“社会課題を解決するビジネスを生み出したい!!”
多くの企業がそう望んでいますよね。
でも、実際に社会課題を解決するビジネスを生み出すというのは非常に難しいことです。
なぜ難しいのか?
この記事では、その難しさの理由を明らかにするとともに、社会課題解決型ビジネスを創出するためのおすすめ手順をサンプル事例をあげながら解説していきます。
1)ビジネスの構成要素
社会課題解決型ビジネスの話に入る前に、まず議論の土台として前提条件を整えるために、一般論としてのビジネスの基礎認識についてお伝えさせてください。
ビジネスとはどういうものかと考えたときに、その構成要素は顧客・課題・解決策の三つであるといえます。顧客の課題を解決することで対価を得る。それがビジネスであるということです。
そしてその三つをより解像度高く表現するならば以下のようになります。
①経済余力のある顧客
②(その顧客が直面しているお金を払うに値するほどに)切実な課題
③(その顧客がお金を払うことに同意可能なだけの)十分なバリューと十分な負担の低さを両立する解決策
これに従ってビジネスを正確・厳密に定義すると以下のようになります。
経済的に余力のある顧客が直面している切実な課題に対して、その解決のために十分な価値を発揮でき、なおかつ顧客が負担可能なコストにおさまる商品やサービスを提供し、その対価を得ること
社会課題起点の場合だけに限らない一般認識として、ビジネス創出において最も重要かつ困難なポイントは課題を見つけることである、とよくいわれます。
しかし、それがなぜ困難なのかは、
・経済余力がある顧客が直面する課題である必要があること
・お金を払うに値するほどに切実な課題であること
の二つの要素を満たす必要があることに加え、
・一般的に課題であるとは認識されていない(未発見の)課題であること
ということも含めた三つの要素を全て満たす課題を見つけなくてはならないためにほかなりません。
これら三つのフィルターを全てをクリアする課題を発見することがどれだけ難しいことか、ぜひ想像してみてください。
2)社会課題をビジネス化する難しさ
(1)顧客特定の難しさ
社会課題とはなにか?
簡単に言えば「社会全体が直面している大きな課題」です。
ビジネスの対象となる課題を「社会課題」という大きな主語でくくってしまうと、(当然ながら)ターゲットとなる顧客も「社会全体」となってしまいがちです。
つまり顧客解像度が非常に低い状態からのスタートとなってしまうのです。
この「スタートラインが遠くなってしまう」というハンディキャップはかなり大きなものです。
時間と手間をかけて十分に顧客解像度を高めたつもりでいても、客観的にみると全然深まっていないという勘違いがよく起こります。
実在の顧客の課題に着目してその課題の解決を考えていくというデザイン思考的なアプローチに比べると圧倒的に顧客理解が深まりにくく、「顧客はこういう課題を抱えているはずだ」と脳内で課題を捏造してしまうという事態にも陥りやすいのです。
(2)社会課題解決の枠組み
社会課題が広く認識されるようになると、その解決のための社会的なルール・法律といった「解決の枠組み」が実装されることになります。多くの場合、社会課題をビジネスで解決できるようになるのはこのステージです。
例えば「地球温暖化」は未解決な社会課題ですが、そのためにCOP21などを通じて国際的な「解決の枠組み」が定められ、それに応じて各国で法的整備が進められ、様々な規制が生まれ、その規制が様々なビジネスを生み出していっています。例えばフロンガス規制などがその一例であり、フロンガスが規制されることによって以下のようなビジネスが生まれました。
①フロン代替物質の製造・販売
代表的な企業 デュポン、ハネウェル、ダイキン工業、旭硝子
②フロンガス回収ビジネス
代表的な企業 ヴェオリア・エンバイロメント
③環境コンサルティングビジネス
代表的な企業 ERM、DNV GL
ここからいえることは、社会課題のビジネスによる解決は、課題解決の枠組みが決まることで初めて本格化する場合が多いということです。
こうした「解決の枠組み」が作られることで社会課題のビジネス解決が可能になっていくパターンはフロンガス問題のほかにも枚挙にいとまがありません。介護保険という制度が生まれる以前は、介護は実質的にビジネスとしては成立していませんでした(多くは自治体や公社が担っていた)し、リサイクル分野やエネルギー分野でも同様に法規制などの「解決の枠組み」が課題解決を前進させる起爆剤として機能しています。
逆に言えば、そうした解決の枠組みが未設定の場合、ストレートな社会課題の解決という発想ではビジネスとして成立しない可能性が高くなります。社会課題にまつわる業界課題や個人課題に関する情報を集め、探索を繰り返す根気のいるフェーズが必要となります。
