フィラメント公式YouTubeチャンネル『新規事業お悩み相談室』では、実際に新規事業に携わっている方々からお寄せいただいた質問やお悩みに、数々の新規事業の現場を見てきたスペシャリスト村上臣さん、グローバルなスタートアップ投資家として有名なリブライトパートナーズの蛯原健さん、そしてフィラメントCEOの角勝が相談員として回答しています。
本記事では、動画で配信している『新規事業お悩み相談室』を1分で読めるダイジェスト版としてお届けします。
今回いただいた相談は「4年後の成功に向けた短期成果創出のスモールビジネス戦略」です。
質問者:
機械メーカー Cさん
相談の背景や理由:
機械メーカーで新規事業として農業用機材の開発を進めていますが、農産物の一年サイクルにより時間がかかります。4年後の完成を目指す中で、それを継続可能にするため、短期的にスモールでも成果を出したいと考えています。現在、オープンデータを活用した天気予報に基づく作付けや刈り入れの予測図を作成し、さらにアプリでユーザー課題を収集して業界向けにデータ販売を検討しています。ただし、アプリ開発も時間がかかるため、より迅速かつ低投資で進める方法を模索しています。農業以外の分野も含め、短期間でスモールにビジネスを展開する具体例があれば教えてください。
角:本日のご相談は機械メーカーCさんから、「4年後の成功に向けた短期成果創出のスモールビジネス戦略」についてです。こちらかなり詳細に開示していただいてますね。
まずその農産物が育つのが1年に1回なのでどうしても時間かかるという足かせがありつつの、でもアプリ開発も時間かかるよねという話ですね。まずは蛯原さんからお伺いしてもよろしいでしょうか?
蛯原:これはですね、スタートアップを事例に出して、1年という期間が妥当かどうかを検証されるのが良いのかなと思います。結論としては、正直そこまで急がれなくてもいいかなと思います。1年弱で良い成果や売上を出すっていうのはなかなか優秀です。ただ、これはサービスインからなので、その前段階でアイディエーション・プロトタイプPoC・実装という過程が別途1年ぐらいかかってるんですよね。そういうこと考えると、おそらく「相談者さんは非常に意識が高く、素晴らしい新規事業担当者でいらっしゃる」か、「上からのプレッシャーがものすごく強い」のいずれかあるいは両方かと思いました。
角:なるほど。
蛯原:私だったら、そんなに焦るなと言うと思います。「早く実績を出すことが目的ではなくて、中長期的に我が社の未来となり得る新規事業を0から作ってほしい」という依頼だとすれば、新規事業って一般的には1年そこらでそんなに成果は出ません。
とはいえ、「上からせっつかれているので、なんとか1年で」と言うのであれば、もう紙でやる。つまり、アプリを作らずに、エクセルでも紙でもメールでもなんでもいいわけです。プロトを作って、アプリのプロダクトにして、何かをよっこいしょと始めるんじゃなくて、本当にニーズがあるなら形態はなんでも良い。実際によくあるアクセラレーションプログラムのメソッドでもあるんですけど、ユーザーのニーズを探す。それを満たすものであれば、紙だろうが口頭だろうが何でもいいというのが基本ですから、まずそれで一度試してみて、本当に需要があるのであれば、投資をして人を入れて、ある程度時間をかけて物を作る。まずは、実際のニーズをちゃんと把握されると良いのではと思いました。
角:ありがとうございます。たしかに、質問から「上からのプレッシャーきつい感」がちょっと漂ってきますよね。ちょっと思ったのは、「農業用機材の開発」がメインで、それを補完したり何かしらを追加したりといったことを、アップセル要素としてやるのか、別事業としてやるのかというところもあって、「あっちもこっちもやらないと」というのがあるんじゃないでしょうか。村上さんはいかがですか?
村上:僕も角さんのプロファイルと同じ見立てで、ハードウェアを作ってらっしゃる中で「サブスクのビジネスも考えろ」みたいな要求が来てるんじゃないかなと想像しています。で、先ほど蛯原さんがおっしゃったことに賛成なんですけど、やっぱり先にお客さんをとってきた方がいいかなと思います。要は、多分いろんなアイデアがあると思うんですけど、先にお客さんを決めちゃって、それに合わせて作ってみるということです。
データに関しては、この領域で多分ずっとやってらっしゃるでしょうから、ある程度のデータは溜まってると思うんですよね。その上で、chatGPTでもエクセルでもよいので、とりあえず手作業でできるものを作ってみる。で、「これが自動でリアルタイムで見れるとしたら契約してくれますか?」といった具合に、それ便利だと思ってくれそうなお客さんに聞いてみて、「聞いてみたらなんか契約取れちゃいました」といった流れが話としては早いんじゃないかなと思いました。PoCを進めるにしても、具体的なお客さんのニーズを聞きながら調整していく方がいいでしょうし。実際にどれくらいのリソースが必要かはわからないので、まずは粗くても良いから実際にやってみるのが一番いいんじゃないかなと思いました。
角:いいですね。アプリを作らずに、いかに手数を少なくして、お客さんが欲しいもの理解して提示するかっていうところがすごく大事だと思いますね。僕のおすすめで、前回のお悩み相談室でも「プレスリリースを作るといいよ」とお話ししました。
ただ、プレスリリースはお客さんに見せてもあんまり反応がわかりにくいので、もう一段階進んでパンフレットを作ってみるのをオススメしています。「◯◯エキスポ」みたいな展示会でパンフレットを見せながら説明してくれるスタッフの方がいますよね。あれをやると、どこが刺さって、どこがどういう理由で刺さらないのかがわかりやすいんですよ。なのでパンフレットみたいなものをテキストでも良いので作ってみて、実際にユーザー聞いてみる。そうすると、意識していなかったニーズを浮き彫りにしやすくなるだろうと思います。
是非、リソースをあんまり使わないようなやり方も検討していただけると良いかなと思いました。機械メーカーCさん、お悩みは深いと思いますけど、前向きに頑張ってみてください。
回答のまとめ
1,短期成果創出のための実践的アプローチ:
・アプリ開発に先立つニーズ検証の重要性
・エクセルや紙ベースでの簡易的な実証実験
・既存顧客との対話を通じたニーズ把握
・最小限のリソースでの検証作業
2,効果的な検証方法と進め方:
・パンフレット等による具体的な提案資料の作成
・既存データを活用した簡易的なサービス提供
・段階的な開発アプローチの採用
今回ご紹介した内容は、以下のリンクから動画で視聴できます。
