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【What編】大企業の“現役”新規事業推進リーダーが語る「アイデアの落とし穴」

NTTコミュニケーションズの“現役”新規事業推進リーダーが、数多の新規事業チームの伴走と自らの事業化経験を経て学んだ「アイデアの落とし穴」について、「Who編」「What編」「How編」「Why編」という4回のシリーズに分けて代表的なものをご紹介します。

山本 清人(やまもと・きよひと)
NTTコミュニケーションズ株式会社
スマートワークスタイル推進室 イノベーションセンター 兼務

ITベンチャーのインターネット事業、新興系の通信会社などベンチャー企業での経験を経て、2003年NTTコミュニケーションズ株式会社入社後、大手法人営業に従事し、グローバル企業のコミュニケーション・コラボレーション改革を推進。
2018年より社内新規事業支援プログラム「BIチャレンジ」の制度設計、チーム支援など事務局立ち上げをしながら、自らも原体験を基に事業開発に取り組み、リモートワークや在宅勤務の働く場所問題を解決するワークスペース提供アプリ「droppin」を2021年10月に商用リリース。現在は、Exit先のスマートワークスタイル推進室で「droppin」の事業を推進中。


初めまして、NTTコミュニケーションズという通信の会社で「droppin(ドロッピン)」という非通信のプロダクトを立ち上げ、現在は事業推進リーダーをしている山本です。

いまNTTコミュニケーションズ という会社は生まれ変わろうとしていて、1999年のNTT分社化から20年以上の時を経て、事業構造の軸を通信から非通信に変革しようとしています。非通信の事業とはつまり、社会・産業のDXや社会課題解決のソリューション事業といったものです。

私は2018年に自ら手を上げて、会社が大きく変わろうとしていく中で新設された新規事業専門の部署に異動し、社内起業家支援プログラムの立ち上げと運営をしながら、自身でも複数の事業化に挑戦してきました。

今回はその中から、アイデアの落とし穴「What編」と題してお話しします。


What編①:自社製品を売りたいだけ

新規事業を検討していると取引先やパートナー会社が協業や共創を持ちかけてくることもあります。実は、ここにも落とし穴があります。

多くは、自社の技術やPOC事例を紹介してくるのですが、よくよく聞くと結局は自社の製品やソリューションを売りたいだけの商談で終わるということが多々あります。

もちろんこちらから仕掛ける時にも同様のことが言えますので注意しないといけません。

見極めるポイントは製品や技術ありきの検討になっていないかどうかです。新規事業は課題解決や価値提供を議論の起点とすべきなのに、お互いの製品や強みを活かせる組み合わせを先に検討し、それが売れそうな顧客や市場が議論の中心になっている場合にはうまくいかないことが多くあります。

私の経験で言うと、メーカーやSIerの方と協業検討をしたとき、最初に製品紹介を受けました。その後、課題に対しての解決策を考えたときにその製品ではカバーしきれず、結果的にその製品の仕様や既存のビジネスモデルが足かせとなって自由な発想ができなかったのです。解決策は課題を解決するための手段でしかありません。「最適な解決策となるよう既製品やソリューションに対しての追加開発などについて持ち帰って検討します」となるのですがそれ以降発展することはありませんでした。すでにリリースしているものは多くの関係者とルールと確立されたオペレーションがありますから製品の仕様やビジネスモデルを変えることは簡単なことではありません。製品の売り上げを上げるために来ているのに費用や手間の方が多くかかってしまう状態は好まれません。これでは前に進まないのは当然です。

こういった傾向がある場合は早めに見切りをつけた方がいいでしょう。ただし、その技術やパートナーとの関係がどこで生きてくるかわからないため、関係性は保っておき、必要な時にいつでも声がかけられる状態(関係性のストック)を持っておくとよいかもしれません。

あながち、馬鹿にできないのがそういった外からの情報のインプットがアイデアの誘発剤になり、全く別のアイデアが浮かぶこと。

ネットですぐに調べられるような情報ではなく、その相手だけが知っている業界の情報や事例などがある場合は新しいアイデアの源泉になる可能性もあるので出来るだけ社外の方が持っている現場の生の声を聞くことをおすすめします。


What編②:デジタル世界の残念な”ハコモノ”「プラットフォーム」

アイデア創出のワークショップやアイデアソンをしているとよく出てくるビジネスモデルのひとつに「プラットフォーム」モデル(マッチングモデル)があります。

需要と供給が一致するもの同士をマッチングさせて手数料を儲けとするビジネスモデルです。Amazon、Uber、メルカリ、楽天など、身近に便利なプラットフォームサービスが多いこともあり大人気のビジネスモデルです。私が事業に携わっている「droppin」も、テレワーク用にスペースを提供したい店舗事業者と、自宅以外でテレワークをしたいワーカーをマッチングさせるプラットフォーム型のビジネスモデルになっています。

その他のビジネスモデルには物販モデルや広告モデル、サブスクリプションモデル(定額課金モデル)などがあります。

プラットフォーム型のビジネスモデルで注意しないといけないのは、プラットフォームという箱を作れば、自動的に顧客とパートナーが集まってくると勘違いしないようにすることです。プラットフォームモデルでは需要側である利用者を集める前に、供給者側のビジネスパートナーを集めないといけませんが、中身のないプラットフォーム構想では、色々な機能と提供価値を詰め込んだコンセプトがあるけれど、コアとなる価値や強みがどこにあるかよく分からないという状態になっています。

Amazonでも、最初はインターネット上の本屋でした。その後、取り扱い商品の種類を増やし、ITシステムのクラウドサービス、ビデオ配信やID決済などへ事業を拡大していきますが、そのコアとなるのはオンライン上で顧客が求めるものをいつでもすぐに超簡単に購入できるというECショッピングだと思います。

Uberも最初は空港でタクシーがなかなか捕まらなかったという創業者のペインからユーザーとドライバーをマッチングさせる配車サービスをスタートし、現在のUber Eatsなどへ事業を拡大しています。

つまり、始めに解決すべき課題があり、そのニーズを満たしていくことで獲得したアセットの有効活用や構築したビジネスモデルの横展開によって事業を広げていっているのです。そしてその過程で出来た顧客とパートナーのネットワークがそのプラットフォームの強みとなるわけです。

最初はコアな価値を軸に垂直に立ち上げ、その価値に共感・賛同するパートナーと一緒に顧客を集め、勝ち筋が出来たらそれを水平展開する。そのステップを無視した実態のないコンセプトだけの構想では、共感してくれるパートナーがなかなか集まらず利用者も増えないハコモノプラットフォームが出来上がってしまうのではないでしょうか。

<How編に続く>


NTTコミュニケーションズ山本さんが事業推進リーダーを務める「droppin」について、詳しくはサービスページをご覧ください!

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