フィラメントでは、大企業の新規事業担当者やプロジェクトチーム向けに「共創メンタリング」プログラムを提供しています。この独自のアプローチは、メンティーの主体性を高め、クライアントと共に仮説を構築し、行動を促し、学びを得るプロセスを通じて、メンバーの成長と事業創出を支援します。
今回の記事では、フィラメントのZoomメンタリングやテキストメンタリングの実践例を紹介します。具体的な支援内容やクライアントが直面する課題、そのフィードバックや解決アプローチを通じて、フィラメントのメンタリングがどのように新規事業の成功を導くかをご覧いただけます。
初回アイデアエントリー
フィラメントは社内ビジネスコンテストのプレエントリー期間において、全応募アイデアに対して個別のテキストメンタリングを提供します。この「テキストプレメンタリング」は、初回応募時のアイデアをブラッシュアップし、情報の提示を通じてアイデアを広げたり深めたりします。メンターは具体的な事例を加えてフィードバックし、競合との差別化や強みの抽出を助言します。主にSlackやTeamsを使用してテキストベースで行われます。
初回応募期間中に複数回のエントリーを促すことで、意欲の高い参加者はアイデアを磨くことができます。また、一次選考で落選した方も、学びを得て将来のプロジェクトに役立てることができます。すべての参加者が自身のアイデアを磨く機会を持つことで、ビジコン全体の質が向上します。
こちらは、実際にあった初回アイデアエントリーと、それに対するテキストフィードバックの内容を再現したものです。(※アイデアはダミーです)
設問1:アイデアのタイトル(サービス内容がわかるように)
AIを活用したレシピ提案サービス
設問2:最終的に解決したい「顧客像」をできるだけ詳しく教えてください
主なターゲットは多忙で自分で料理を考える時間がない人、料理が得意ではない人、健康的な食事をしたいがどうすればいいか分からない人全てがターゲット。
⇒ フィードバック:「自分で料理を考える時間がない人」とは具体的にどんな人でしょうか。多忙の種類も仕事や家庭など様々な要因があります。どんな生活をしているどんな人なのか解像度を上げてみませんか。
設問3:解決したい「課題」をできるだけ詳しく教えてください
日本国内では、健康意識の高まりと共に食事に関する関心も増えていますが、「何を作ればいいか分からない」、「時間がない」、「料理が苦手」等の理由でバランスの取れた食事ができない人が多く存在すると推察。
⇒ フィードバック:健康的な食事を取ることに興味があるけどあきらめている人は本当に食事改善をしたいのでしょうか。何が障害になっているのか統計などがあったら記入されると客観性が増します。
設問4:どのように「解決するのか」をできるだけ詳しく教えてください
AIを活用したレシピ提案を行うシステムを開発。食材、調理時間、カロリー、人数、アレルギー情報などを入力すると、10パターン程度のレシピが提示され、利用者は気に入ったレシピを選択。選択したレシピに基づき、必要な食材が一覧で表示され、オンラインで食材を注文することも可能。健康的な食事を簡単に実現できるようにするための個人向けレシピ提案システム。
⇒ フィードバック:そのAIは何を学習すればその人に最適な解を導くのでしょうか。そもそも優秀な料理研究家はどのように顧客に提案しているのか理解をすすめてみてください。
テキスト&オンラインメンタリングのやりとり1
こちらは、アイデアブラッシュアップ段階におけるテキストメンタリングのフィードバック内容を再現したものです。
ここでメンターが意識しているポイントは以下の2点です:
ポイント①:まずはアイデアの共感ポイントを探して提案者に寄り添う
ポイント②:なぜその提案に至ったのか、なぜそう考えるのか、「なぜ」を掘り下げることを促す
メンター:
AIを活用したレシピ提案サービスのアイデアについてですが、インターネットが突き崩してきたものの代表例が「情報仲介ビジネス」ですね。
実際、レシピサイトや料理アプリも増えてきました。
応募されたアイデアもその一つだと思います。想定されている課題と顧客像、つまり「何を作ればいいか分からない」、「時間がない」、「料理が苦手」といった理由でバランスの取れた食事ができない人々は確かに存在すると思います。
実際、私自身も料理が得意ではないので、このサービスには興味があります。(ポイント①)
ですが、そういう分かりやすい課題に対応する既存のレシピサイトや料理アプリがすでに多数存在している中で、新たにAIを活用したサービスを作るのであれば、どのようにして差別化を図るのかが重要です。既存のサービスでは満たされていないニーズや、解決できていない課題は何でしょうか?
