フィラメント公式YouTubeチャンネルでは毎週水曜日に『新規事業お悩み相談室』を配信しています。この番組では、実際に新規事業に携わっている方々からお寄せいただいた質問やお悩みに、数々の新規事業の現場を見てきたスペシャリスト村上臣さん、グローバルなスタートアップ投資家として有名なリブライトパートナーズの蛯原健さん、そしてフィラメントCEOの角勝が相談員として回答しています。

本記事では、動画で配信している『新規事業お悩み相談室』を1分で読めるダイジェスト版としてお届けします。

今回いただいた相談はユーザーインタビューのコツが知りたいです。

質問者:
IT業界・Aさん

相談の背景や理由:
新規事業企画を行う際、顧客/課題検証のために定性調査を行うが、インサイトや顧客の深い課題を抽出できないことがある。ユーザーインタビューのコツがあれば教えてください。

角:本日のご相談は「ユーザーインタビューのコツが知りたい」というご相談です。まずは蛯原さんからいかがでしょうか?

蛯原:フォーカスグループインタビューとかデプスインタビューとか色々検索すれば出てくるのでお調べになってみてください・・・だけではなくて、ちょっと逆のことをお伝えしたいです。ノウハウ本や情報はいくらでもあるのでそんなに困らないと思うんですけど、結局は「サービス設計者の意向が重要」ということです。「お客さんの意見を聞いた上で出来上がった最大公約数のプロダクト」は良いものなのかという問題があります。それよりも、1人の人間が熱狂して作るサービスやプロダクトの方が大成功する場合が多いので、ある程度ユーザーインタビューに関する情報を得つつ、今お話した思いは忘れていただきたくないなと思います。
角:ユーザーインタビューをちゃんとやるのは大事だけれども、「これは絶対欲しいよね」みたいな確信を深めるというのも大事ということでしょうか。

蛯原:そうなんですよね。だから、もしかしたら質問者の方はそういう経験があったからかもしれないんですけど、ユーザーインタビューしてるとだんだん訳がわかんなくなってくるんですよ。ですから、あまりユーザーインタビュー自体に固執するのもあんまりよろしくないっていう場合も結構あります。

角:何十人あるいは100人とか、数をいっぱいやればいいんだっていう考え方もあるかとも思いますけど、その辺はどうでしょう?

蛯原:それはおそらく違うでしょう。Yコンビネータなどは「100人のそこそこのユーザーを早く捕まえるよりも、10人の熱狂的なラバーを作れ」ということを言っていて、その通りなんですよね。

角: なるほどです。続いて村上さんはいかがでしょうか?

村上:まさにおっしゃる通りだと思います。いわゆるインタビューのコツみたいなものって世の中に色々あるんですけど、そもそもで言うと、何を検証したいのかをしっかりと決めぬままユーザーインタビューをしているパターンを僕は多く見てきたんですよね。要は、タックルしてる課題が正しいのかどうかっていうことです。課題が正しいかどうかを考えるためには仮説を持つ必要があって、その仮説をすごく強い強度で作っていかないといけません。そういった割とインタビューの手前のところが疎かになりがちなので、立ち返ってみるのは良いのかなと思います。

僕、プロダクト作る時によく「顧客に憑依する」っていう言い方をメンバーに言うんです。自分の課題なら理解しやすいですが、そうでなくともお客さん一人になった気持ちになって憑依することで、深い仮説が生まれます。この仮説に自分のバイアスがかかっているかを確認するためにユーザーインタビューを活用するのは効果的です。ただし、質問内容が重要でで、たとえばレシピサービスを作るときに単に「料理は楽しいですか?」と聞いても意味のあるインサイトは得られません。「週に何回料理をしますか?」「楽しいと思ったことは?」「めんどくさいと思ったことは?」といった具体的な質問をすれば、より深い洞察が得られます。結局のところ、顧客に憑依する努力をして、その課題にしっかりと向き合うこと。この2つが優れたプロダクト開発の鍵だと思います。

角:ありがとうございます。「顧客に憑依する」という部分は大きなヒントですね。質問者の方が「顧客の深い課題を抽出できない」と感じているのは、もしかすると顧客に対する本質的な興味が足りていないのかもしれません。本当にお客さんに興味があれば、「なぜそのように考えるのですか?」「どうしてそうなるのですか?」と、自分の仮説と違う答えが出た時にも、自然と掘り下げる質問が出てくるものです。しかし、事前に質問項目をリスト化して、そのリストの消化だけを考えているような場合、顧客への本当の興味が欠けているため、想定外の回答が出てきても、その理由を深く掘り下げることができません。まずは顧客そのものに純粋な興味を持つことから始め、その興味を深めていって、最終的に「憑依」するレベルまで理解を深めていくというステップが重要かもしれませんね。お客さんへの好奇心が、深いインサイトを得るための第一歩になると思います。

回答のまとめ
1,ユーザーインタビューの本質的アプローチ:
・単なる手法の習得よりも、顧客への深い理解と共感が重要
・「顧客に憑依する」レベルで課題を理解し、強い仮説を構築する
・多数の表面的なインタビューより、少数の熱狂的ユーザーからの深い洞察を重視
・インタビューの目的を明確化し、何を検証したいのかを事前に決めておく

2,効果的な質問と洞察の引き出し方:
・具体的な経験や行動に関する質問で、リアルな課題を引き出す
・「なぜそう思うのですか?」と掘り下げる質問を重ねる
・ユーザーの回答に対する純粋な興味と好奇心を持つ
・リスト化された質問の消化ではなく、対話を通じた発見を重視する

今回ご紹介した内容は、以下のリンクから動画で視聴できます。

本記事では要約をお伝えしましたが、テキスト化できなかった部分もありますので、回答のフルバージョンをぜひ動画でご覧ください。

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