フィラメント公式YouTubeチャンネルでは毎週水曜日に『新規事業お悩み相談室』を配信しています。この番組では、実際に新規事業に携わっている方々からお寄せいただいた質問やお悩みに、数々の新規事業の現場を見てきたスペシャリスト村上臣さん、グローバルなスタートアップ投資家として有名なリブライトパートナーズの蛯原健さん、そしてフィラメントCEOの角勝が相談員として回答しています。
本記事では、動画で配信している『新規事業お悩み相談室』を1分で読めるダイジェスト版としてお届けします。
今回いただいた相談は「社内ビジコン発の事業化成功事例」です。
質問者:
情報通信/電機メーカー/製造業界 Aさん
相談の背景や理由:
5年間にわたり社内ビジコンの運営をおこなっています。エントリー数は増加傾向ですが、事業化の方向性を客観的に見直したいと考えています。国内の代表的な事例として、ビジネスアイデアコンテストで実際に事業化に成功した3〜5つの事例を教えていただけると幸いです。様々な事例を調査していますが、プロの視点や意見をお聞きしたいです。よろしくお願いします。
角:本日のご相談は「社内ビジコン発の事業化成功事例」についてのご相談です。まずは村上さんからいかがでしょうか?
村上:リクルートさんの新規事業提案制度「Ring」から生まれたスタディサプリやゼクシィとかは有名ですよね。あとは、ソフトバンクのBOLDLYもありますよね。
蛯原:もう一つ有名どころで言うと、サイバーエージェントさんの「ジギョつく」ですよね。
角:質問者さんは情報通信/電気メーカー/製造業界ということなので、リクルートやサイバーエージェントのような企業と比べて、社内カルチャーが異なる印象がありますよね。やや伝統的な日本企業の雰囲気があると言いますか。
村上:完全にそうだと思いますよ。質問内容自体がそうじゃないですか。「客観的に見直したいと考えてます、事例を知りたいです」っていうのはかなりこの日本企業っぽい感じがしますよね。でも、どういう方向に見直したいのかとかをもうちょっと知りたいですよね。
前も話しましたけど、事業化のプロセスを体験する人が増えれば、結果的に人材がリスキリング的に底上げされてカルチャーが変わっていく。そして、結果、全体として人材が強くなって、会社が強くなる。みたいなビジネスが生まれなくても人材が育つという側面もあるじゃないですか。なので、最もしたいことはなんだっけというところを決めるのは会社のトップの人たちです。その決定をもとに、ビジコンをやるのか、もしくは違う形式がいいのかで見直したいっていうのはわかるんですけど。事例を知った上でどうしたいのかなっていうのが気になりましたね。
角:なるほど。まず事例を知るところからスタートしちゃうっていう思考の癖みたいなものをお持ちなんじゃないかということですね。
村上: よくある笑い話で本当の話なのですが、ある企業でビジネスプランコンテストが開催されて、革新的な新規事業のアイデアが優勝しました。その後、役員にピッチした際に「前例はあるのか」と質問されたという話なんですけど。新しい事業を生み出すはずなのに、既存の事例を求められるという矛盾が生じたわけです。最初は「画期的なイノベーションを起こそう」「クレイジーなアイデアをどんどん出してほしい」と言っていたのに、実際に斬新なアイデアが出てくると前例があるのかと及び腰になってしまった。このような状況から分かるのは、特にトップの意思決定者であるスポンサーたちの期待値をどう汲み取るか、あるいはどうコントロールしていくかが、こうした取り組みを継続するためには非常に重要だということです。
角:蛯原さんはいかがでしょうか?
蛯原:ご質問は「エントリー数は増加傾向ですが、授業可能方向性を客観的に見直したい」とのことなので、希望的観測も含めてたぶん事業化をもっと増やしたいっていうことなんだと思います。そう考えると、大きく2つの段階があると思います。まず1つ目は、事業が立ち上がってテイクオフするという初期段階。2つ目は、リクルートのような世の中で名前が知られるほどの存在感のある事業規模に成長した後半の段階です。どちらの段階においても、結局はコンバージョンレートを上げたいという目標があるのだと理解しました。
それで言うと、おそらく必須なのは、事業そのものが当然良いものでなければならないということと、コンテストに参加した人が実際に事業化するという強いコミットメントが必要だということです。この2点がきちんと設計されているかが重要です。ビジコンは単なるアイデアコンテストとして軽いものになりがちですが、真の新規事業募集やイントラプレナー募集として設計されているかどうかということです。リクルートやサイバーエージェントは、元々スタートアップカルチャーを持ち、大きくなった後も社内から次々と新しい企業を生み出すことが当たり前になっています。そういうカルチャーに惹かれた人材が新卒で入社するような会社になっているわけで、会社のDNA自体がそういう仕組みになっているというのは、非常に素晴らしいことです。一方、レガシー企業がそこまで到達するのは難しいかもしれませんが、そのような構造に少しでも近づけるよう努力することが良いのではないでしょうか。
角:なるほど。ありがとうございます。村上さんもおっしゃっていた通り、まず経営者の目的意識を明確にし、期待値をコントロールした上での仕組み作りが重要で、そこに蛯原さんのアドバイスも踏まえて考えてみると、会社というのは新規事業に向いている場合もあれば、全く向いていない場合もあり、それは実はグラデーションになっています。現在自分たちがどの位置にいて、次のステージに進むために何をすべきかをしっかり考えた上で設計することが大切ということですね。
本気で新しい道を切り開いてほしいのであれば、それに相応しい仕組みをきちんと考える必要があります。様々な事例を知ることもたしかに重要かもしれませんが、こうした本質的な部分を整えることの方がより重要なのではないかというお答えと理解しました。
蛯原:そうですね。だから、成功事例とか、その事業が良い悪いとかを分析してもしょうがないと思うんです。事業が量産されるというのはどういう立て付けになっているからなのかという部分を深掘りされるのがいいんじゃないかと思います。
角:ここまでのご回答、ぜひ参考にしていただければ幸いでございます。
回答のまとめ
1,社内ビジコン発の事業化の成功事例と本質的ポイント:
・スタディサプリ、ゼクシィ(リクルート「Ring」)、BOLDLY(ソフトバンク)といった有名な成功事例が存在
・新規事業提案制度の真価は、事業化のプロセスを通じた人材育成と会社カルチャーの底上げにもある
・事業化の成否にはトップの目的意識とスポンサー(経営陣)の期待値コントロールが不可欠
・“ビジコン=アイデアコンテスト”で終わらせず、実際の事業化やコミットメントまで設計することが重要
2,ビジコンで事業化を増やすための組織設計:
・新規事業推進に向いたDNAや文化を社内につくる努力が不可欠
・ビジコンの仕組みや支援体制を、会社の成熟度(グラデーション)に合わせて最適化
・経営の本気度や目的意識を明確にした上で、事業化の仕組みそのものを再設計
今回ご紹介した内容は、以下のリンクから動画で視聴できます。
本記事では要約をお伝えしましたが、テキスト化できなかった部分もありますので、回答のフルバージョンをぜひ動画でご覧ください。
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