(3)切実な課題として一般化しにくい
これは上記(2)の裏返しであり、解説なのですが、社会課題に対して解決の枠組みが立てつけられていない状態では、あまりにも一般化された課題であるために、その課題の解決に対価を支払える当事者が存在しにくくなります。
とても大きな課題ですので、1人(1社)がどれだけお金を払ったところで根本的な解決などは到底望めません。 以上のような困難があることから、社会課題をビジネスで解決することを志向するならば、それらの難所を回避するための適切なアプローチが必須なのです。
3)社会課題を解決するビジネスを創出する
上記でご説明した「解決の枠組みが未設定の社会課題」を解決するビジネスを創出するにあたっては、以下のような思考手順をおすすめします。
①自分たちが一次情報を集めやすい社会課題をピックアップする
②その社会課題が強く影響を与えている業界を洗い出す
③その業界の中で、社会課題により損失が出ているプレイヤーを洗い出す
④そのプレイヤーの社会課題による損失の切実性を個別に試算する
⑤そのプレイヤーが受容可能な解決策(ソリューション)の条件を確認する
という流れです。
淡白に手順だけ説明してもイメージしにくいと思いますので、以下、具体例を交えて実際の進め方をシミュレーションしてみましょう。
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①自分たちが一次情報を集めやすい社会課題をピックアップする
一次情報が得られやすい課題として「フードロス」をテーマとして選択することにしました
②その社会課題が強く影響を与えている業界を洗い出す
外食産業、リテール産業(スーパーマーケットなど)、食品メーカーなどがリストアップされました
③その業界の中で、社会課題により損失が出ているプレイヤーを洗い出す
以下のようなプレイヤーとどんな損失が出ているかをWEBでのリサーチをもとに考えてみました
A 大手小売りチェーン→廃棄ロスの規模が大きい
B 食品メーカー→返品による損失が大きい
C 高級飲食店→材料比率が利益を圧迫
④そのプレイヤーの社会課題による損失の切実性を個別に試算する
ここからは顧客へのインタビューによる一次情報をもとに試算を行いました
A 大手小売りチェーン:廃棄処理コストが利益を年々3%以上圧迫
B 食品メーカー:ESG投資の評価基準で食品ロス対策が必須に
C 高級飲食店:原価率の上昇で利益が出せない
ここまで見てくると「A 大手小売チェーン」の直面する課題は継続して利益を圧迫しているため、十分に切実な課題であるといえます。また、それを解決することができれば利益率が上昇し「経済余力」が生まれることも想定できますし、その経済余力のうちのいくばくかは対価として支払ってもらえそうです。こうして「経済余力がある顧客の切実な課題である」というビジネスの条件をクリアできるため、Aを顧客として⑤に進むことにします。
⑤そのプレイヤーが受容可能な解決策(ソリューション)の条件を確認する
顧客へのインタビューから、顧客が受け入れ可能なソリューションの条件は以下のようなものと判明しました。
・既存のオペレーションを大きく変えずに導入できる
・投資対効果が1年以内に見える
・自社のブランド価値向上にも貢献できる
この条件に沿う「A 大手小売りチェーン」向けの廃棄ロス削減のアイデアを出し合い、結果として以下のようなソリューションを顧客に提案し、採用されることになりました。
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「小売向けAI需要予測×動的価格決定システム」
・導入コスト:5000万円
・ランニングコスト:年間2000万円
・削減効果:廃棄ロス▲1億円/年
・副次効果:環境貢献をアピールできる
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いかがでしょうか?
社会課題を解決するビジネスの思考プロセス、イメージしていただけましたでしょうか?
もう一度ポイントをまとめると出発点が社会課題であったとしても
- 経済余力のある顧客を特定する
- その顧客の切実な課題を見つける
- 顧客が採用できるソリューションの条件を見極める
というビジネスの基本をしっかりと押さえることが重要であるということです。 解像度が低い「社会課題」に挑むのではなく、社会課題に起因する切実な課題に苛まれている顧客を発見する努力をすることが社会課題解決の第一歩になるのではないでしょうか。
※この記事は一部、生成AI(claude3.5)を用いて作成しています。