フィラメント公式YouTubeチャンネル『新規事業お悩み相談室』では、実際に新規事業に携わっている方々からお寄せいただいた質問やお悩みに、数々の新規事業の現場を見てきたスペシャリスト村上臣さん、グローバルなスタートアップ投資家として有名なリブライトパートナーズの蛯原健さん、そしてフィラメントCEOの角勝が相談員として回答しています。

本記事では、動画で配信している『新規事業お悩み相談室』をダイジェスト版としてお届けします。

今回いただいた相談は「地方拠点からでも新規事業はつくれるのに”本社至上主義”をどう崩す?」です。

質問者:
電機メーカー Bさん

相談の背景や理由:
東京本社の新規事業部門に所属していますが、コロナ禍を機に地方の事業所近くへ移住し、現在もその地で勤務しています。地方にいるからこそ見える課題や多様な視点が新規事業に良い影響を与えていると実感しています。しかし経営層からは「やはり本社にいたほうがいい」と言われ続け、もどかしさも感じています。日常の業務効率や一体感の重要性も理解しつつ、これからの新規事業開発には、多様な環境に身を置くことこそが武器になると思っています。場所に縛られるのではなく、発想力や行動力を重視する働き方をどうすれば理解してもらえるのか。この価値観のギャップを埋める方法を模索しています。

角:本日の相談員は村上さん、田中さん、そして角でお送りいたします。今回のご相談は電機メーカー Bさんから、「地方拠点からでも新規事業はつくれるのに”本社至上主義”をどう崩す?」についてです。まずは田中さんからいかがでしょうか?

田中:相談に書かれていることから読み解くと、「地方にいるから見える課題」「多様な視点」という部分が経営陣に伝わっていないということなのかなと思います。実際に生み出した新規事業が地方にいるからこそできたのであれば、経営陣は「地方にいた方がいいね。むしろもっとそっち(地方)で頑張ろうね」っていう話になるんじゃないかなと思うんですよね。

相談者のBさんは地方にいることのメリットを実感されているとのことなので、たぶん新規事業に繋がるまであと1歩なんじゃないかなと思うんですが、その結果をいち早く経営陣が理解できるような形で出して、これは地方にいることと繋がっているということを説明して理解してもらう。これができれば、本社至上主義を崩すことに繋がると思います。それができなければ、デメリットの方が上回っているということになり、説得していくのは難しいんじゃないかなと思いましたね。

角:結果を出すのが1番早いよということですね。新規事業のプロセスって長いですけど、どこかで経営陣にも伝わるような結果を出すことが1番説得力あるんじゃないかと思いますね。それがあれば、「ずっとそこで頑張れ」「なんなら新規事業部隊を全員そっちに送ろうか」ってなるかもしれません。続いて、村上さんはいかがでしょうか?

村上: ちょっと経営者目線に寄せてお話しようかなと思います。ご本人も認識してる通り、たぶん本社で大体のことが決まる会社なんですよね。「基本的には重要な意思決定は本社で起こるから、本社にいた方がいいよ」って言ってくれてるんだと思います。この構造は経営がそう動いてるのでなかなか変え辛いですよね。

大きいアウトプットを出そうと思うと、やはり本社で予算獲得の折衝、リソース獲得や決裁を取るといったことが必要になります。もちろん、そこにはウェットなコミュニケーションも発生して、説得を重ねて、ようやく決裁が下りるみたいな世界観だと思います。地方発の課題の新規事業であっても、結局、本社でのウェットなコミュニケーションが必要になるのであれば、やっぱり本社にいた方がいいですよね。

角:なるほど。

村上:要は、経営者からすると「どれぐらい売り上げが上がるの?利益上がるの?」っていう話じゃないですか。たとえば、相談者さんが全ての地方拠点を訪問していて、「共通の課題はこれです。ここにはこれぐらいの潜在市場があります」というピッチができるくらいだとしたら本社のアテンションをひくと思うんです。ただ、本社にいる経営陣から見たときに「地方拠点の一課題でしょう。我々が求めている利益と比べるとちょっと桁が少ないよね」みたいに感じられてるんだとすると難しいじゃないですか。もし、複数地方拠点があって、地方に課題があると信じているのであれば、相談者さんが全地方をまわるのは1つの方法だと思います。この会社における地方課題のエキスパートになるということですね。そこから実際に商品企画につなげるとなると、やはり決裁を本社で取ることになりますが、それを地方ベースでやりきるっていうのも1つの方法ですし、一旦は本社に行ってそこから地方をまわりまくるというのも1つのやり方です。いずれにしても、力学としてはそういう形だと思います。

角: 相談者さんがどこの地方拠点におられるかわからないんですけど、例えば島根だったら島根の地方課題には精通しているかもしれないが、それってその地域だけのニッチな課題で日本全国の地方ローカルの代表じゃありませんよねみたいな感じで見えているんじゃないかというのが1つ。そして、意思決定…というよりは日本企業の場合は合意形成の方が多いかと思うんですけど、合意形成されているのが結局中枢の東京本社で進んでいくので、そこにいなかったら、合意形成に関われる頻度や関与度が減ってしまうというのが1つですね。そうなると、結局自分がやりたいことって通せないよみたいなところが出てきてしまいますよね。

村上:そうですね。本社の新規事業の期待値がちょっとどれぐらいかわからないですけども、たとえば3年で10億としたら、一地方で1億ぐらいの利益が出たとしても残り9億はどうするんだって話になるじゃないですか。だとしたら、「他の地方でも同様に1億の利益があげられます。実は10拠点で同じことがあるんです」という話ができるか、もしくは、もう大型案件を見つけていますというのも手でしょう。やはり、どうやって本社の意思決定の力学に沿う形でピッチができるかっていうことだと思います。

角:たしかにご相談内容を読むと、ご自身の主張はすごく書かれているんですが、本社での意思決定や合意形成にどう関わっていくのか、自分の影響をどう広げていくのかという視点は弱いように感じますね。

自分たちが作ろうとしている新規事業の価値をどう示すか?もしかしたら、結果を出していくためには、社内で「ローカルのスペシャリスト」というブランディングをしていくことが先かもしれないし、それが意思決定や合意形成の力学の中に関与していくための重要なファクターになるかもしれないですね。戦略的な目線を持って、どう関わっていくのかを考えていただくと良いでしょう。何しろ、合意形成の重心が置かれているのは本社だと思うので、そこでの自分の影響の波及具合を考えていかれるといいと思います。同じく地方に住んでいる者としても応援しています。また悩まれることがあったら、ぜひ追加でお悩み相談してくださいね。

回答のまとめ
1,地方の価値を結果で示す:
・地方にいるからこそ見える課題や多様な視点の価値を経営陣に伝えるには、具体的な結果を出すことが最も効果的
・新規事業のプロセスの中で、早い段階で経営陣に伝わる成果を示すことが重要
・一地方だけの小さな成果ではなく、「全国10拠点で同様の成果が見込める」など、スケール可能性を示す
・地方発の課題が新規事業として成功すれば、「地方にいた方がいい」という認識に変わる可能性がある

2,本社の意思決定構造に適応する戦略的アプローチ:
・日本企業では重要な意思決定や合意形成は本社で行われるため、その構造を理解する必要がある
・「地方課題のエキスパート」としての社内ブランディングを確立する
・本社が求める売上・利益規模を理解し、それに見合う提案をする
・地方にいながらも本社の合意形成プロセスに効果的に関与する方法を模索し、戦略的な視点を持つことで自分の影響力をどう広げていくかを考える

今回ご紹介した内容は、以下のリンクから動画で視聴できます。