新規事業創出支援の分野で取り組むフィラメントのユニークなアプローチは、他のコンサルティングファームとは異なる新しい価値を創造しています。2024年3月に開催された座談会「フィラメントクライアントサミット ~ここがヘンだよ!フィラメント~」では、実際にフィラメントのクライアント企業の皆様からその価値を直接お話しいただきました。

クライアントの皆様とフィラメントの出会い

――まずは皆さんの自己紹介と、フィラメントとの出会いについて教えていただけますか。

福原哲哉氏
株式会社NHKエンタープライズ 執行役員/イノベーション 戦略室長
フィラメント提供サービス:社内ビジネスコンテスト支

福原:はじめまして、NHKエンタープライズの福原と申します。私はイノベーション戦略室長として新規事業を担当しているとともに、会社では執行役員を担当しております。この3年ほどで5つほどゼロから事業を立ち上げました。フィラメントは、2018年ごろNHKエンタープライズで新しく管理職になった人を対象とする合宿研修の時に、角さんが研修を担当されたことをきっかけに知りました。その後、NHKエンタープライズで「未来投資会議」というビジネスコンテストを始めることになり、その制度設計のために2022年度から2か年にわたって、フィラメントにお世話になっています。


大貫明人氏
SCSK株式会社  ビジネスデザイングループ統括本部 事業企画推進部長
フィラメント提供サービス:共創メンタリング

大貫:SCSKの大貫です。ビジネスデザイングループ統括本部にて事業企画推進部長を務めています。当社の事業は主にSI(システムインテグレーション)に関わるものですが、お客様との事業共創を行なったり、独自のサービスとして世の中の課題解決をする事業ももっと行なっていきたいと考えています。ビジネスデザイングループでは、そうした新しいビジネスデザインの開発に取り組んでおり、私はその推進を担う立場です。フィラメントとは、7〜8年ほど前、前職のNTTコミュニケーションズに勤務していたときに経営企画部にて新規事業創出プログラムを立ち上げる仕事をしており、その際にお声掛けさせていただきました。その時からの繋がりが今も続いています。


垣沼陽次郎氏
株式会社商工組合中央金庫 未来デザイン室 調査役
フィラメント提供サービス:社内ビジネスコンテスト支援ビジネス創出講座

垣沼:商工中金の垣沼です。当社は主に法人向けの金融サービスを行っており、特に中小企業への融資を主な業務としています。私は経営企画部の未来デザイン室に所属しています。この部署は、銀行業界も年々競争が激化しており、商工中金もお客さまのニーズに応えるために、私が3年前に異動してきたときに新設されました。この部署では新規事業の立ち上げや事業育成などを行っています。様々な新規事業にチャレンジしていますが、特に金融以外の領域に焦点を当てています。私が初めてフィラメントを知ったのは、2022年の4月か5月頃です。角さんがARCH(ARCH虎ノ門ヒルズインキュベーションセンター)のメンターを担当されており、そこで行われていた講演が非常に興味深いものでした。また、同じ頃にフィラメントのYouTubeチャンネルで入山章栄先生や志水静香さんとのオンライン対談を拝聴して興味を持ち、フィラメントに連絡したのが出会いのきっかけです。


津幡靖久氏
ツネイシホールディングス株式会社 取締役
常石商事株式会社 代表取締役副社長執行役員
フィラメント提供サービス:ビジネス創出講座

津幡:ツネイシホールディングスの津幡です。ツネイシホールディングス内で人事を担当しており、また、グループ企業の常石商事で、新規事業開発およびコーポレートベンチャーキャピタルの責任者も務めています。ツネイシグループは、広島県福山市で造船と海運業を中心に、創業から約120年に渡り、オーナーファミリーが経営してきた企業です。祖業である海運業から造船業への転換を経て、産業廃棄物処理、エネルギー、観光などの事業を少しずつ増やしていますが、ここ50年ほど新しい事業が生まれていません。そのため、新規事業をオーナー家のトップダウンではなく、ボトムアップのアプローチで考えていくことが、組織づくりと土壌づくりの課題となっています。2022年の夏ごろ、人材育成と新規事業開発を結び付けるミッションが発生し、フィラメントと一緒にやることにしました。

フィラメントのここが変!

