケットフィットがあるのか、そして調査のために誰に話を聞けばいいのかという課題です。
アメリカの著名なアクセラレータープログラムにおいても、アイデアの着想から開発、チーム組成が進む中で、インタビューは必ず工程に組み込まれています。そこでは、その業界のキーパーソン5人以上に、どのような手段を使ってでもたどり着き、直接インタビューを行うことが鉄則として求められます。どのような新規事業であっても、まずは業界の重要人物への直接的なヒアリングから始めることが、プログラムの標準的なプロセスとなっています。メンターとして多くの事例を見てきましたが、調査のためのネットワークを築くための魔法のような近道は存在しません。
強いて言えば、ベンチャーキャピタルはこうした局面に慣れています。規模の大きなベンチャーキャピタルであれば、各業界のトップ企業にアクセスできるアドバイザーやコンサルタントを抱え、いつでもヒアリングができる体制を整えているケースもあります。しかし、大企業の新規事業部門がそうしたネットワークを外部に委託することは現実的ではないため、基本的には自分たちで道を切り拓くしかありません。ターゲットとなる業界や企業が決まっているのであれば、接点のない相手への電話(コールドコール)も含め、泥臭く自力でたどっていくことが重要です。やはり、地道なアクションの積み重ねに勝る魔法はないですよね。
角:ありがとうございます。研究開発部門っていうところに、質問者Tさんの大変さが滲んでるような気がなんとなくするんですよね。村上さんはいかがでしょうか?
村上:研究開発部門の方は、社内においても事業部門との接点が少ないことが多く、営業などのネットワークを持つ部署とも距離があるため、外部への繋がりをどう作るかという壁に直面しがちです。なので、蛯原さんがおっしゃるように状況を打開するための魔法はありませんが、泥臭く動く以外にできることが2つあります。
1つは、社内人脈の掘り起こしです。社内には必ず、対象となる業界と接点を持っていたり、パートナーシップを組んでいたりする部門が存在します。外部の未知の相手に当たるよりも、まずは社内のネットワークをたどる方がハードルは低いと言えます。もう1つは、社内のリソースを使い切っても道が開けない場合に検討すべき手段ですが、コンサルを雇うしかないですね。
角:お悩みについての文章を読んでいて、僕は質問者さんがすごく混乱されてるんじゃないかなっていう感覚が強く残ったんですよね。化学業界の研究開発部門で、一般向けの新規事業で、人的ネットワークが乏しい。で、アドバイザーやインタビュー対象者を探しているんだけどと続いた後、イベントや会合に参加したらなんとかなるんじゃないかっていう雰囲気もあるんですよね。なんか結構バラバラな雰囲気がある気がして、ご自身が置かれている状況とか、どういう打ち手があるのかが整理されてないんじゃないかなっていう気がしたんです。たとえば、こういったことを前提として考えると、まずインタビューよりも本を読んでみるとか。今こうやって質問をいただいているということは、このYouTubeも含めてネットでリサーチなどはしてらっしゃるとは思うんですけどね。
蛯原:客観的に見れば、意見を聞くためのヒアリング先を探すという工程は、起業や新規事業創造のプロセスにおいて最も難易度が低いもののひとつです。相手に商品を買ってもらう必要はなく、ただ意見を伺うだけなので。この段階で悩み立ち止まってしまうのは、事業推進の上では厳しい状況だと言わざるを得ません。もっと行動力を発揮していただきたい。とにかく動いて人脈をたどれば、せいぜい二人を介する程度のつながりで、適切な人物にたどり着けるものです。難しく考えすぎず、まずは自分から積極的に動いて接点を作りにいくべきです。
村上:現在の状況から推測すると、まだ具体的な新規事業のアイデアが十分に固まっていないのではないでしょうか。研究開発(R&D)部門によくある、自社の強みである要素技術を活用して新規事業を創出せよという指示が下りているものの、具体的な進め方が見えずに行き詰まっている様子が伺えます。一人で悩み続けても状況は好転しません。まずは誰かに相談することを含め、外部に働きかけてみることが現状を動かす第一歩になります。
角:
先程蛯原さんもおっしゃっていましたが、質問者さんが「今までやったことがないアクションを起こす」というご経験がないような気がするんですね。研究開発部門ですと、論文で評価されることもあると思います。だとすると、こういう新規事業を作るためのコミュニケーションにちょっとハードルを感じられても、それは普通のことです。まずはマインドの部分から、新しいチャレンジを楽しんでみるマインドセット作るといったことからはじめてもいいかもしれません。我々フィラメントでもそういったワークショップを行っています。ということで、化学業界・Dさん、ぜひ参考にしていただければと思います。
回答のまとめ
1,新規事業初期に求められる人的ネットワークの考え方:
・マーケットフィットの検証は業界キーパーソンへの直接ヒアリングから始まる
・ネットワーク構築に近道や魔法の方法は存在しない
・調査段階では商品を売らず意見を聞くだけという認識を持つ
2,具体的なネットワーク構築の進め方:
・社内にある既存の人脈や過去の取引関係を掘り起こす
・接点のない相手にも電話や紹介依頼などで自らアプローチする
・社内で限界がある場合はコンサルタントの活用を検討する
3,研究開発部門が特に意識すべきポイント:
・一人で考え続けず外部に相談する行動を優先する
・イベント参加だけで解決しようとせず目的を整理する
・未経験のアクションを楽しむマインドセットを持つ
今回ご紹介した内容は、以下のリンクから動画で視聴できます。
