
「面白がり力強化ワークショップ」や「ストーリーカードメソッド」、「A4一枚でアイデアを磨く提案力強化ワークショップ(PRFAQ)」といったユニークなワークショップを独自開発し、多様なバックグラウンドを持つ共創メンターが伴走支援して様々な企業の新規事業開発を支援してきたコンサルティング会社、フィラメント。2023年には初の試みとしてメンター含む全社員が参加する社内ビジネスアイデアコンテストを開催しました。会社公式雑談タイム「フィーカ」にて、振り返り座談会を行いましたので、そこで出た感想も踏まえつつ流れをご紹介します。(文/QUMZINE編集部・永井公成)
Filament Upliftとは?
QUMZINEを運営しているフィラメントは、2023年に初となる社員全員参加型社内ビジネスアイデアコンテスト「Uplift」を開催しました。フィラメントは、クライアント企業の新規事業開発チームにメンターとして伴走メンタリングを実施したり、新規事業開発ができる人材を育てるためにワークショップを行ったりしていますので、普段は「メンタリングをする側」のメンバーが「メンタリングを受ける側」になるということになります。「顧客と同じ体験をする」という言い方もできるかもしれませんね。
また、通常ビジネスアイデアコンテストといえば、「手上げ制」で、ビジネスアイデアを考えた社員が参加しますが、今回は常勤の社員が全員参加しました。普段はメンターとして活動しているメンバーはもちろん、各種プログラムの運営を担っているメンバー、バックオフィスを担当しているメンバーまで全員が参加する珍しいビジネスコンテストとなりました。
このビジネスコンテストは、メンターでもあるフィラメントメンバーの「フィラメントの素晴らしいメンターのメンタリングを自分も受けてみたい。クライアントばっかりずるい!」という思いがきっかけではじまりました。「社内のアイデアによる新規ビジネス創出」、「顧客と同じ体験をすることでメンターのコンサルティングのスキルアップ」、「フィラメントに協力いただいている経験豊かな非常勤メンターとの関係力強化」をねらいとしていました。

Upliftの流れ
ビジネスアイデアコンテスト「Uplift」は、アイデア募集期間、キックオフでのアイデア発表、非常勤メンターによるメンタリングを行うブラッシュアップ期間、審査・結果発表の流れで行われました。各フェーズで具体的にどんなことをしたか説明していきます。

アイデア募集期間
アイデア募集期間では一人一つ以上アイデアを作成します。今回はメンターからバックオフィスまで全員参加のビジネスアイデアコンテストということもあり、以下の3部門が設けられました。
・新規ビジネス部門:フィラメントが2年以内に実現可能なアイデアで、他社との協業が前提のものでも良く、今のビジネスと関係ないものでも良い。
・社内業務改善部門:1年以内に実現可能なアイデアで、一部の人だけに関係するものでも良く、既存のサービスを使う前提のものでも良い。
・AIチャレンジ部門:AIを活用したいずれかのアイデアとその検討過程で、実現可能かどうかは問わず、AIを使って「自分らしさ」を追求するもの(アイデアそのものよりもAIをどのように使ったのかの過程を重視)。
キックオフ オンサイト
半年に一度行われる社員集会のときに、考えたビジネスアイデアごとに、顧客・課題・解決のアイデアからなるPowerPoint資料を1枚作成し、一人当たり3分で発表しました。この時のアイデアはまだラフなもので、次のブラッシュアップ期間で具体的なものに練り上げていきます。この時点で発表を聞いて他の人のアイデアに合流することもできました。
ブラッシュアップ期間
キックオフで全員のアイデアが共有されたら、その内容を基にメンターが決まります。今回のメンタリングや審査会には、フィラメントに非常勤でメンタリング業務をご支援していただいている以下の共創メンターの皆様にご協力いただきました。皆さんのご経歴につきましては、フィラメントコーポレートサイトをご参照ください。
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古里圭史さん
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土岐泰之さん
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今井俊文さん
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宮内俊樹さん
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平松葉月さん
各社員は担当となった共創メンターとともに隔週で全4回メンタリングを受けアイデアを改良し、PRFAQ(A4一枚のプレスリリース形式のフォーマット)にまとめました。