――ありがとうございます。それではさっそくですが、本日のメイントピックである「ここが変だよ、フィラメント」ということで、フィラメント以外の新規事業コンサルティング事業者とは異なる部分がありましたら教えていただけますか。

柔軟に対応してカスタマイズしてくれる

津幡:研修プログラムが始まってからでも、「もっとこうした方が良いんじゃないか」という声に対応してチューニングしてくれるところが良いですね。一般的にコンサルティング会社は予め決められた形ややり方にこだわって進めていくのが普通で、受講者個々のレベルに合わせてインタラクティブに研修の内容を変えていくのは非効率だからやらないと思います。

垣沼:私もプログラムの柔軟さについては同じように感じていました。参加者のレベルに合わせてうまくチューニングしていただいたほか、軌道修正や追加のサポートもしていただきました。こちらの予定以上にしっかりと寄り添っていただけるのはとてもありがたいですが、銀行員としては採算が合うのかなとちょっと気になってしまいますね(笑)

大貫:事業アイデアが成熟しているチームからまだ生煮えなチームまでさまざまなチームが存在している中で、「お客さんになりそうな人と直接連絡とりませんか」と言っていただけたのが良かったですね。まだ生煮えなチームだったりすると、責任者としては「大丈夫なのか」「失礼は無いだろうか」と多少ドキドキしましたが、例えば実際にチームが某自治体の市長とオンラインで会ってヒヤリングさせていただくと、チームとしてはいろいろと気づきがあり、大変有り難かったとのことでした。

福原:フィラメントの皆さんと新規事業開発プログラムを設計する中で、「新規事業とは何か」というのもちゃんと伝えたいと思っていたんです。ビジコン参加者が持ってきた自分のアイデアを基にメンタリングするだけだと「新規事業を学べた感」が少ない気がして、「ビジネス創出ガイダンス」もやってもらいました。そちらは理論も学べたので、参加者にとっては硬軟織り交ぜたプログラムになりました。

津幡:研修プログラムの途中に、「組織の外の人と交流をすると刺激となって意識や行動が変わる」とメンターの方が言ってたんです。そこで、商工中金さんのビジコン参加経験のある方々と交流したり、当初予定に入っていなかったんですが、Musashino Valleyで伊藤羊一さんのプレゼンテーションワークショップを受けたり、近畿大学で実際に起業している学生さんたちと交流する機会をつくっていただきました。また、チェックインの時点で、参加者一人一人の性格や特性をきめ細かくみてもらい、それぞれにあった対応をしていただいたことで、最終的に脱落者が出なかったのはすごく良かったと思っています。いわゆるタレントマネジメントツールを参加者に受けさせたのですが、新規事業リーダーになりそうな人の割合がすごく少なかったんです。でも研修後にはパイオニア的な志向やスペシャリスト的な志向の人が増えて、研修の効果があったと思っています。

福原:フィラメントの人がどこからどこまでいるのかわからないくらいの”コミュニティ感”も挙げたいです。新規事業創出のためのプログラムを開発・実行していただいたときに、いろんな人がフィラメントのメンターとして繰り出してくるんですよ。このコミュニティ感がすごい。もちろん会社としてやっているとは思いますが、たぶん「フィラメント」というコミュニティに共感する人が集まって、目的を達成するためにチーミングも含めていろいろな方法を取っているのだと思います。こういう会社はあまりないですよね。

メンターのかかわり方

津幡:多様な人がメンターとして関わっていただいていますが、メンター自身が弊社と関わることで「自分も学んでいます」ということを隠そうとしないのが珍しいですね。コンサルの人って、もっと「俺はこういうこと知ってるぜ」というスタンスの人が多いんですが、逆に「こっちが教えてあげてるんじゃないか」と思わせるくらいで(笑)。だから逆に受講生も構えずにメンタリングに臨めるんだと思います。

垣沼:うちは銀行なので、お客さまが製造業や運送業、病院や旅館などかなり多様です。だからそれぞれの分野の専門家を連れてくるのはすごく難しいはずなんですが、メンターの人からは「そういう経験あるよ」という話がどんどん出てきて、なんでそんなにいろいろな分野の専門家がいるんだ?と思いました。

大貫:そういう意味では、「本質を外さない」ということが言えるのかもしれません。メンターの方に様々な知見があるのは事実だと思うんですが、「ここを外すとうまくいかない」というところは共通で持っていて、言うべきところはビシっと言ってくださるので、いろいろな需要に対してうまく対応できるんじゃないかと思いました。例えば、スポーツの本だけを読んでもスポーツができるようになる訳ではないように、メンターの方々はコーチとして参加者の必要なところに対してうまく言ってくださるからハマりやすいのかなと。

