事例概要
川崎重工業の船舶海洋ディビジョンでは、新規事業創出を担う”人財”の育成と現場発の事業アイデアの具現化を目的とした「実践型人財育成×新事業創出プログラム」を実施しました。本プログラムには20名(5チーム)が参加し、若手・中堅メンバーを中心に、他ディビジョンからの越境参加者も含まれた多様な構成となりました。
フィラメントは、企画立案から運営、各種支援まで伴走型で全面的に支援。本プログラムでは、参加者は7ヶ月間にわたるワークショップ6回と講座3回を通じて、メンターからのアドバイスを受けながらチームごとに事業アイデアの構築・検証を行い、最終的に会社役員へのプレゼンテーションにて成果報告を行いました。
プログラムの流れと取り組み
<キックオフ>
キックオフでは、オリエンテーションでプログラムの概要とゴールを共有し、ワークショップでは新規事業創出の基礎やプロセスを学びました。参加者は自身の動機や目標を整理・発表し、互いの思いを共有しました。新規事業だけでなく日常業務にも役立つ考え方に触れる機会となりました。
<アイデア創出>
個人単位で社会課題を業界課題のレベルまで分解し、そこにトレンド要素を掛け合わせることで、複数の事業アイデアを創出しました。これらのアイデアは所定のアウトプットフォーマットに沿って整理し、内容の可視化を行いました。
<アイデアブラッシュアップ>
個人で考えたアイデアをもとに、チーム内でディスカッションしながらブラッシュアップを行いました。最終的にチームで1つのアイデアを選び、マネタイズや最初の顧客獲得手段、プロジェクトの発展について議論を重ね、多角的な視点から事業アイデアを検討しました。
<アイデア明確化>
選定した1つのアイデアをもとに、チームメンバーそれぞれが事業アイデア企画書を作成しました。企画書では、顧客にもたらされる具体的な提供価値まで踏み込んで言語化し、事業アイデアの全体像についてチーム全員で共通の理解を図りました。
<ピッチ資料作成>
社内外へのヒアリングを進めながら定期的なチームミーティングを開催し、、成果報告会に向けてピッチ資料を作成しました。メンタリングでフィードバックを受け、川崎重工としてその事業に取り組む理由や今後のロードマップを盛り込みながら徐々に事業アイデアとしての完成度を上げていきました。
<想定顧客インタビュー>
今回のプログラムでは社内の関連部門に加えて、社外ヒアリングも多数実施しました。以下は実際にヒアリングを実施した業界と企業数です。これらのヒアリングを通じて、仮説だけでなく顧客のリアルな声や視点を反映した事業アイデアの検討へと繋げることができました。
| 業界 | ヒアリング企業数 |
|---|---|
| ICT・通信・IT関連 | 5社 |
| 物流・運輸 | 3社 |
| 海運・船舶関連 | 3社 |
| 製造業(機械・車両) | 2社 |
| 商社・専門商社 | 1社 |
<成果報告会>

成果報告会では、会社役員陣に対し、これまでブラッシュアップしてきた事業アイデアをピッチ形式でプレゼンテーションしました。役員からは5つの項目に対する評価とコメントをもらい、経営層の持つ視点を知ることができました。
その後の検討の結果、いくつかのチームが継続検討の判断となり、事業化に向けて課題やソ
リューションの解像度を高めるために活動を続けます。
フィラメントの支援内容
フィラメントは本プログラムにおいて伴走支援を行い、「新規事業創出人財の育成」と「アイデアの具現化」を実現するために、企画段階から実行フェーズに至るまで様々な支援を提供しました。主な支援内容は以下の通りです。
主な支援内容
- 人材育成プログラムの企画と全体設計
- キックオフの企画・運営
- 各種ワークショップ・講座の実施
- 定期的なオンラインメンタリング及びテキストメンタリング
- ヒアリング先のご紹介
- 成果報告会の企画・運営
- 事務局運営サポート
参加者の声
アンケート調査を通じてプログラム参加者の声を調査しました。
プログラム全体に対する満足度を0~10の10段階で評価してもらったところ、平均8.1と高い評価となりました。プログラムを通じて創出した事業アイデアに対する満足度についても平均7.3という評価が得られました。
また、プログラムの各内容に積極的に取り組めたかについて1~5の5段階で評価してもらったところ、講座・ワークショップ、メンタリング、チーム活動全般どれにおいても平均4以上の回答となり、特に講座・ワークショップにおいては4.6と高い評価が得られました。
| 内容 | 評価平均 |
|---|---|
| 講座・ワークショップ | 4.6 |
| メンタリング | 4.2 |
| チーム活動全般 | 4.2 |
プログラム全体を通じて得られた学びや気づきについては、参加者から以下のような回答が得られ、新規事業創出のプロセスに応じた様々なスキルと考え方について言及されていました。(以下、自由記述より抜粋)
- ビジネス創出の具体的なステップ
- 社会課題のとらえ方、インタビューの大事さ
- プレゼンする上でのテクニック
- 事業に対する経営層の視点と考え方
- 新事業を起こすための心構えや仲間づくりの大切さ
本プログラムを推進する、川崎重工業 船舶海洋ディビジョン 技術統括部 新事業推進部深澤部長からもコメントを頂戴しています。
本プログラムは、船舶海洋ディビジョンがテーマとしてあげている「仲間づくり」を推進していく中で、従来の顧客オーダーに応える受注型にとどまらず、顧客とともに課題を定義し解決する提案・共創型の文化を醸成する方向に向かうことを狙いに実施しました。
フィラメントのメンターの皆様をはじめとする伴走支援のもと、船舶に加えエネルギーソリューション&マリンカンパニーからも人材が集い、ワークショップやグループ活動を通じて部門横断の学びと気づきを獲得。さらにメンタリングや顧客・有識者への継続的インタビューにより、参加者は自ら仮説を立て検証を高速に回す姿勢を身につけました。
発表会後は有望テーマをさらに調査・実証へ進めます。あわせて、本プログラムで得た知見を活かし、社内文化を提案・共創型へ進化させ、新規事業創出のみならず日常業務や他の活動にも展開していきます。
深澤 敏史さん
エネルギーソリューション&マリンカンパニー
船舶海洋ディビジョン 技術総括部 新事業推進部