審査・結果発表
各社員がメンタリングを受けて改良したアイデアをPRFAQのフォーマットに落とし込んだものが今回の審査対象となりました。
メンターの選定やプログラムの設計といった今回のビジコンの運営事務局業務は、フィラメントの業務にご協力いただいている株式会社キャントウェイトの平松葉月さんが担当しました。審査項目についても、平松さんが今回のビジコンの目的に合わせてたたき台を作り、審査を担当する共創メンターと話し合って修正しました。

審査の具体的な流れは以下の通りです。
[A]メンター審査:メンタリングを担当している案以外の案をメンターが
(1)審査項目に沿って採点
(2)コンテスト実施目的に関する加点 を集計
[B]社内投票:各自、自分の案以外の案に1位、2位を投票しポイント集計[A]+[B]→総合最優秀賞
[B]のみ→社員投票賞(総合最優秀賞と同じ場合は次点の案)
審査会は、審査員である非常勤の共創メンターが、各参加者のPRFAQを予め読み、自分が担当したチーム以外について採点いただいた後に審査会に臨んでいただきました。審査会では各参加者のPRFAQごとに思ったことをお話しいただいて、アイデアごとのフィードバックコメントや点数についてディスカッションがなされました。運営事務局を務めた平松さんによれば、フォーマットや制度、審査のやり方についても議論が及び、和やかというよりは真剣な雰囲気で審査が進んだそうです。部門が3つあるため、適切な審査基準を設定することに難しさを感じたとのことでした。
ビジネスコンテストはピッチで行われるのが一般的ですが、今回のビジコンはピッチ会を行わず、PRFAQのフォーマットに書かれたものが審査対象となりました。これは、フィラメントが提供しているプログラムにPRFAQのフォーマットを作成するワークショップがあり、社員に顧客の立場で体験してほしいということ。そして、フィラメントはリモート勤務が基本であり、知見を言語化して次に活かすというナレッジの形式知化にもテキストが重要な役割を果たすことから、ビジネスアイデアを伝えるためのツールとしてPRFAQを使い、スキルアップを図ることが理由としてあります。
例えば、応募されたアイデアの一つ「安心勤務サービス『キョウイエ』」のPRFAQを部分的に引用すると以下のようになります。プレスリリースを模したフォーマットなので、冒頭はタイトル、サマリが並び、解決したい課題と続きます。

PRFAQのユニークな点は、まだサービスインしていない開発途中の事業アイデアでも「顧客の声」やサービスインした前提での「提供側の声」、「行動の呼びかけ」などを想像して書くことです。もちろん今回もそのフォーマットで書きました。