福原 :確かに、「メンターはコーチ」というのはしっくりくると思います。教科書的なセオリーを一般論として教えてくれるというよりは、相談に乗ってくれる。NHKエンタープライズは新規事業をあまりやってこなかった会社なので、社員も「新規事業を考えろ」って言われても、何から考えたら良いかわからない。メンターがコーチのように参加者に寄り添ってメンタリングしていただけるのは良かったです。

垣沼:いわゆるコンサルティング会社って、小難しい言葉を使ったりしますけど、フィラメントにそういう方はがあまりいなくて。その人のレベルに合わせて共通の土台のところは守りつつ、相手に合わせてくれるのがすごいところですね。

参加者の皆さんから見たフィラメント

――実際にメンタリングや研修に参加されている現場の皆さんからの、フィラメントに対する感想や印象はいかがでしょうか?

津幡:社内で研修の参加者にインタビューしたら、「他の人にも薦めたい」という声が聞こえてきました。参加した人から次に受講させたい人の個人名を挙げてもらったりということが普通にあったので、多分「人に薦められる」ということを感じていると思います。逆にこういう人には向いていないんじゃないかということを意識するということは、既に受講した人が実際に新規事業をやろうとした時の仲間を作る目線ができているんじゃないかという期待はありますね。

垣沼:1年かけてビジコンのプログラムをやっていますが、参加者から聞いて一番驚いたのは、「これ個人で受けようと思ったら、3~400万円は絶対かかるぜ。それくらいこれ価値があるから絶対参加した方が良い」ということを熱弁していたことです。「あ、そんなに良いと思ってくれていたんだ」と思いました。

大貫:ちょっと厳しめなこと言うと、参加者は両極端なパターンになるかと思います。現場に行ってヒヤリングして気づきを得て、場合によってはピボットもしてと、現地・現場でしっかり活動できる人には結構フィットしてすごく成長すると思います。もちろん場合によっては傷つくこともあると思いますが、最後には「すごく良かった」という感想で終われると思います。一方で、もともと自分が立てた仮説を大事にしている人は、メンタリングを受けたりヒヤリングした結果、場合によっては仮説と合致せずボロボロになるわけですね。そうすると、前向きになる人もいるとは思いますが、「自分には厳しすぎる」と思い背を向けてしまうタイプもいると思うんです。だから全員がついてくるプログラムでもないのかなと思いました。

福原:NHKエンタープライズはもともと番組を作ったりコンテンツ制作をしているので、企画は得意なんですよ。だからビジコンをやるとなった時に、アイデア豊富な人がいっぱいいる。ただ慣れてないのは事業企画です。アイデアをビジネスとしてどう成立させるのかを体験した人が非常に少ないんですよね。そうした人たちにとって一番評判がいいのは、アイデアからビジネスに昇華させていくプロセスが体験できるメンタリングです。実際、参加者からは「これまでこういう体験をしたことがなかった」という感想が一番多かったですね。

良かったメンター

――この人のメンタリングが良かったとか、個人的にこの人は良かったというメンターをバイネームで教えていただけますか。

大貫:佐藤啓一郎さん(フィラメントCXO)はすごく良かったです。もともとシャープのデザイン部長をされていたこともあって、大企業の良いところ、悪いところをわかっている上に、厳しい世界で揉まれてきたので、経験やスキルに重みがあるんですよね。私は前職や今もそれなりの規模の会社なので、非常に似通ったところがあります。良いところもありますし、「大企業病」といった悪いところもあり、スタートアップやベンチャーとは違うというところも理解してくださったうえでメンタリングなどをしてくれました。ビジネスももちろん理解されていて、その上でUXやUIの領域まで幅広くデザインを理解されているというところが良かったです。

津幡:研修プログラムに参加していたメンバーが話題にしていたのは河合太郎さん(共創メンター)ですね。カリフォルニアにお住まいで、リモートでメンタリングをしているにもかかわらず的確な解像度で理解して返信してくださるので「あの人は本当にアメリカにいるのだろうか?」と言われていました(笑)

福原:メンタリングを受けた感想を後で聞くんですが、その中に「カリフォルニアの人が出てきました」というのがありました(笑)。カリフォルニアは新規事業の最先端みたいなイメージがあるじゃないですか。そこにいる人のメンタリングを受けたぞ、という感じでしたね。もちろん自分には気づかないアドバイスをいただいたということもあると思いましたが、そういう刺激もあるみたいです。