既存のレシピサイトや料理アプリは、大量のデータと利用者のフィードバックを既に持っています。これらのデータを活用することで、ユーザーに最適なレシピを提供するAIを作ることができます。AIを作るためのデータをどのように集め、どのように活用するかも考慮する必要があります。
にもかかわらず、既存のサービスがまだ解決できていない問題があるとすれば、「なぜ存在しないのか?」を考えてみることをお勧めします。(ポイント②)
「なぜ」を突き詰めて現状認識や課題の本質を掘り下げることで、より深い課題理解に到達しやすくなると思いますよ。
テキスト&オンラインメンタリングのやりとり2
こちらは、アイデアブラッシュアップ段階におけるテキストメンタリングのラリー内容を再現したものです。
ここでメンターが意識しているポイントは以下の2点です:
ポイント①:問いかけを受けて考えたり調べたことについては素直に賞賛する
ポイント②:そのうえで掘り下げのヒントを出し、さらなるリサーチを促す
メンティー:
自分なりになぜこれまでAIを活用したレシピ提案サービスが存在しなかったのか考えてみました。 まだ明確な根拠は見つけられておりませんが…
AIサービスが実現しなかった理由のひとつとして、既存のレシピサイトや料理アプリごとにターゲット層や提供するコンテンツの「すみわけ」が確立されており、暗黙の了解的にコストをかけてまで他の分野へ積極的に進出する必要がなかったのではないでしょうか。メンター:
すごい!! めちゃくちゃしっかり考えておられますね~(ポイント①)
ただ、
「なんのためにAIでの提供をやりたいと思うか」の点でいえば、他分野への進出とかではなく「既存サービスのローコスト化と省人化、そしてさらなるデータ収集によるAIの精度向上の両立」だと思います。(ポイント②)
テキスト&オンラインメンタリングのやりとり3
こちらは、アイデアのブラッシュアップ段階で自然なピボットのきっかけを作った、テキストメンタリングのフィードバック内容を再現したものです。
ここでメンターが意識しているポイントは以下の3点です:
ポイント①:よいサービスの「原理原則」的なことは定期的に差し込む
ポイント②:提案者がインタビューやリサーチでデータを集めていても気付いてない「料理に関連する事業者」という視点を提供してヒントを出す
ポイント③:その後、データを活用することで、料理に関連する事業者の課題解決につながるという方向に気付きが向くようにアドバイス
メンター:
なんでもそうなんですけど
「自分達が売りたいもの」をおすよりも「お客さんが欲しいもの」は何かを考えることが商売のコツ(ポイント①)
だと思います。
ちょっと言い方を変えると、「自分がして欲しいこと」を主張する人よりも「相手の気持ちに寄り添える人」の方が好かれますよね。それと同じなんだと思います。
メンター:
ある料理教室では、料理教室で培ったノウハウやデータを基に、食品関連メーカーや自治体といったへのコンサルティングサービスを提供するようになったのです。
顧客を実際に料理をする人から、「料理に関連する事業者」にシフト(ポイント②)
することで、別のビジネスアイデアに繋げることができる。
作って食べたい料理の傾向データを集めることで、外食産業や生鮮スーパーのレシピや新メニューの開発にもつながるかもしれませんね。(ポイント③)
最終的にピボットした事業アイデア
地方料理のレシピと食材をセットで提供する体験型ふるさと納税(※アイデアはダミーです)
インタビューを重ねて最初の顧客をふるさと納税特定事業者とし、体験型ふるさと納税のアイデアへ昇華
今回は、フィラメントの「共創メンタリング」の実践例をご紹介しました。これら独自のメンタリングアプローチが、どのようなプロセスを経て事業アイデア創出へと導くのかを具体的にイメージいただけたのではないかと思います。共創メンタリングを通じて、クライアント企業が抱える課題に対して具体的なアイデアと解決策を提供し、共に成長しながらビジネスをつくり上げていくスタイルがフィラメントの独自性であり、強みでもあります。新規事業創出におけるメンタリングの価値を再認識いただければ幸いです。