PRFAQを書いた感想として、座談会では以下のようなものが集まりました。
・いざ自分で書いてみると、メンターがいることで、一人では気づかないところを指摘してもらえてよかった。普段やってるメンタリングで必要なことに気付けた。
・社内業務改善部門で、既存のツールを使っての業務改善を考えた。PRFAQのフォーマットで文章を客観視して書き換えた。タイトル付けも難しかったのでメンターと相談した。普段考える頭じゃないところを使ったので難しかったけど楽しかった。
・すんなり書け、メンターにも「直すところがない」といわれた。読んでみて、客観視することが重要だと思うが、それができてる人とできていない人がいた。そこが難しいのだろうと思う。より良い物に直していくのが大変そうだと思った。
メンターからビジネスアイデアのブラッシュアップのためのメンタリングを受けた感想として、以下のようなものが集まりました。
・非常勤メンターもフィラメント流でメンタリングするので、まずは出したアイデアについてほめてくれる。ほめてくれると気持ち良いしやる気になる。普段はメンタリングする側だが、この気持ちは実際にメンタリングを受けてみないとわからない。
・客観的な意見をもらえたのが良かった。一人で考えていると出ない視点を外部メンターにアドバイスしてもらえる。考える期間を走りきるのに重要なことだと思う。一人でやると煮詰まってしまうが、それを打開するのに必要な役割だと感じた。
・自分のアイデアを人に伝えるには整理が必要で、それがすごく効果的だった。整理できるからこそ悩みが明確になり、アドバイスをもらえるのが助かった。
・メンタリングを受けるのは初めてだった。アイデアをPRFAQに落とし込むまでのやりかたを教えてもらい、勉強になった。どう動けばいいのかを教えてもらったことで今後の業務にも反映できると思う。
・メンタリング自体初めて受けた。業務改善に向けてどう動いて良いかを自分でも考えた上でアドバイスをもらえたことで、多くの気づきが得られた。4回はあっという間だったので、もっとやってもらえたらいいと感じた。
各参加者は、社内投票として自分以外の人が書いたアイデアを選ぶために他の人の書いたPRFAQを読む必要がありました。アイデアを読んで感じた感想については以下の通りです。
・自分以外の人が書いたアイデアは読んでいて面白かった。
・全体的にちゃんとしてるなと思った。もっとネタに走るかと思った。
・最初にPowerPointで発表したアイデアからブラッシュアップしたものもあり、ピボットしたものもある。メンターと話してどういう話し合いがあったのか興味を持った。
・どれも実現できそうなレベルでブラッシュアップされたと感じられた。メンターの力はすごい。新しい視点を気付かせるメンタリングは必要だと思った。
審査結果発表
全部で7つのPRFAQが審査対象となりました。AIを使った新しいビジネスのアイデアや、最近のビジネストレンドを踏まえた既存事業とは異なる分野のビジネスアイデア、既存サービスを用いて社内業務改善を図るアイデア、フィラメントの現業から感じた課題を解決するアイデアなどが提案されました。
今回のUpliftでは以下のように賞が決定し、副賞も授与されました。
・総合最優秀賞 1案 リゾートギフト+50万円好きに使っていい権利
メンター審査会にて最高点の案・社員投票賞 1案 体験ギフト
社員投票にて最高点の案(総合最優秀賞と同案の場合は次点)・Let’s Do It賞 1案 体験ギフト
メンター審査会にて今すぐ実装したほうがいいとなった案

全体を通しての感想は以下の通りでした。
・やってよかった。仕事を抱えながらビジコンをやるのは大変だと感じた。特に時間だけではなく、考える能力を使うこと。一方で、PRFAQでやる利点も感じた。頭を整理することができたり、顧客目線に立てていないことがわかる。
・Facebookでウェブアンケートをやった時に学びを感じた。ビジコンやPRFAQの経験者として人に語れる。
・言語化するのが勉強になった。楽しく2人チームでやれて、事務局とも気軽に相談して楽しくメンタリングを受けることができた。
・すごくおもしろかった。ビジコンは参加するのも大変。普段はメンターとしてメンティに「調べろ」といっているが、自分も調べないといけない。
・非常勤のメンターにメンタリングしてもらえたのが良かった。すぐ次のメンタリングがくるので、「それまでにやっておかないと」という意識になる。
「Uplift」の名前の由来とロゴ
フィラメントの全員参加型ビジネスアイデアコンテスト「Uplift」は今回初の取り組みということもあって、その名前から新たに考える必要がありました。運営事務局を担当した平松さんが『フィラメント社内ビジネスアイデアコンテスト』だと愛着がわかないと感じ、フィラメントCEO角とビジコン発案者であるフィラメントCOO田中とともにいろいろな名前の案を検討して決定しました。また、グラフィックデザイナーとして活躍されていた平松さんは印象を一つにするためにロゴがあった方がいいと感じ、ロゴ案も同時に作成していました。E案が実際に採用されました。

QUMZINEを運営するフィラメントの公式ホームページでは、他にもたくさん新規事業の事例やノウハウを紹介しています。ぜひご覧ください!