垣沼:金融機関はロジックの文化なので、ロジカルに言わないとそもそも誰も言うこと聞かないんです。その上で、「きっとこの人はこういう気持ちだろう」と寄り添う部分も必要なんです。そういう意味で相性がいいのは田中悠さん(フィラメントCOO)ですね。どのチームでも伴走できるんだろうというイメージがあります。また、フィラメントの常勤のメンターであればカルチャーを理解していると思うんですが、非常勤のメンターであってもフィラメントのカルチャーを理解していて、途中から入ってきても普通にフィットしてくる。これまでの流れも汲んで対応していただけるのは各メンターから感じることですね。

※河合さんはカリフォルニア州に在住し、いわゆるビッグ・テックに勤務する非常勤メンター。

フィラメントの共創メンター紹介ペー

クライアント同士の横のつながり

――コラボレーションや共創についてもお聞きしたいです。紹介してもらえてよかったことや、その後案件になったというケースはありますか?

垣沼:昨年のビジコンの打ち上げのときに、メンターの佐藤さんに「中川政七商店が学生を集めて、その地方の出身の学生が地元の商品を見つけてきて、東京駅近くでお店をやっている『アナザー・ジャパン』というプロジェクトがあるんですけど、これと商工中金は相性がいいと思うから話をしてみませんか?」と言われて、実際に中川政七商店さんと会って話を聞いてみたんです。「今は2期目でもっと大きくしていきたい。全国にいろいろネットワークがある会社を探している」ということで、それはまさに商工中金と合いそうだなと思い、紹介いただいて1~2か月で話が進み、大学生と商工中金のお取引先の中小企業が共同で商品を開発し、4月から販売していくことになりました。

大貫:前職にいたときの話ですが、コワーキングスペースとユーザーのマッチングなどをする「droppin」というサービスをはじめました。その際、自治体さんなどにもどんどん紹介くださり、実証実験にもフィラメントの伝手で入らせていただき、今は全国区のサービスになっています。そういう意味では、営業やリードといった形でもご協力いただいているといえますね。

※droppin:NTTコミュニケーションズのワークスペース検索・即時予約サービス。
https://nttcom-droppin.com

福原:2023年4月から始まったNHKエンタープライズの「未来投資会議」というビジコンで、採択されなかったあるアイデアについて、ピボットしてフィラメントとの協業で企画できるのではないかという話になっています。提案する側からしたらすごく嬉しいことですよね。ビジコンは最終的に審査によって決着がつくわけですが、そこから違う進め方があるという姿が出せるというのが良いですね。フィラメント側のビジネス上の合理的な理由もありながら、ビジコンの育成という枠を超えて、アイデアをピボットすることでビジネスとして協業できるのではないかという違ったフェーズがあるのが面白いです。コンサルティング会社は頼んだこと以外やらないイメージがありますが、フィラメントはそうではない。

津幡:そういう意味でいうと近いのかもしれないですが、去年、ビジネス創出講座に参加したメンバーの1名をフィラメントに出向させてメンターっぽいことをやらせませんか?と言われたんです。「継続的に新規事業の取り組みをやろうとするとフィラメントの関わりだけでは足りないでしょう。全部を内部メンバーで賄うのは無理でも、新規事業するときに壁打ちするメンターは常勤でいた方が良いですよね。そういう素養のありそうな人がいたので、フィラメントに出向させることはできませんか」と。確かにその発想はアリかなと思っているんですよね。フィラメントからすれば、その人のレベルがフィラメントに追いつくというよりはもっと先まで行くだろうなという期待があると思うんですね。仮に今後も新規事業をやるとして、素養を持った人が壁打ちやハンズオンで手伝うという人が社内にいないとうまく立ち上がっていかないだろうと思うところがあるので、その着眼点はすごいなと思いました。

「フィラメントクライアントサミット ~ここがヘンだよ!フィラメント~」と題して開催された今回の座談会では、クライアント企業の皆さまからフィラメントとの貴重なエピソードを共有いただきました。これらの話から、私たちフィラメント自身も気づいていなかったたくさんの新しいインサイトが得られました。皆さまの率直なご意見と経験談に、深く感謝申し上げます。またこのような貴重な機会にご協力いただき、本当にありがとうございました!!

(モデレーター:落合絵美、写真・文章:永井公成)


フィラメントの公式YouTubeチャンネルでは、クライアントサミットの動画もご覧いただけます。チャンネル登録と高評価をぜひお願いします!